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特集・調査2026年9月7日

CoinbaseのUSDC金利3.5%を解剖 原資と仕組み、規制の攻防まで

公開日: 2026-09-07 / 数値は2026年9月7日までに取得した各社開示・公表統計に基づきます。免責は記事末尾に記載しています。

米国では、取引所Coinbaseにドルへ連動するステーブルコイン「USDC」(注2)を置いておくと、有料会員向けに年3.5%の「リワード」が付きます。米銀の普通預金の全米平均(年0.38%)の約9.2倍にあたるこの報酬は、どこから来ているのでしょうか。原資をたどると、米国の短期金利が会員の残高にほぼそのまま流れ込んでいる構図が浮かびます。本記事では読者になじみのある「金利」という言葉を使いますが、Coinbase自身はこれを「リワード」と呼んでおり、法律上の利息ではありません(注1)。

一方で、この仕組みは米国の銀行業界から、預金を吸い上げる「抜け穴」と批判され、規制論争の中心になっています。2026年9月には、抜け穴を狭める修正を含む法案(CLARITY法案)が米上院で審議入りの手続き投票を迎える予定です。本記事では、リワードの原資と分配の仕組みを決算数値で分解し、銀行預金との比較、預金流出を巡る論争、日本への含意までを整理します。

この記事のサマリー

  • CoinbaseのUSDCの金利(リワード)は年3.5%で、対象は有料会員(Coinbase One、月額4.99ドルから)に限られます(2026年9月7日時点のCoinbase公式ページ。注1)。2026年8月22日からは、追加入金を条件に1カ月限定で6.5%へ上乗せするキャンペーンも実施しています
  • 原資はUSDCの準備金(短期米国債等)の運用益です。発行体Circleの2026年4-6月期の準備金収益は6.68億ドル、利回りは年3.5%でした
  • CircleはCoinbase上のUSDC分について準備金収益の100%を、それ以外の流通分についても残余の50%をCoinbaseに分配する契約を結んでいます。Coinbaseの同期のステーブルコイン収入は2.92億ドルでした
  • 年3.5%は普通預金平均の約9.2倍ですが、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の平均利回り3.50%と同水準です。突出した高利回りではなく、市場金利にほぼ連動する水準です
  • 米財務省の諮問委員会は、ステーブルコインが利回りを持つ設計になった場合の影響検討で、決済性預金6.6兆ドルを流出リスクの高い区分として示しました。銀行関係者3,200人超が抜け穴の封鎖を求める書簡を上院に出しています
  • 日本では円建てステーブルコインの残高が約232億円で、家計の現預金1,126兆円と比べると預金流出を論じる規模にありません。ただし前提となる金利差の構図は将来の論点になります

目次

  1. USDCの金利は3.5%:預入先別の一覧
  2. ドルの銀行預金と比較:普通預金の約9倍、ただし市場金利並み
  3. 金利の原資はどこにあるのか:USDCの準備金
  4. CircleとCoinbaseの分配契約
  5. 銀行預金はステーブルコインに流れるのか
  6. なぜCoinbaseは「金利」と呼ばないのか:GENIUS法の建付けと攻防
  7. リスクと注意点
  8. 日本の円建てステーブルコインにも金利は付くのか
  9. まとめ

1. USDCの金利は3.5%:預入先別の一覧

同じUSDCでも、預入先によって受け取れる年率は異なります。先にCoinbase関連の窓口を一覧にします。

預入先 年率 主な条件
Coinbase取引所(口座で保有) 3.5%(8月22日から1カ月限定で6.5%に上乗せ) 有料会員限定。週次払い(BTCかUSDCを選択)、変動制
Base App(旧Coinbase Wallet。自己管理型ウォレットで保有) 最大3.35% 会員条件なし。米国限定でCoinbase口座の連携が必要。変動制
Coinbaseのレンディング(Morpho経由の貸出) 変動制(Coinbaseの告知は約7%、運用先の実勢は3.2〜5.2%) 貸出のため借り手側の信用リスクを負う

いずれも2026年9月7日時点の値です(取引所はCoinbase公式ページ、Base AppはCoinbaseがApp Storeに掲載した案内、レンディングはCoinbaseの8月22日の告知とMorphoの公開データ)。本記事では、このうち利用者が最も多い取引所の恒常的な料率3.5%を軸に分解します。

Coinbaseの取引所口座でUSDCを保有すると、現在は年3.5%のリワードが付きます(Coinbase公式ページ、2026年9月7日確認)。対象は有料会員プログラム「Coinbase One」の加入者に限られます。会員区分は月額4.99ドルのBasicから月額299.99ドルのPremiumまで3つありますが、USDCの料率はどの区分でも同じ3.5%です(Coinbase Oneの料金ページ)。リワードは日々積み上がり、前週分が毎週金曜に支払われます。受け取りはUSDCかビットコインを選べます(Coinbaseヘルプ)。ここでいうリワードは、法律上の利息ではなく、Coinbaseが販促として自社負担で払う報酬です(注1)。さらに2026年8月22日には、Coinbase One会員が追加で1,000ドル以上のUSDCを入金した場合に、残高50万ドルまでを対象に1カ月限定で年6.5%を付けるキャンペーンを告知しました(Coinbaseの公式X投稿、米国限定。Coinbaseヘルプによると会員ごとの個別オファーで、上限額や期間は通知の内容により異なります)。こうした期間限定の上乗せは販促の色合いが強く、本記事は恒常的な料率である3.5%を基準に扱います。

現在の3.5%に至る推移を以下にまとめます。有料会員限定になったのは2025年12月15日の改定からで、それまでは口座があれば誰でも受け取れました。

時期 料率(年率) 出来事
2019年10月 1.25% 米国でリワード開始(Decrypt
2025年7月 最大4.1% GENIUS法(米国のステーブルコイン規制法。第6章)の成立直後の水準
2025年10月 4.0% 引き下げ
2025年12月15日 3.5% 引き下げと同時に有料会員限定化
2026年9月7日(現在) 3.5% 有料会員限定のまま据え置き。8月22日から1カ月限定の上乗せキャンペーン

出典: 2025年までの推移はDL NewsDecryptの報道(いずれも2025年12月11日)、現在の3.5%はCoinbase公式ページ(2026年9月7日確認)。料率は変動制で、地域により異なります。

Coinbaseはこのほかに2つの窓口を持っています。1つは自己管理型ウォレットのBase App(旧Coinbase Wallet)で、現在の料率は最大3.35%です(CoinbaseがApp Storeに掲載している案内、2026年9月7日確認)。会員条件はありませんが、米国限定で、Coinbase口座との連携が必要です。料率はCoinbaseの裁量でいつでも変わります(Coinbaseヘルプ)。経緯をたどると、Coinbase Wallet時代の2024年11月に4.7%へ引き上げた時期がありましたが、2025年7月のBase Appへの改称を経て、現在はそこから1ポイント超低い水準にあります。もう1つは、USDCを貸し出して利回りを得るレンディングです。分散型金融プロトコルMorphoの運用枠(ボールト)に資金を流す仕組みで、利回りは貸出市場の需給で日々変わり、現在値はアプリ内でのみ表示されます(Coinbaseヘルプ)。Coinbaseは2026年8月22日の告知で約7%としています。運用先であるBase上のSteakhouse社のUSDCボールト群の実勢利回りは、2026年9月7日時点で年3.2〜5.2%です(Morphoの公開データ)。この機能は2025年9月に開始され、開始時には最大10.8%と告知されました。2026年6月には運用先の異なる2種類(Prime/High Yield)に拡張されています。貸出は借り手側の信用リスクを取る別商品ですが、保有リワードから貸出利回りまでの選択肢が、1つのアプリの中に段階的に用意されています。

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