日本市場におけるWeb3導入のリアルな課題と未来展望 -TOYOTAとBinanceが語るビジネス活用のヒント-

2024.12.18

  • レポート

執筆者

Pacific Meta編集部

2024年11月27日、Pacific Hubにて、世界最大規模の暗号資産取引所の日本法人であるBinance Japan株式会社の代表取締役社長を務める千野氏と、ブロックチェーン技術を活用したイノベーション促進に取り組むトヨタファイナンシャルサービス株式会社のシニアマネージャー岸本氏によるパネルディスカッションが開催された。業界の最前線で活躍する2人の貴重なコラボレーションが実現した本イベントでは、日本市場におけるWeb3導入のリアルな課題と未来について、専門家ならではの深い見解が交わされた。

目次

登壇者紹介

千野 剛司 / Takeshi Chino : Binance Japan株式会社 代表取締役社長

2006年に東京証券取引所に入社。日本証券クリアリング機構でOTCデリバティブの清算プロジェクトを主導し、清算決済分野の経営企画を担当。その後、PwC Japanで経営企画業務に従事。2018年にKrakenに入社し、金融庁登録に貢献、2020年に日本代表に就任。2022年7月より現職。

岸本 隆平 / Ryuhei Kishimoto : トヨタファイナンシャルサービス株式会社 戦略企画部 ブロックチェーングループ シニアマネージャー

電通にて大手企業の周年事業、MVV策定などの戦略クリエイティブを経験。現在はトヨタの金融統括会社に所属し、トヨタ・ブロックチェーン・ラボのブランドおよび技術戦略をリード。

日本市場における暗号資産の課題と展望

本パネルディスカッションでは、日本市場における暗号資産の課題とWeb3導入の可能性について意見が交わされた。

-ブロックチェーン技術との親和性が高い魅力的な市場。大企業が安心して活動できる制度も徐々に整いつつある(千野氏)

– デジタルアセットが充実すれば、普及の可能性は十分にある(岸本氏)

千野氏は、Binanceが日本市場に参入した背景について、「日本の厳しい法規制をもってしてもなお、日本市場には大きな魅力がある」と述べた。特に、アニメをはじめとした、日本のコンテンツ産業がブロックチェーン技術との高い親和性を持つと考えを示し、新たなビジネスや革新の可能性を秘めていると意見を述べた。一方、暗号資産にまつわる日本の税制の厳しさは、やはり彼らにとってもハードルのひとつとなっていた。しかし、業界全体で税制改善への動きが進んでいることに千野氏は期待感を示した。また、日本政府がWeb3やブロックチェーンに対して積極的な姿勢を示している点を評価し、自民党が発表したWeb3ホワイトペーパーを例に挙げつつ「これほど政府が好意的に取り組む国は珍しい」と述べた。これらを踏まえ、大企業が安心して活動できる基盤が整いつつあることを強調した。

一方、岸本氏は「デジタルアセットが充実しない限り、トークンが決済手段として普及するのは難しい」と述べた。そして、発展途上国では既存の金融システムが不十分なためブロックチェーンが導入されやすい一方で、先進国では既存のシステムが整っているため普及が難しいと指摘した。ただし、岸本氏は「デジタルアセットが増えることで、普及が進む可能性は十分にある」とも付け加えている。例えば、特定のニーズに対応した新しいトークンが登場したり、決済手段としての利便性が評価される場面が増えたりすれば、消費者に選ばれるようになるだろうと予測した。

Web3の普及においては、規制整備やデジタルアセットの充実がカギを握るという点で、両氏の意見は一致した。

ブロックチェーン技術がもたらす未来の経済の姿

続いて、Web3およびブロックチェーン技術が既存の経済や産業に与える影響について、千野氏と岸本氏がそれぞれの立場から語った。

この記事は会員限定です。