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今週のオンチェーン金融2026年8月15日

三菱UFJが国債レポのオンチェーン化へ、Tetherは初の完全監査を通過

対象期間: 8/8(土)〜8/14(金)12:00 / 公開日: 2026-08-15(土)

本レポートは、特定の暗号資産・取引所・サービスの利用を推奨するものではありません。暗号資産・オンチェーン金融の1週間の出来事から、日本の金融プレイヤーの意思決定に関わるニュースを選び、一次ソースにあたって事実関係と背景を整理します。オンチェーン金融のいまを掴むためのニュース解説レポートとして、読者のみなさま向けに毎週発行します。ニュースの選定と解説は公開情報に基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。

今週の重要テーマ(編集部ピックアップ)

編集部が今週の重要テーマをピックアップしました。日本の金融プレイヤーの意思決定への影響が大きいと考える順に、国内外を分けずに並べています。

  1. 三菱UFJグループ、日本国債レポのオンチェーン化実証の開始を発表(8/13)
  2. デジタルガレージ、ステーブルコイン決済基盤「DG SPS」を商用展開(8/10)
  3. Tether、KPMGによる初の完全監査で無限定適正意見を受領(8/13)
  4. Bullish、トークン化した自社株の取引が規制下の取引所で成立(8/12)
  5. 香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」が機関投資家向けに提供開始(8/12)
  6. 米CLARITY法案、上院の採決手続きは9月15日へ(8/8)

1. 三菱UFJグループ、日本国債レポのオンチェーン化実証の開始を発表(8/13)

三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ銀行の4社は8月13日、日本国債のレポ取引(国債を担保に短期資金を貸し借りする取引)をオンチェーン化する実証実験の開始を発表しました。実証はDigital Asset社およびProgmat社と共同で行い、機関投資家向け金融に特化して構築されたブロックチェーン「Canton Network」を使います。実証するのは2つの項目です。1つは国債とデジタルマネーをブロックチェーン上で同時に受け渡す決済(DvP)で、デジタルマネーにはトークン化預金(銀行預金をブロックチェーン上で扱える形にしたもの)とステーブルコインの両方の利用を検討します。もう1つは、スイスのSecured Finance社が提供するレンディング・プロトコル(担保付きの資金取引を自動で実行するプログラム)を使った、レポ取引の契約から決済までの一連の自動化です。国債は、権利を金融機関の口座で電子的に管理する現行の振替制度上の国債(振替国債)としての法的性質を維持します。そのうえで、投資家の口座を管理する金融機関(口座管理機関)が持つ帳簿(振替口座簿)を、ブロックチェーンと連動して更新する方式を採ります。発表は、米国債の日中(当日開始・当日終了)レポ取引の商用サービスが既に稼働している海外動向を背景に挙げています。本件は金融庁「決済高度化プロジェクト(PIP)」の支援を受けた実証実験の一部です。出典: 三菱UFJフィナンシャル・グループ

編集部コメント: 国債レポは国内短期金融市場の主要な取引であり、日中レポが実現すれば、資金・資本効率の改善が銀行・証券の資金繰り実務に直接及ぶと見込まれます。決済手段としてトークン化預金とステーブルコインの両方を候補に挙げる設計のため、円建てデジタルマネーの使い分けが市場インフラの実務の中で比較されることになります。

2. デジタルガレージ、ステーブルコイン決済基盤「DG SPS」を商用展開(8/10)

デジタルガレージは8月10日、ステーブルコイン決済基盤「DG Stablecoin Payment Service(DG SPS)」の商用展開を始めたと発表しました。決済事業者の既存の決済システムと接続して使う方式のため、加盟店はブロックチェーン対応の設備投資や運用変更をせずにステーブルコイン決済を導入できます。先行提供先はジェーシービー(JCB)と、グループの決済子会社DGフィナンシャルテクノロジーです。対応する通貨は、ブロックチェーン「Base」上で発行される米ドル建てステーブルコインUSDCから始めます。今後は日本円建てのJPYCへの対応と、Ethereum、Polygonといった他のブロックチェーンへの展開を計画しています。JCBは国内外7,200万箇所の加盟店網と年間53兆3,901億円の決済取扱額を持ちます。なお、国内でステーブルコインを決済に使う際の制度上の位置づけは巻末の注記にまとめています(注5)。出典: デジタルガレージ

編集部コメント: 1月に始まったJCB・りそなホールディングスとの協業は、2月からの実証を経て、約7カ月で商用基盤に到達しました。既存のカード決済網に乗せる方式のため、加盟店を1店ずつ開拓しなくても受け入れ側を広げやすくなります。国内でステーブルコイン決済を使える場所の増加の速さを左右する要素の1つになります。

3. Tether、KPMGによる初の完全監査で無限定適正意見を受領(8/13)

米ドル建てステーブルコインUSDTを発行するTetherは8月13日、KPMG米国法人による監査を完了し、無限定適正意見(財務諸表が適正であるとする監査上で最も良い結論)を受領したと発表しました。監査の対象は、発行法人であるTether International, S.A. de C.V.の2025年度(2025年12月31日終了年度)の財務諸表で、同社にとって初の完全監査です。2025年末時点で、準備金は発行済みトークンに対応する負債を68億1,400万ドル(約1.1兆円。注4)上回っています。監査では保管業者の報告書のみに依存せず、金地金の全数を実地で検査したとしています。USDTの流通額は約1,800億ドルとCoinDeskが報じています。出典: TetherCoinDesk

編集部コメント: Tetherの準備金を巡っては、四半期ごとの保証業務報告(監査より確認の範囲が限定される第三者報告)にとどまり完全監査が実施されていないことが、かねて指摘されてきました。大手監査法人の監査意見が付いたことで、海外の金融機関がUSDTの取り扱いを検討する際の確認事項が1つ減ります。国内でUSDTを決済に使うには、資金決済法上の位置づけの整理が別途必要です(注5)。ステーブルコインを決済や担保に使う議論は発行体の開示水準を前提に進むため、監査を受けていない発行体にも同水準の開示への要求が及ぶと見込まれます。

4. Bullish、トークン化した自社株の取引が規制下の取引所で成立(8/12)

ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する暗号資産取引所運営会社のBullishは8月12日、トークン化した自社株(BLSH)の取引が同社のBullish Exchangeで成立したと発表しました。ジブラルタル金融サービス委員会(GFSC)の規制下にあるデジタル資産取引所でトークン化株式が取引されたのは初めてとしています。株式トークンはSolana上で発行され、取引は24時間365日、米ドル建てステーブルコインでほぼ即時に決済されます。初回の取引にはQube Research & Technologiesなど4社が参加し、Wintermuteが取引開始時の流動性提供者として加わるとしています。取引に参加できるのは承認された機関に限られます。同社は5月に、株主が保有株をSolana上のトークンとして保有できる仕組みを導入しています。名義書換代理人のEquinitiが公式の所有権記録をトークンと同期させる方式で、トークン保有者は通常の株主と同じ法的地位を持つと同社は説明しています。同社はそのEquinitiを42億ドルで買収する計画(2027年1月完了見込み)です。出典: BullishBullish(5月の株式トークン化)

編集部コメント: 既存の株式トークンの多くは、第三者が株式を預かって発行する預託型で、株主の権利がトークン保有者に直接及ばない点が課題でした。今回は発行体自身が名義書換の仕組みごとオンチェーン化しており、株式の権利がトークン保有者に直接ひも付く設計だとしています。24時間・ステーブルコイン決済の株式売買が規制下で成立したことは、株式のトークン化を検討する国内の市場関係者にとって具体的な先行事例になります。

5. 香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」が機関投資家向けに提供開始(8/12)

香港のAnchorpoint Financialは8月12日、香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」のベータ提供(対象を限定した初期提供)を開始したと、公認ディストリビューターの1社となるHashKey Exchangeとの共同発表で明らかにしました。Anchorpointはスタンダードチャータード香港、通信会社HKT、Animoca Brandsの合弁会社で、香港金融管理局(HKMA)から4月にステーブルコイン発行者ライセンス(ライセンス番号FRS01)を取得した、最初の認可発行体の1社です。提供対象は適格な機関・プロ投資家に限定されます。トークンはEthereumメインネット上で発行され、個人向けの提供は早くても2026年の終盤になるとTech Timesが報じています。出典: Anchorpoint・HashKey共同発表Tech Times

編集部コメント: 4月のライセンス取得から4カ月で実提供に到達し、香港のステーブルコイン制度は運用段階に入りました。銀行、通信、Web3企業の合弁という発行体の構成は、日本で銀行と事業会社がステーブルコイン発行体を組む場合の体制を考えるうえで参考になります。

6. 米CLARITY法案、上院の採決手続きは9月15日へ(8/8)

米上院は、デジタル資産の市場構造を定めるCLARITY法案について、夏季休会前の可決を見送りました。同法案は、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄の切り分けや、取引所・発行体のルールを定めるものです。スーン院内総務は8月8日、審議入りの動議を提出したとCoinDeskが報じています。この動議に対する討論打ち切り(クロージャー)の投票が休会明けの9月15日に行われる見通しと、SBI VCトレードが伝えています。手続きの進行には60票の賛成が必要で、共和党の議席だけでは足りず、民主党側の賛成が求められます。政府高官のデジタル資産関与を制限する倫理規定などを巡り、党派間の協議が続いています。出典: CoinDeskSBI VCトレード

編集部コメント: 連邦レベルの市場構造法制は9月に持ち越されました。この間、SECとCFTCは立法を待たずに公開の場での制度検討を続けており、8月20日のCFTC諮問委員会(下の予定参照)もその一環です。米国の制度動向を前提に事業を準備する日本企業は、法案の行方と並行して、当局側の検討の動きを先に追う必要があります。

今後の注目予定

  • 8月20日(木): 米CFTCが初のイノベーション諮問委員会を開きます。議題は暗号資産、AI、予測市場で、一般からのコメントは8月27日まで受け付けます(CFTC
  • 9月15日(火): 米上院がCLARITY法案のクロージャー投票を行う見通しです(SBI VCトレード
  • 9月17日(木): 米SECが24時間取引への準備を議題とするラウンドテーブルを開きます(SEC

今週の総括

今週は、国債レポ、上場株式、小売決済という伝統金融の主要領域で、オンチェーン化が実証や商用の段階へ同時に進みました。国内では、三菱UFJグループが市場インフラ側で実証の開始を発表し、デジタルガレージが決済側で商用展開を始めました。Tetherの監査通過は、最大手のUSDTに欠けていた完全監査の裏付けを加えました。他方で米国の市場構造法制は9月に持ち越され、制度の確定より実装が先行する状態が続いています。

注記(出典と一次確認の詳細)

  1. 選定基準と確認方針: 対象期間は2026年8月8日(土)0:00〜8月14日(金)12:00(日本時間)です。この期間の発表・報道から、日本の金融プレイヤーの意思決定への影響度が大きいと編集部が判断した順に掲載しています。各テーマは原則として一次ソース(発表企業・当局の公表資料)まで遡って確認し、一次ソースで確認できなかった事実は、本文中で報道ベースであることを明示しています。
  2. 報道ベースで掲載した事実: USDTの流通額(約1,800億ドル)はCoinDeskの報道によります。HKDAPのEthereumメインネットでの発行と個人向け提供の時期はTech Timesの報道によります。米上院の8月8日の手続きはCoinDesk、9月15日の投票日程はSBI VCトレード等の報道によります。
  3. 数値の出典と確認日: 本文の数値は2026年8月15日に各出典を開いて確認しました。JCBの加盟店数と決済取扱額はデジタルガレージの発表資料の記載値で、基準時点の記載はありません。Tetherの準備金超過額はTetherの発表、Bullishの買収金額は同社発表によります。
  4. 円換算: 1ドル=159.01円(2026年8月14日時点、欧州中央銀行の参照レートから算出したドル円レート)で換算し、丸めた金額には「約」を付けています。
  5. 仕組みの解説(国内でステーブルコインを決済に使う際の制度): 日本では、資金決済法上、ステーブルコイン(法令上は電子決済手段)の交換や媒介などは、登録を受けた事業者が担う制度になっています。海外発行のステーブルコインを国内で扱う場合も、この制度上の位置づけの整理が前提になります。本文のデジタルガレージとTetherに関する記述は決済基盤の機能と監査に関するもので、国内での取り扱いの可否を示すものではありません。
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