対象期間: 8/10(月)〜8/16(日) / データ取得日: 2026-08-17(月) / 公開日: 2026-08-18(火)
本レポートは、特定の発行体やサービスの利用を推奨するものではありません。ステーブルコインを定点観測の対象とするのは、トークン化された資産の中で発行規模が最も大きく、発行量・流通チェーン・使われ方の変化を数字で観測できるためです。オンチェーン金融のいまを掴むための市場観測レポートとして、読者のみなさま向けに毎週発行します。数値は公開データの当社集計に基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。
目次
- 円建てステーブルコイン
- ドル建てステーブルコイン(全体と定点10銘柄 / USDC / USDT / 価格ウォッチ)
- 1週間の出来事
- RippleがEthereum上でRLUSDを5,000万ドル増発
- TetherがTron上で10億ドルのUSDTをミントと報道
- アナリストコメント
ステーブルコイン導入支援のPacific Meta
自社でも発行・運用を実践する当事者チームが伴走します
1. 円建てステーブルコイン
円建ての残高は合計239.6億円で、前週から0.4億円(+0.2%)増加しました(注5)。
| 銘柄 | 発行者と型 | 残高(8/17時点) | 前週差 |
|---|---|---|---|
| JPYSC | SBI新生信託銀行(信託型) | 200.4億円 | ほぼ横ばい(-0.03億円) |
| JPYC | JPYC株式会社(資金移動業型) | 流通28.0億円 | +0.5億円(+1.8%) |
| GYEN | GMO Trust(米国の信託会社) | 10.1億円 | ほぼ横ばい(-0.05億円) |
| その他 | CJPY等 | 1.1億円 | — |
上位2銘柄は、JPYSCが信託型、JPYCが資金移動業型と、日本の制度上の枠組みが異なります(それぞれの仕組みは注5)。
JPYCの流通残高は28.0億円(前週比+1.8%)となり、3週連続で増加しました。この間の発行済み残高は88.1億円のまま変わっておらず、増加分は発行体の保有分(未流通。8/17時点で60.0億円)から市場へ移ったものです。チェーン(ステーブルコインが発行・流通する基盤のブロックチェーン)別では、Kaiaが流通の69.9%(19.6億円)を占めています。発行済み残高88.1億円は、4つのチェーン上の発行量をブロックチェーンの記録で直接照会した当社の集計と一致します(注5。当社とJPYC社の関係の開示は注9)。
首位のJPYSCは200.4億円でほぼ横ばいでした。7月31日の大口発行(前号で詳報)以降、残高は200億円台で安定しています。

13週前の5月18日時点では、円建ての合計は約44億円でした(注5)。JPYSCの登場で、円建て市場の規模は3か月で5.4倍になっています。直近3週はJPYCの流通増もこれに重なっています。
2. ドル建てステーブルコイン
2-1. 全体と定点10銘柄
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| ドル建て総残高(8/17時点) | 3,067.0億ドル | DefiLlama(注1) |
| 前週差 | -2.8億ドル(-0.09%) | 同(注2・注3) |
| 直近13週 | -144.1億ドル(-4.5%) | 同(注2) |
| 年初来 | +0.1% | 同(注2) |
| 1年前比 | +11.5% | 同(注2) |
総残高3,067.0億ドルは、日本の外貨準備高1兆2,871億ドル(2026年7月末、財務省)の約24%にあたる規模で、円換算では約48.8兆円(159.01円/ドル、注6)です。5月中旬からの13週で144.1億ドル減少した縮小局面は続いており、今週の-2.8億ドルは、その中で減少がほぼ止まった週にあたります(図1)。

定点観測する10銘柄です。合計でドル建て全体の92.5%を占めます(注3)。
| 銘柄(発行体・運営) | 残高(億ドル) | 前週差(百万ドル) | 前週比 |
|---|---|---|---|
| USDT(Tether) | 1,830 | -91 | -0.05% |
| USDC(Circle) | 719 | -440 | -0.61% |
| USDS(Sky) | 67 | +13 | +0.20% |
| DAI(Sky、旧MakerDAO) | 48 | -31 | -0.65% |
| USD1(World Liberty Financial) | 40 | -1 | -0.02% |
| USDe(Ethena) | 40 | +35 | +0.90% |
| USDG(Paxos系) | 34 | -26 | -0.76% |
| PYUSD(PayPal) | 28 | -20 | -0.71% |
| RLUSD(Ripple) | 17 | +127 | +8.02% |
| USDD(Tron系) | 15 | 0 | 0.00% |
今週の前週差-2.8億ドルは、増加した銘柄の合計+4.5億ドルと、減少した銘柄の合計-7.3億ドルの差引です(注3)。増加側はRLUSD(+1.3億ドル、+8.0%)を筆頭に、rwaUSDi(+0.6億ドル)、USDGO(+0.5億ドル。表のUSDG〔Paxos系〕とは別の銘柄です)と中堅銘柄に分散し、減少側はUSDC(-4.4億ドル)が6割を占めました。

直近13週の純減は144.1億ドルです。銘柄別では、USDT(-66.6億ドル)、USDC(-50.4億ドル)、USDS(-21.2億ドル)の3銘柄で計138.2億ドルと大半を占め、増加側の最大はUSDGO(+7.9億ドル)でした(注4)。直近13週は大手銘柄の減少が総額を押し下げています。

チェーン別では、Tron(+7.5億ドル、+0.8%)が増加側の中心で、USDTの増加によるものです(注3)。比率ではKaia(+25.4%、+0.5億ドル)、Robinhood Chain(+9.3%、+0.5億ドル)、Monad(+7.1%、+0.5億ドル)、Stellar(+6.8%、+0.6億ドル)の増加率が高くなっています。減少側はEthereum(-7.1億ドル)とSolana(-5.3億ドル)が大きく、Solanaの減少はUSDCの-5.5億ドルによるものです(注3)。Hyperliquid L1は61.9億ドル(-0.4%)で5位を維持しており、この内訳は姉妹レポートの週刊Hyperliquidが毎週観測しています。

2-2. USDC: Solanaで前週と逆方向の減少
USDCの残高は718.9億ドルで、前週から4.4億ドル(-0.61%)減少し、今週最大の減少銘柄になりました。チェーン別ではSolana上で5.5億ドル減少し、Ethereum上では0.9億ドル増加しています(注3)。Solana上のUSDCの週次増減は、前号の+2.6億ドルから今週の-5.5億ドルへと、1週間で方向が反転しました。
裏付け資産の開示は、月次で会計事務所Deloitteの第三者検証を受ける方式です。準備金の大半はBlackRockが運用するCircle Reserve Fund(現金・短期米国債・翌日物レポ〔翌日返済の資金貸借取引〕で構成)に置かれ、保有内訳は週次、ファンドの明細は日次で公開されています(出典: Circle)。発行体のCircleは8月5日に2026年第2四半期の決算を公表しました。総収入・準備金収入は7.1億ドル(前年比+7%)、継続事業の純利益は4,800万ドルで、6月末のUSDC流通量は733億ドル(前年比+19%)でした(出典: Circleの発表)。当社集計の8月17日時点の残高718.9億ドルは、この6月末値から1.9%低い水準です。
収益の目安は、残高718.9億ドルに米3か月物国債利回り(3.71%、8/13時点)を掛けた単純計算で、年率約27億ドルに相当します。発行体の費用や提携先への分配を差し引く前の、当社の粗い推計です(注8)。
2-3. USDT: Ethereumで減少、Tronで増加
USDTの残高は1,829.9億ドルで、前週からは0.9億ドル(-0.05%)の減少とほぼ横ばいでした。ただしチェーン別の動きは大きく、Ethereum上で8.2億ドル減少し、Tron上で7.5億ドル増加しています(注3)。この結果、USDT全体に占めるTron上の残高(905.6億ドル)の比率は49.5%(前週は49.1%)となり、5割に迫りました。Ethereum上は740.9億ドル(40.5%)です。対象週にはTron上での大口ミント(トークンの新規発行)の報道もありました(セクション3②)。
裏付け資産の開示は、四半期ごとのアテステーション(外部会計事務所による準備資産の検証報告。実施者はBDO)方式です。7月31日公表の直近版では、資産が負債を上回る超過準備が約41.1億ドル、金の保有が146トン超と示されました(出典: Tether)。
収益の目安は、残高1,829.9億ドルに米3か月物国債利回り(3.71%)を掛けた単純計算で、年率約68億ドルに相当します。ただしTetherの準備には金やビットコインなど利回りを生まない資産も含まれるため、この計算は上振れしやすくなります。同社が公表した第2四半期の純営業利益15億ドルを単純に年率換算すると約60億ドルで、おおむね整合します(注8)。
2-4. 価格ウォッチ
8/17取得時点では、残高10億ドル超の主要銘柄にペッグ(連動対象の価格)から±0.5%を超える乖離はありませんでした。対象を残高1億ドル超まで広げると、apxUSD(-6.3%)、FRAX(-0.8%)、satUSD(-0.7%)の3銘柄で下方の乖離を検知しています(注7)。apxUSDの乖離は前週の-5.1%から拡大しました。前週に検知したブリッジ版(別のチェーンへ移送されて流通する分)のBUSD(-0.52%)は、今週は0.5%以内に収まっています。
3. 1週間の出来事
今週の数値の増減に関連する発表を、ブロックチェーン総研編集部が2本選びました。
① Rippleが8月14日、Ethereum上でRLUSDを5,000万ドル増発しました。増発後の総供給16.3億ドルのうちEthereum上は8.1億ドル(49.8%)となり、発行元の台帳であるXRP Ledger上(8.2億ドル、50.2%)に並ぶ直前まで拡大しました(いずれも8/14時点。出典: U.Today)。当社集計では、RLUSDは今週+1.3億ドル(+8.0%)で、うちEthereum上が+1.2億ドルと増加の大半を占めました(8月14日の増発はその一部で、対象週にはこのほかの増発分も含まれます。注3)。
② TetherがTron上で10億ドルのUSDTをミントしたと、8月11日に報じられました(TRON DAOの8月10日の発信を参照した報道で、出典: cointrust)。当社集計では、対象週のTron上のUSDTは7.5億ドル増加し、Ethereum上は8.2億ドル減少しました。増減の詳細はセクション2-3のとおりです。
4. アナリストコメント
総残高がほとんど動かない週でも、チェーン別の内訳は動いています。USDTはEthereum上で8.2億ドル減少してTron上で7.5億ドル増加し、USDCはSolana上で5.5億ドル減少しました(銘柄全体でも4.4億ドルの純減です)。RLUSDは、発行元の台帳であるXRP Ledgerの外側にあたるEthereum上で供給を増やしています。円建てでも、JPYCは流通の7割がKaia上にあるという構成です。総残高だけを見ると変化の乏しい週ですが、残高がどのチェーンに置かれているかは毎週入れ替わっており、日本の金融機関がステーブルコインの対応チェーンや提携先を検討するときは、この銘柄×チェーンの内訳が判断材料になります。来週の観測点は、USDTのTron比率が5割を超えるかどうか、USDCのSolana上の増減がどちらへ振れるか、それに前号で取り上げたローソンの実証実験(第2弾)の続報です。本レポートはチェーン別の内訳を毎週同じ定義で観測していきます。
注記(集計方法と出典の詳細)
- 総残高の定義: DefiLlamaが収録するドル連動型ステーブルコインのうち、残高1,000万ドル以上の銘柄の流通額合計(取得時点の当社集計)です。この収録には、CircleのUSYCやOndoのUSDYのように保有中に価値が増加する利回り蓄積型や、BlackRockのBUIDLのように利回りを分配で還元する型のトークンも含まれます(合計で全体の3%前後です)。ブリッジ(チェーン間の移送)による二重計上はDefiLlama側で控除されています。突合として、CoinGeckoのステーブルコインカテゴリ上位250銘柄の時価総額合計は3,020億ドルで、当社集計との差は1.5%でした。差は対象銘柄の範囲と、流通額・時価総額の定義の違いによります。
- 前週差の基準: 前週差は、2026-08-17 18時台(日本時間)取得のスナップショットと、DefiLlamaが公表する前週値との差です。表の「直近13週」「年初来」「1年前比」は日次公表値(毎日0時UTC締め)によるもので、取得時点のスナップショットとは締めの時刻が最大10時間ずれます(取得時点の総額3,067.0億ドルに対し、直近の日次値は3,063.6億ドルです)。前週値は取得元が公表する7日前値(一部銘柄は前号値で補正。注3)であり、前号に掲載した取得時点の総額とは0.2%程度ずれます。1年前比の基準は2025年8月16日の日次値です。
- 定点10銘柄と寄与分解の方法: 定点10銘柄はブロックチェーン総研編集部が定めた観測リストで、残高はドル建て全体の92.5%を占めます。寄与分解は残高1,000万ドル以上の全銘柄を対象とし、増加側と減少側を相殺せずに合算しています。チェーン別は主要チェーンの取得時点スナップショット差で、ブリッジ経由の重複を含むチェーンがあるため、増減の観測のみに使い水準や順位の断定には使いません。銘柄×チェーンの内訳(USDTのEthereum・Tron上の増減、USDCのSolana上の増減、RLUSDのEthereum上の増減)は、各銘柄の詳細データからの当社集計です。USDTのTron・Ethereum上の残高比率(49.5%等)はこの銘柄詳細データの水準によるもので、冒頭の留保(増減の観測のみに使う)はブリッジ重複を含むチェーン別合算値に対するものです。なおUSDDとUSPDは、取得元の前週値の欄が更新されていなかったため、前週値には前号(8/10取得)のスナップショットを用いています。USDDは取得元の詳細系列も7月上旬から更新が止まっており、前号までに掲載した週次増減には取得元の停滞の影響が含まれていた可能性があります。また、報道にあるミント額は償還との差引前の値で、当社集計の週次増減(純増減)とは概念が異なります。チェーン別合算と銘柄別合算の前週差には、集計対象範囲の違いによる0.1億ドル未満の差があります。
- 13週さかのぼりの方法: 期間は5月18日から8月16日(総額の日次系列の終点に統一)です。銘柄別は流通上位と変化の大きい14銘柄を対象とし、詳細系列を取得できない銘柄(USDD等)と残差は「その他」に含めています。
- 円建ての集計と制度の型: 円建ての数値はDefiLlamaの銘柄詳細データ(ペッグ通貨建て)によるもので、円建てのまま集計しています。JPYCは「流通」(市場に出回る分)と「発行済み」(発行体が保有する未流通分を含む全量)を区別して書いています。オンチェーン突合として、JPYCの発行済み残高は4チェーン(Ethereum・Polygon・Avalanche・Kaia)の発行量をブロックチェーンの公開記録で照会した合計88.05億円がDefiLlamaの値と一致し、JPYSCはEthereum上の発行量200.57億円に対しDefiLlama値200.45億円で、差0.06%は取得時点の違いによります。制度の型は、JPYSCが信託銀行の発行する信託型(3号電子決済手段。資金決済法上の類型)、JPYCが資金移動業の登録に基づく型です。13週前の円建て合計(約44億円)は、ドル建てと同じ窓(5月18日時点)で、DefiLlamaのドル換算系列に取得時点の為替を乗じた当社の概算です。なおDefiLlamaのJPYC集計は2026年7月下旬に未流通分の分離が始まり、それ以前の流通系列とは連続しません。
- 円換算と規模比較: 円換算は159.01円/ドル(ECB参照レート、8/14時点)です。外貨準備高は財務省「外貨準備等の状況」(2026年7月末)によります。
- 価格ウォッチの対象: 残高1億ドル超のドル連動型を対象に、ペッグから±0.5%超の乖離を一律の基準で抽出して列挙しています。保有中に価値が増加する利回り蓄積型(USDY、USYC、Re ProtocolのreUSD等)は価格が1ドルを上回る設計のため、対象から除いています。
- 収益の目安の方法: 発行体の収益の目安は、ステーブルコイン残高に米3か月物国債利回り(セカンダリー市場レート3.71%、8/13時点、出典: FRED DTB3)を掛けた単純計算です。発行体の費用、提携先への分配、準備資産の構成を考慮しておらず、業績の予想ではありません。TetherはBDOのアテステーションに記載された四半期純営業利益の単純年率換算を併記して突合しています。Circleの第2四半期決算値(総収入・準備金収入7.1億ドル)は四半期実績であり、当社の単純計算とは対象期間・範囲が異なります。
- 開示: Pacific MetaはJPYC株式会社のパートナーです。本レポートの記述は公開データと公表資料のみに基づいており、同社からの依頼や監修は受けていません。
