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特集・調査2026年8月20日

ビットコイン6.9万ドル回復、ETH・HYPE主導の全面高が起きた3つの理由

米国時間8月19日、暗号資産市場が全面高となりました。ビットコインは一時6.9万ドル台を回復し、執筆時点(日本時間8月20日11時41分)も6.9万ドル台で推移しています。イーサリアム(ETH)は24時間で18%を超えて上昇し、トランプ大統領が名指しで言及したHyperliquidのHYPEは19%高となりました。ホワイトハウスでの会合、SECの新規則案、米財務省の国債買い戻し増額という3つの政策材料が同じタイミングで重なった動きです。本記事では、何が起きたのか、どこに資金が向かったのか、なぜ上がったのかを、執筆時点のデータで整理します。

本記事は、特定の暗号資産や取引所・サービスの利用を推奨するものではありません。記載の数値は公開データに基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。

本記事は次の順で構成しています。

  1. 何が起きたか
  2. どのセクター・銘柄が伸びているのか
  3. なぜ上がったのか
  4. トランプ発言の趣旨解説
  5. 今後の注目ポイント

1. 何が起きたか|主要銘柄がそろって上昇、清算約19.2億ドルが値幅を増幅

執筆時点(日本時間8月20日11時41分)の主要5銘柄の価格を以下にまとめます。騰落率は、直近24時間の変化と、直近1週間の安値からの上昇率を併記します。安値からの上昇率は「今回の上昇局面でどれだけ戻したか」を示す値であり、比較の起点が異なる点に注意してください。日付・時刻は日本時間です。

銘柄 価格(ドル) 24時間変化 直近1週間の安値からの上昇率
ビットコイン(BTC) 69,336ドル(約1,098万円) +7.7% +10.8%(8月14日安値62,553ドル比)
イーサリアム(ETH) 2,255ドル +18.2% +20.9%(8月15日安値1,865ドル比)
ソラナ(SOL) 84.9ドル +10.5% +14.4%(8月17日安値74.2ドル比)
XRP 1.10ドル +10.7% +11.7%(8月18日安値0.989ドル比)
Hyperliquid(HYPE) 69.5ドル +19.2% +25.2%(8月15日安値55.5ドル比)

出典はCoinGecko(2026年8月20日11時41分取得、ドル建て・時間足)です。円換算は同時点のCoinGecko円建て価格を使っています。

主要5銘柄の直近7日間の騰落率(7日前=0%)
主要5銘柄の直近7日間の騰落率(7日前=0%)。出典: CoinGecko(2026年8月20日11時41分 日本時間取得)

上のチャートのとおり、5銘柄は8月19日(日本時間)までは7日前比±7%以内の範囲にとどまっていました。米国時間8月19日のホワイトハウス会合の前後から上げ幅が拡大し、値動きの大半がこの半日に集中しています。

上昇の値幅を増幅したのが、下落方向のポジションの強制決済です。The Blockの報道によると、米国時間8月19日午後の時点で、直近24時間の清算(証拠金取引の強制決済)は約19.2億ドルに達し、その大半は価格下落を見込むショートポジションでした。清算額は集計時点により増減します。ショートの強制決済は買い戻しを伴うため、上昇をさらに加速させます。いわゆるショートスクイーズが値幅を広げました。

2. どのセクター・銘柄が伸びているのか|HYPE・ETHが主導、関連株も広く上昇

2-1. 大型アルトコイン

今回の上昇はビットコインよりもアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)の上げ幅が大きい点が特徴です。24時間の上昇率はHYPEが+19.2%、ETHが+18.2%で、いずれもBTCの+7.7%を10ポイント以上上回りました。SOLとXRPも10%台の上昇です。

上げ幅が最も大きいHYPEは、デリバティブ取引所Hyperliquidのトークンです。トランプ大統領がホワイトハウスの会合でHyperliquidを名指しし、米国への導入にCFTCが取り組んでいると述べたことが直接の材料になりました(発言の内容は第4章で解説します)。Hyperliquidは規制の不確実性から米国では公式に利用できない状態が続いてきたと報じられており、HYPEは24時間で19%高、直近1週間の安値からは25%高となっています。

アルトコインが主導した背景には、材料の性質があるとみられます。後述するCLARITY法案とSECの新規則案は、いずれも「どのトークンが証券規制の対象になるか」という、アルトコインが長年抱えてきた規制リスクに直接関わる内容です。ビットコインは商品(コモディティ)として扱われてきた経緯があるため、規制明確化の恩恵は相対的にアルトコインへ大きく働くとみられます。なかでもXRPは、発行に関わるRipple社の経営陣がホワイトハウスの会合に招かれた当事者銘柄です。

2-2. 暗号資産関連株

米国株市場では暗号資産関連銘柄が買われました。中心はコインベース(COIN)で、米国時間8月19日の昼時点で11%高の162ドル台まで上昇し、終値は9%高と報じられています(Decryptの報道)。同社のアームストロングCEOはホワイトハウスの会合に招かれており、規制の明確化による恩恵が大きい企業として報道で取り上げられています。

ビットコイン保有企業のストラテジー(MSTR)と、イーサリアム保有企業のビットマイン(BMNR)は、同じ昼時点でいずれも13%高となりました。このほかThe Blockの報道では、FLDが約20%高、BTGOとABTCが約15%高と伝えられています。Hyperliquid関連では、ナスダック上場のHyperliquid Strategies(PURR)が30.4%高、21Shares・Bitwise・グレースケールのHyperliquid関連ETF3本がいずれも約20%高と報じられました(The Blockの報道)。本段落の騰落率は米国時間8月19日の取引時間中の値であり、終値の上昇率はこれと異なる場合があります(終値ベースではストラテジーが12%高でした)。

2-3. 予測市場

ホワイトハウスの会合には、取引所や発行体と並んで、予測市場(選挙や経済指標などの結果に賭ける市場)を運営するKalshiとPolymarketの経営陣も招かれました。両社は上場企業ではないため株価での確認はできませんが、規制当局のトップが同席する場に呼ばれたこと自体が、予測市場を暗号資産と並ぶ政策支援の対象として扱う姿勢を示しています。また、米国時間8月20日には、CFTC(米商品先物取引委員会)のイノベーション諮問委員会が初会合を開きます。同委員会は「技術・法・政策・金融の交差領域の課題」について委員会に助言する目的で設置されており(CFTCの発表)、予測市場を含む新分野の規制枠組みを議論する場になるかが注目されます。

3. なぜ上がったのか|政策の追い風が3つ同時に重なった

3-1. トランプ大統領のホワイトハウス会合(8月19日)

米国時間8月19日、トランプ大統領はホワイトハウスにCoinbase、Robinhood、Ripple、Gemini、Kalshi、Polymarketの経営陣を招き、SECのアトキンス委員長、CFTCのセリグ委員長、ベッセント財務長官が同席するなか、暗号資産の市場構造を定めるCLARITY法案の可決を議会に直接要求しました。あわせて、デリバティブ取引所Hyperliquidの米国導入にCFTCが取り組んでいることを明らかにしました。詳細は第4章で解説します。

3-2. SECの新規則案「Regulation Crypto Assets」(8月18日公表)

前日の8月18日、SEC(米証券取引委員会)は暗号資産に関する新しい規則案「Regulation Crypto Assets」を公表しました。柱は3つあります。① スタートアップ向けに4年間・500万ドルまでの調達を登録義務から免除する ② 12カ月間で7,500万ドルまでの免除枠を設ける ③ トークンそのものを投資契約から切り離して扱うセーフハーバー(一定条件下で規制適用を猶予する仕組み)を導入する、という内容です。コメント期間は連邦官報への掲載日から60日間で、成立すればトークン発行の法的リスクが下がるとみられます(SECの発表)。

3-3. 米財務省の国債買い戻し倍増(9月9日から)

米財務省は、10〜30年債を対象とする買い戻しオペの1回あたり規模を20億ドルから40億ドル以上へ引き上げ(少なくとも倍増)、9月9日から実施します。財務省が市場から長期国債を買い戻すと、長期債の需給が緩和され、長期金利の上昇圧力が和らぎます。中央銀行の量的緩和のような資金の純供給とは仕組みが異なりますが、この需給改善への期待が株式などのリスク資産全般への追い風となり、暗号資産にも波及したとみられます(The Blockの報道)。

3つの材料は、いずれも単独では既定路線の延長と受け取れる内容です。ただし、8月18日の規則案と19日の会合という規制面の追い風に、財務省の買い戻し増額という需給面の材料が重なったことで、下落を見込んでいたポジションの巻き戻しを誘発し、第1章で述べたショートスクイーズにつながりました。

4. トランプ発言の趣旨解説|議会にCLARITY法案の可決を直接要求

発言の内容

トランプ大統領は会合の冒頭で「金融・暗号資産・テクノロジー分野における全米で最も優れた頭脳を迎えられて嬉しい」と述べ、業界経営陣を持ち上げたうえで、CLARITY法案を可決するよう議会に求めました(Bloombergの報道)。トランプ大統領は8月上旬にも、暗号資産を重要な国家的テーマと位置づけ、米国が手を引けば中国に主導権を奪われるという趣旨の発言をしたと報じられており(Bitcoin.com Newsの報道)、暗号資産をAIと並ぶ国家間競争の領域として扱っています。

発言は個別のプロジェクト名にも踏み込みました。トランプ大統領はデリバティブ取引所Hyperliquidについて「マイク(セリグCFTC委員長)が、Hyperliquidを完全に法令に準拠した合法的な形で米国へ持ち込むことにも取り組んでいると理解している」と述べています(The Blockの報道)。セリグ委員長も同席の場で、オンチェーン技術が市場を変革するとし、法令順守を条件にオンチェーン市場を米国へ取り込む道筋を作りたいと表明しました。大統領が個別の取引所名を挙げて米国参入に言及したことは市場で材料視され、第2章で述べたHYPEと関連ETF・関連株の上昇に直結しました。

CLARITY法案とは

CLARITY法案は、暗号資産をSEC(証券規制)とCFTC(商品先物規制)のどちらが管轄するかの線引きを定める市場構造法案です。米国ではこの線引きが曖昧なまま、SECによる執行(訴訟)で事後的にルールが形成されてきました。法案が成立すれば、トークンごとに「証券か商品か」を予見できるようになります。

法案は上院で停滞しています。停滞の主因は、トランプ大統領の一族が暗号資産事業を手がけていることへの利益相反懸念で、民主党は大統領一族を対象に含む倫理規定を求めており、一部の共和党議員も条項の文言に難色を示しています(Cryptopolitanの報道)。トランプ大統領は資産を第三者に委ねるブラインドトラストに言及する一方、一族の事業活動を制限することには反対しています。報道では、上院議員が議会に戻る9月14日以降に審議・採決の手続きが進む見通しですが、具体的な採決日は確定していません。

趣旨の3行整理

① 停滞しているCLARITY法案の可決を、大統領が議会に直接要求した。
② 業界経営陣と規制当局トップを同席させ、政権を挙げて暗号資産産業を支援する姿勢を示した。
③ 暗号資産をAIと並ぶ対中競争の領域と位置づけ、規制緩和を国家戦略として正当化した。

なぜ市場が反応したか

大統領による可決要求は、法案の成立確度を直接高めるものではありません。上院の採決権は議会にあり、利益相反をめぐる対立も解消されていないためです。それでも市場が反応したのは、①停滞していた法案について、大統領が可決を直接要求したことで9月の会期での審議進展への期待が強まった ②前日のSEC規則案と合わせて、立法と規制の両輪で明確化が進む構図になった、という2点によるとみられます。第1章のとおり、ショートポジションの強制決済が買い戻しを呼び、材料の大きさ以上に値幅が拡大した面もあります。

5. 今後の注目ポイント|9月中旬以降の上院審議が最大の節目

今後の日程を以下にまとめます。いずれも米国時間です。

日程 出来事 注目点
8月20日 CFTCイノベーション諮問委員会の初会合 予測市場を含む新分野の規制枠組みを扱うか
9月9日 財務省の国債買い戻し増額の実施開始 長期債の需給への実際の効果
9月14日以降 上院の会期再開、CLARITY法案の審議・採決手続き 採決日程の確定と、倫理規定をめぐる修正の有無
10月中旬以降(見込み) SEC規則案のコメント期間の締切(連邦官報掲載日から60日間) 業界・投資家保護側それぞれの意見の内容

最大の節目は、9月14日の上院の会期再開後に見込まれるCLARITY法案の審議です。採決日程は確定しておらず、利益相反をめぐる対立が続けば後ろ倒しになる可能性があります。一方、否決や大幅な後退となった場合は、今回の上昇の前提となった政策への期待が崩れることになります。当面はワシントンの日程が市場参加者の関心の中心になるとみられます。


出典

注記(集計方法と出典の詳細)

  • 価格・騰落率はCoinGeckoのドル建て公開データ(時間足)に基づきます。取得時点は2026年8月20日11時41分(日本時間)です。「直近1週間の安値」は、取得時点から遡って7日間の時間足の最安値を指し、日付は日本時間で表記しています
  • 「安値からの上昇率」は丸め前の価格から算出しているため、表の表示価格で再計算した値とは0.1ポイント程度ずれる場合があります
  • 円換算は同時点のCoinGecko円建て価格をそのまま用いています(BTC 69,336ドル=10,984,833円)
  • チャートの騰落率は7日前(日本時間8月13日12時)の価格を0%とした変化率で、本文の表にある「安値からの上昇率」とは起点が異なります
  • 清算額は報道の集計に基づく参考値であり、集計時点により増減します

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産・金融商品の売買を推奨するものではありません。投資勧誘・投資助言を目的とするものでもありません。記載の数値は執筆時点の公開データに基づいており、その正確性・完全性を保証するものではありません。法令・規則案に関する記述は公表資料・報道に基づく情報の要約であり、法的助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、投資元本を失う可能性があります。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

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