対象期間: 8/21(金)12:00〜8/28(金)12:00 / 公開日: 2026-08-28(金)
本レポートは、特定の暗号資産・取引所・サービスの利用を推奨するものではありません。暗号資産・オンチェーン金融の1週間の出来事から、日本の金融プレイヤーの意思決定に関わるニュースを選び、一次ソースにあたって事実関係と背景を整理します。オンチェーン金融のいまを掴むためのニュース解説レポートとして、読者のみなさま向けに毎週発行します。ニュースの選定と解説は公開情報に基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。
- 今週の重要テーマ(編集部ピックアップ)
- 1. Coincheck、電子決済手段等取引業の登録を完了(8/27)
- 2. 米国の銀行協会39団体、業界保有のブロックチェーン網の構築へ連合を設立(8/25)
- 3. 米欧の大手行、共同でのステーブルコイン発行を検討と報道(8/26)
- 4. SBI、海外のデジタル資産関連企業への出資を拡大(8/24・8/28)
- 5. 英財務省、イングランド銀行に決済革新を支援する副次的目標を導入へ(8/27)
- 6. スタンダードチャータード、香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」の初の銀行ディストリビューターに(8/24)
- 7. 大阪府、ステーブルコイン決済など4件の金融実証に補助金交付を決定(8/26)
- 8. 米BitGo、NYDIGの機関投資家向け取引事業の買収で合意と報道(8/27)
- 今後の注目予定
- 今週の総括
- 注記(出典と一次確認の詳細)
今週の重要テーマ(編集部ピックアップ)
ブロックチェーン総研編集部が今週の重要テーマをピックアップしました。日本の金融プレイヤーの意思決定への影響が大きいと考える順に、国内外を分けずに並べています。
- Coincheck、電子決済手段等取引業の登録を完了(8/27)
- 米国の銀行協会39団体、業界保有のブロックチェーン網の構築へ連合を設立(8/25)
- 米欧の大手行、共同でのステーブルコイン発行を検討と報道(8/26)
- SBI、海外のデジタル資産関連企業への出資を拡大(8/24・8/28)
- 英財務省、イングランド銀行に決済革新を支援する副次的目標を導入へ(8/27)
- スタンダードチャータード、香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」の初の銀行ディストリビューターに(8/24)
- 大阪府、ステーブルコイン決済など4件の金融実証に補助金交付を決定(8/26)
- 米BitGo、NYDIGの機関投資家向け取引事業の買収で合意と報道(8/27)
1. Coincheck、電子決済手段等取引業の登録を完了(8/27)
Coincheckは8月27日、ステーブルコインの取扱いに必要なライセンスである電子決済手段等取引業(注2)の登録を完了したと発表しました。登録番号は関東財務局長第00002号で、国内での登録はSBI VCトレードに続く2社目です。同社は2024年2月に米Circleとの提携を発表し、日本でのUSDC(米ドル建てステーブルコイン)へのアクセス拡大に取り組んできました。今回の登録により、ステーブルコインとオンチェーン金融の領域で事業展開を順次開始するとしています。出典: Coincheckの発表、あたらしい経済
編集部コメント: 取扱いが始まれば、国内でUSDCを取り扱える窓口はSBI VCトレード1社からCoincheckを加えた2社に広がります。利用者基盤の大きい交換業者が加わることで、米ドル建てステーブルコインの入手・換金の経路は個人・法人の双方で拡大しやすくなります。国内のステーブルコイン流通は、円建ての発行体(JPYC等)と外貨建ての取扱業者の両輪で層が厚くなる段階に入りました。
2. 米国の銀行協会39団体、業界保有のブロックチェーン網の構築へ連合を設立(8/25)
米国の州単位の銀行協会39団体は8月25日、銀行業界が保有・運営するブロックチェーン網の構築を目指す連合「BankChain Alliance」の設立を発表しました。ネットワークはスマート決済ツール、トークン化預金、ステーブルコイン、自動化された決済などへの対応を想定し、2027年の稼働開始を目標としています。技術パートナーは選定手続き中で、参加する銀行が所有と統治を担う業界保有型の運営を掲げています。発表では39団体が数千の金融機関を代表するとしており、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道では合計で約3,000行と伝えられています。出典: BankChain Allianceの発表、Decrypt、U.Today
編集部コメント: 大手行の独自基盤や大手テック企業の決済網に対し、中小銀行が共同保有のインフラで規模を確保する動きです。単独ではブロックチェーン基盤を持ちにくい銀行が業界団体を通じて共同構築する形は、勘定系の共同化や全銀システムの運営経験を持つ日本の銀行界にも当てはまる構図で、地域金融機関と共同システムベンダーには参照例になります。
3. 米欧の大手行、共同でのステーブルコイン発行を検討と報道(8/26)
バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、サンタンデールを含む12を超える金融機関が、共同でのグローバル・ステーブルコイン発行に向けた検討を進めていると、WSJが8月26日に報じました。報道によれば、まず米ドル建てで開始し、将来はユーロなどG7通貨への拡大も視野に入れています。またWSJは、JPモルガン・チェースが自行のステーブルコイン発行の可否を最近評価したと報じています。同行の広報担当者は、発行する計画はないとしたうえで、顧客需要と規制の展開に応じて選択肢を評価するとしています。出典: crypto.news、U.Today(いずれもWSJ報道を引用)
編集部コメント: 米国の大手銀行は、ステーブルコインと距離を置く姿勢から、発行の主導権を確保するための検討に入りました。共同発行がG7通貨に広がる場合、円建てトークンを米欧の銀行連合が先に形にする可能性があります。邦銀には、自行発行・共同発行・外部発行体との連携のどの経路で関与するかという新しい検討材料が加わりました。前週号で取り上げたSwift台帳のトークン化預金と合わせ、銀行マネーのオンチェーン化は複数の経路で並走しています(前週号の解説)。
4. SBI、海外のデジタル資産関連企業への出資を拡大(8/24・8/28)
SBIホールディングスは8月24日、UAE拠点のデジタル資産プラットフォーム企業Fassetへの追加出資を発表しました。株式の取得価額を基礎に算定したFassetの企業価値は10億ドルで、国際送金子会社SBIレミットと連携した次世代送金インフラの構築や、マレーシアでのデジタルバンクの共同運営などの協業を予定しています。また日本経済新聞は8月28日、SBIがインドネシアの投資プラットフォーム大手Ajaib(アジャイブ)グループへ2億7,000万ドル(約430億円)を出資し、株式の20%を取得して持分法適用会社とする見通しだと報じました。報道によれば、Ajaibはネット証券事業を核に暗号資産や資産運用も手がけ、利用者は300万人超です。協業ではSBIグループの円建てステーブルコイン「JPYSC」の流通促進と、暗号資産事業の海外展開を目指すとしています。出典: SBIホールディングスの発表、CoinPost(Ajaib出資の報道)、CoinPost(Fasset追加出資)
編集部コメント: SBIは国内でJPYSCの発行を進める一方、流通の出口を東南アジア・中東の利用者基盤に求めています。円建てステーブルコインの海外流通は相手国の規制と現地の取引網に左右されるため、現地大手への資本参加は流通チャネルを確保する具体的な手段になります。海外展開を視野に入れる国内の他の発行体・金融グループにとって、展開の型として参照する動きです。
5. 英財務省、イングランド銀行に決済革新を支援する副次的目標を導入へ(8/27)
英財務省は8月27日、イングランド銀行に対して、ステーブルコインを含むデジタルマネーと決済システムの革新を支援する副次的目標を新たに課す方針を発表しました。金融安定はこれまでどおり最上位の目標であり、金融安定を損なう形での革新支援は求められません。変更は審議中の金融サービス・市場法案の修正として行われ、同法案は9月7日と9日に貴族院で審議される予定です。イングランド銀行は目標の進捗を毎年議会へ報告します。同行は6月22日にポンド建てのシステミック・ステーブルコイン(決済インフラとして重要になったステーブルコイン)に関する政策文書を公表しており、規則にあたる行動規範案は2026年末までの確定を予定しています。出典: 英財務省の発表、イングランド銀行の政策文書
編集部コメント: 英国は、6月の規制枠組みと今回の中央銀行の責務の両面から、ステーブルコインを決済インフラの一部として扱う姿勢を明確にしました。中央銀行が革新支援の法定目標を持つ設計は、金融庁が制度整備を担い日本銀行が決済システムを監視する日本の役割分担と対照的で、円建てステーブルコインの制度設計を考える際の比較対象になります。
6. スタンダードチャータード、香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」の初の銀行ディストリビューターに(8/24)
スタンダードチャータード銀行(香港)は8月24日、香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」について、初の銀行ディストリビューター(顧客への提供・導入支援の担い手)になったと発表しました。HKDAPは、同行とHKT、Animoca Brandsの合弁会社Anchorpoint Financialが発行するステーブルコインで、Anchorpointは2026年4月に香港金融管理局からステーブルコイン発行者ライセンスを第1弾の2社の一方として取得しています。同行は機関投資家・法人顧客を対象に、トークン化MMF(マネー・マーケット・ファンド)の購入・決済への利用を2026年10〜12月に開始する計画のほか、グループ内の資金管理やクロスボーダー送金への組み込みを支援するとしています。出典: スタンダードチャータードの発表、ライセンス取得時の発表
編集部コメント: 香港では2025年8月施行のステーブルコイン条例の下で、発行体がライセンスを取り、銀行が提供・導入支援を担う分業が実際の取引段階に入りました。発行と仲介を分ける構造は日本の資金決済法の枠組みと似ており、国内の銀行・証券がステーブルコインの取次ぎに入る際の役割設計の参照例になります。テーマ1のCoincheckの登録と合わせ、規制されたステーブルコインを既存の金融機関が扱う局面がアジアで同時に進んでいます。
7. 大阪府、ステーブルコイン決済など4件の金融実証に補助金交付を決定(8/26)
大阪府は8月26日、「大阪府先駆的金融市場等形成支援事業補助金」について、応募12件から4事業を採択し、総額2,889万円の交付を決定しました。ステーブルコイン関連では、マイナンバーカードと連携したアプリでJPYC・USDCの店頭決済を実証するマイナウォレット(三井住友カードと共同、764万円)、加盟店が受け取ったステーブルコインを日本円で清算する仕組みを構築するHashPort(1,000万円)、大阪公立大学周辺の店舗でJPYC決済を実証するMi&T(125万円)の3件が採択されています。残る1件はSBI XDC Network APACによる輸出ファクタリングのオンチェーン化(TOPPAN・Gincoと連携、1,000万円)です。実証の実施期間は事業ごとに異なり、2026年10月から2027年3月までの間に設定されています。出典: 大阪府の公表資料、CoinPost
編集部コメント: 前週号で取り上げたコンビニ店頭の実証に続き、自治体の補助金がステーブルコイン決済の検証を後押しする段階に入りました。検証の論点は、決済が成立するかどうかから、加盟店への日本円清算や本人確認との接続といった運用面へ移っています。決済事業者と地域金融機関には、2026年度中に並行する複数の実証の設計差を比較し、自社の導入形態を絞り込む材料が揃います。
8. 米BitGo、NYDIGの機関投資家向け取引事業の買収で合意と報道(8/27)
暗号資産カストディ大手の米BitGoが、NYDIGの機関投資家向けトレーディング事業と関連資産を買収することで合意したと、CNBCが8月27日に報じ、ロイターも同じ内容を伝えています。報道によれば、NYDIGの約30人の従業員と、約250の機関顧客との取引関係がBitGoへ移ります。BitGoは既存のカストディ・決済・ウォレット事業に、デリバティブ、仕組商品、ファイナンスなどの資本市場サービスを加えることになります。出典: CNBC、ロイター報道の転載(UA.NEWS)
編集部コメント: カストディ事業者が取引・デリバティブ・資金調達の機能を取り込み、機関投資家向けのフルサービス化を進める再編です。米国では保管・執行・担保管理を一体で提供する事業者が競争の基準になっており、暗号資産関連サービスへの参入や提携を検討する日本の証券会社・信託銀行は、単機能の保管ではなく一体型を前提に相手先を評価する必要があります。
今後の注目予定
- 9月2日(水): トヨタファイナンスのデジタル社債「つむぐボンド」の募集が17時に締め切られます(トヨタファイナンスの申込ページ)
- 9月7日(月)・9日(水): 英国の金融サービス・市場法案が貴族院で審議されます。イングランド銀行への副次的目標の付与を含む修正が扱われます(英財務省の発表)
- 9月15日(火): 米上院が市場構造法案「CLARITY法案」の討論打ち切りの手続投票を行う見通しです(Troutman Pepper)
- 10月19日(月): 米財務省のGENIUS法規則案に対するパブリックコメントが締め切られます(DeFi Education Fund)
今週の総括
今週は、米国で銀行業界の集団的な動きが2つ表面化しました。中小銀行は協会39団体の連合で業界保有のブロックチェーン網の構築を打ち出し、大手行は共同でのステーブルコイン発行の検討を進めています。英国は中央銀行の法定目標に決済革新の支援を加える方針を示し、香港では銀行がライセンス制ステーブルコインの提供を始めました。国内でもCoincheckの登録によってUSDCの取扱窓口が2社に拡大しており、規制された枠組みの中へ既存の金融機関が入っていく動きが国内外で揃った1週間でした。
注記(出典と一次確認の詳細)
- 選定基準と確認方針: 対象期間は2026年8月21日(金)12:00〜8月28日(金)12:00(日本時間)です。この期間の発表・報道から、日本の金融プレイヤーの意思決定への影響度が大きいと編集部が判断した順に掲載しています。各テーマは原則として一次ソース(発表企業・当局の公表資料)まで遡って確認し、一次ソースで確認できなかった事実は、本文中で報道ベースであることを明示しています。
- 仕組みの解説(電子決済手段等取引業): 日本の資金決済法では、法定通貨に価値が連動するステーブルコインは「電子決済手段」と位置づけられ、発行者(銀行・資金移動業者・信託会社等)と、売買・交換・管理などの仲介を行う事業者が別の枠組みで規律されます。電子決済手段等取引業は後者の登録で、海外で発行されたステーブルコインを国内の利用者が売買する場合も、この登録を受けた業者が窓口になります。
- 報道ベースで掲載した事実: 米欧大手行の共同ステーブルコイン検討(テーマ3)はWSJの報道で、原文が有料購読の対象のため、crypto.newsとU.Todayの2媒体で内容を突合しています。BankChain Allianceの代表行数(約3,000行、テーマ2)も同報道によります。SBIのAjaibへの出資(テーマ4)は日本経済新聞の報道で、CoinPostの記事で数値を突合しています。BitGoによる買収(テーマ8)はCNBCとロイターの報道によります。CNBCの記事はサイトのアクセス制限により本文を直接開けなかったため、ロイター報道の転載と突合して掲載しています。
- 数値の出典と確認日: 本文の数値は2026年8月28日に各出典を開いて確認しました。大阪府の採択事業の内訳と金額は、大阪府の公表資料を基にしたCoinPostの記事の記載によります。Fassetの企業価値(10億ドル)は、SBIホールディングスの発表にある、追加出資の取得価額を基礎に算定した値です。
- 円換算: 約430億円は日本経済新聞の報道の記載値です。参考として、1ドル=159.39円(2026年8月27日。欧州中央銀行の参照レートを基にfrankfurter.devが算出したクロスレート)で換算すると、2億7,000万ドルは約430億円になります。

