騒音収集で稼げる「Silencio」とは?話題のDePINをその特徴や将来性とともに解説

2024.10.09

  • ノウハウ

執筆者

くりぷとくりぷと

前回のHeliumに続き、DePINのプロジェクトをご紹介します。

Silencioは、スマートフォンを使って騒音データを収集し、都市の環境改善に役立てる新しい取り組みです。このプロジェクトがどのように誕生し、どんなビジョンや特徴を持っているのか、そして、アプリケーションを活動したDePINの可能性について、順を追って説明していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

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    前提:騒音公害の影響

    騒音公害は、都市部で深刻な問題となっており、騒音による健康被害は多岐にわたります。例えば、睡眠障害や慢性的なストレス、さらには心血管疾患や糖尿病などの健康問題が騒音の影響で増加していると報告されています。

    また、世界的に騒音公害は年間5兆ドルの損失を引き起こしていると推定されています。この損失は、医療費の増加や労働生産性の低下、さらに都市計画やインフラへの悪影響を含んでいます。

    Silencioの概要

    Silencioとは、スマートフォンを使って周囲の騒音レベルを収集するDePINプロジェクトです。

    Silencioは、ユーザーがアプリを通じて日常生活の中で騒音を記録し、そのデータをネットワークに提供することで、騒音公害に対する解決策を提供することを目的としています。騒音データを収集することで、ユーザーは報酬として「NOISE Coin」を獲得できます。つまり、文字通り「騒音(NOISE)」がユーザーの利益になるというユニークなアプローチです。

    Silencioは、スマートフォンを通じて収集された騒音データを活用し、不動産市場や都市計画、観光業界での利用を目指しています。例えば、騒音レベルが高いエリアでは不動産価値が下がる傾向にあります。一方で静かな環境を提供できる宿泊施設は顧客満足度に直結するなど、騒音レベルは不動産市場や観光業界にとって重要な要素となっています。

    Silencio誕生の背景

    プロジェクトの創設者であるThomas Messerer氏とTheo Messerer氏の兄弟によると、Silencioのアイデアの種は20年以上前に生まれたと言います。彼らは聴覚障害を持つ親のもとで育ったため、さまざまな場所での騒音公害に常に敏感であり、Silencio立ち上げの際に、その経験が大きく関与したそうです。

    「私たちは、分散型の方法で地理データをクラウドソーシングするというコンセプトに魅了されました。収集したデータを民主的に活用し、人々の生活を向上させるというアイディアに突き動かされたのです。そこで、Web3コミュニティに大きな可能性を見出しました。」
    -Thomas Messerer氏

    Thomas氏は、家族が聴覚障害を持っていたことで、日常的に騒音の問題について深く考え、その解決策を模索してきました。Silencioは、こうした創業者の生活の中で気付いた課題をどのように解決するかを考えて生まれたプロジェクトです。創業者の想いを乗せ、世界の騒音公害の解決に導くことを目指しています。

    Silencioのネットワークとエコシステム

    技術面では、Silencioは2023年9月にpeaq Network上にプロトコルを立ち上げることを発表しています。

    peaq Networkは、Polkadotのパラチェーンに参加するブロックチェーンの一つであり、DePINに特化した機能やツールを提供していることから多くのDePINプロジェクトのエコシステムを形成しているプラットフォームです。

    Silencioの資金調達状況

    Silencioは、2023年から2024年にかけて大きな資金調達を達成しています。

    2023年第4四半期には、75万ドルのプレシード資金を調達し、さらに2024年2月には、Borderless Capitalが主導し、MV Global、Moonrock Capital、Cogitent Ventures、Artemis Capitalが参加したプレシードラウンドで100万ドルを追加調達しました。

    この結果、合計で175万ドルを調達し、プロジェクトの成長に向けた重要な基盤を築きました。資金は主にデータの精度向上や収集インフラの拡充、さらにユーザー参加型のプラットフォームの拡大に使われる予定です。

    Silencioの現在の利用状況

    現在、Silencioのネットワークには全世界で30万人以上のユーザーが参加しており、騒音データの収集と共有を通じて、180か国以上の都市環境の改善に寄与しています。

    ユーザーがスマートフォンを使用して測定した日常生活の騒音は、リアルタイムでネットワークに送信・集計されます。

    収集されたデータは、各国の騒音状況を視覚化するために用いられ、これにより包括的な騒音公害マップが作成されます。作成されたマップによって、騒音レベルが高いエリアを特定し、不動産評価や都市計画に活用されるほか、ホテルや飲食店の立地を選択する際などにも活用されます。

    NOISE CoinとSLCトークン

    ここでは、Silencioのトークン「NOISE Coin」と「SLCトークン」についてご紹介します。

    NOISE Coin

    Silencioでは、現在「NOISE Coin」というトークンが展開されています。NOISE Coinは、騒音データの収集や友人の紹介、その他のアクティビティにユーザーが参加することで与えられる報酬です。

    しかし、この記事を書いている時点では、NOISE Coinは暗号通貨取引所に上場されておらず、他のデジタル通貨や法定通貨との交換はできません。今後、暗号通貨取引所に上場すれば、Silencioのエコシステム内での報酬が実質的な価値を持ち、ユーザーは報酬を現実の取引に利用することが可能になります。

    画像:Silencio

    SLCトークン

    Silencioの次なるステップとしてSLCトークン(以下、SLC)の発行が予定されています。SLCは、Silencioプラットフォームのネイティブユーティリティトークンとして機能し、Blocksound Foundationおよびその関連会社との提携により提供されます。

    SLCは、Silencioエコシステム内でのプレミアム機能へのアクセスや、限定コンテンツ、特別イベントへの参加権を得るために使用される予定とされています。また、SLCを保有することで、ユーザーはSilencioのプラットフォームにおける重要な意思決定に対して投票する権利を持ち、プロジェクトの成長や方向性に影響を与えることができます。

    SLCは、データの投稿やリーグの昇格、友人の紹介などを通じて獲得することができ、参加度が高いほど多くのSLCを獲得できる仕組みとなっています。現在のNOISE Coinと役割が重なるためSLCはNOISE Coinに置き換わるトークンになるのかもしれません。

    また、SLCの総供給量の5%がエアドロップとしてユーザーに提供されることが発表されており、プロジェクト初期の参加者に対する特典も用意されています。

    具体的なトークノミクス(トークンの経済的仕組み)はまだ発表されていませんが、今後詳細が公開される予定です。トークノミクスが発表され次第、SLCの供給量や利用方法、流通に関するさらなる情報が明らかになると考えられます。

    Silencioアプリの特徴・使い方

    Silencioアプリの特徴

    Silencioアプリは、シンプルでわかりやすいデザインになっており、誰でも簡単に操作できるように設計されています。暗号資産ウォレットを作成して接続する必要がないため、Web3に馴染みがないWeb2ユーザーでも、すぐにアプリを利用することができます。

    Silencioは、2023年3月にiOSアプリがリリースされ、同年5月にはAndroidアプリもリリースされました。

    画像:筆者作成

    トップ画面下部のトロフィータブでは、ユーザーの騒音データ収集活動に基づくリーグボードが表示されます。リーグは全部で10個のランクに分かれています。NOISE Coinの保有量が多いユーザーほどランキング上位に位置し、競争意識が高まる仕組みです。

    このランキングシステムは、ユーザー同士の競争を促進するだけでなく、将来的なSLCトークンのエアドロップにも影響を与えるとされています。さらに、リーグボードではユーザーのプロフィールも確認できるため、他の参加者との競争や繋がりが生まれやすく、コミュニティの活性化にも繋がっています。

    Silencioアプリの使い方

    Silencioを理解するために実際に使ってみました。これから使い始める方はぜひ参考にしてください。

    ▼以下からSilencioアプリをダウンロードできます。

    1. アプリをインストールし、下記画面が表示されたら「Continue」をタップします。

    画像:筆者作成

    2. アカウント登録をしてください。 ご自身のE-mail アドレスを入力するかソーシャルログインでアカウントを作成します。

    画像:筆者作成

    3. こちらがTOP画面です。シンプルですっきりとしたメニュー画面です。一番下のSilencioロゴボタンをタップし測定を開始します。

    画像:筆者作成

    4. 測定方法に関するポップアップが表示されます。

    5. 測定タイプを選択します。

    Venue Check in : どこかの会場にチェックイン
    Open Mesurement : 特に指定なし

    今回は「Open Mesurement」で行っています。チェックインできる場所がある場合は、20ポイントが稼げる「Venue Check in」を使用しましょう。通常は1分で0.5coin稼ぐことができます。その他にも細かい条件を満たすと追加でNOISE Coinを稼げるそうです。

    画像:筆者作成

    6. 今回は15分測定しました。測定が終わったら「Claim your Coins」を押して終了します。

    画像:筆者作成

    7. 7NOISE Coinを獲得しました。最後にBonusが受け取れるので確実に受け取ってください。

    画像:筆者作成

    8. 1.4倍のBonusを獲得して報酬がアップしました。

    画像:筆者作成

    このように、Silencioのアプリは非常にシンプルなUI/UXとなっており、誰でもすぐに始められるようになっています。実際にアプリを触ってみて、個人的には、このアプリの気軽さとわかりやすさがSilencio最大の魅力なのではないかと感じました。

    スマホアプリを活用したDePINの可能性

    ここからは、リサーチをしてみた感想と考察を述べたいと思います。個人的には、Silencioをリサーチしてみて非常に可能性を感じました。特に、Silencioのようにスマホアプリで完結するDePINサービスは、Web3の新しい利用方法として注目すべき事例だと考えます。

    現状、Web3を日常的に使っているユーザーはまだごく少数です。特に、DePINに積極的にアンテナを張っている人は、暗号資産やブロックチェーン技術に興味を持っている層に限られており、一般的なWeb2ユーザーにとってはこの意味や概念はまだ難解です。

    このような状況で、Web3ウォレットを作成し、安全に管理することを求めるのは、一般ユーザーにとってかなりの負担となります。多くのWeb3サービスがこの課題に直面しており、いかにユーザーにWeb3アプリを使っているという意識をさせないか、そして、ウォレットの管理負担をどのように軽減するかが普及の鍵となります。

    ここで思い出されるのが、かつて人気を集めたSTEPNというアプリです。STEPNは、運動することで暗号資産を稼げるゲーム性を持つサービスとして話題となりましたが、その成功の背景にはWeb2ユーザーが違和感なく使える体験設計がありました。

    つまり、Web3技術をユーザーが意識しなくても利用できる形で提供することが、Web3のマスアダプション(一般普及)において極めて重要なポイントだということです。

    Silencioも、騒音データを収集するという非常にシンプルなコンセプトを持ちながら、ユーザーが楽しみながらデータ収集を行えるようにゲーム性を取り入れている点が非常に興味深いと感じました。ユーザーは騒音データを集めることで、報酬としてNOISE Coinを獲得し、それがランキングシステムや将来的なトークンエアドロップに結びつく仕組みが導入されています。

    このように、Web2ユーザーがあまり意識せずに参加できるのは非常に効果的です。

    さらに、今後ローンチ予定のSLCの存在も、Silencioの魅力をさらに高める要素となるでしょう。SLCを使ったプレミアム機能やイベント参加の権利、プラットフォームの意思決定に参加できる投票機能などが導入されることで、ユーザー同士のコミュニケーションが活発になり、サービス全体に深みを持たせることが期待されています。

    また、ゲーム性を強化しつつ、トークン経済の仕組みを取り入れることで、さらにユーザーの参加意欲を引き出し、エコシステム全体を活性化させるでしょう。

    Silencioについてまとめ

    Silencioは騒音公害という身近な問題を解決するために、シンプルで直感的なスマホアプリを通じてデータ収集を行うという革新的なアプローチを取っています。ゲーム性を取り入れ、Web2ユーザーでも簡単に参加できるよう工夫されたデザインが特徴です。

    今後、ローンチ予定のSLCトークンにより、ユーザー同士の交流やプラットフォームへの貢献がさらに促進されることで、エコシステム全体が活性化することが期待されます。

    また、騒音公害という社会課題が人々に広く認知されることで、騒音データを活用したいという企業や行政が増えていくでしょう。そうなれば、ユーザー参加型で社会課題を解決できるというユニークさから、Silencioが大きく注目されるタイミングがあるかもしれません。

    最後までご覧いただきありがとうございます。

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