クリプト市場を動かすナラティブとは?2024年のナラティブとこれからの追い方
2024.08.28
- ノウハウ
- ブロックチェーン
執筆者
くりぷとくりぷと
Web3の世界で「ナラティブ」は市場を動かす重要な要素となっています。
本記事では、そんなナラティブの概念を解説に加え、2024年上半期に注目を集めた主要なクリプトナラティブを紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
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ナラティブとは何か?
「ナラティブ」とは、直訳すると「物語」という意味ですが、Web3文脈ではやや解釈が異なります。
ナラティブとは、暗号資産市場において特定のテーマやトレンドが広く注目を集め、関連する資産への投資や投機が急増する現象を指します。
この概念は、市場のトレンドを形成する重要な要素であり、新しいナラティブが形成されると、大きな資本の流入や価格変動が引き起こされることがあります。
例えば、2021年〜2022年のクリプトバブルではSolanaやAvalancheなどのEthereumキラーと呼ばれるプロジェクトやNFTのような新しい技術やアプローチが登場した際、それに関連する資産が市場で急速に価値を増しました。
これがナラティブの影響です。
このナラティブをいち早く捉え、波に乗ることがマーケティングの観点からも重要になってきています。
ナラティブを上手に捉えるためには、市場の動向を広範囲にわたって観察し、どのテーマが注目を集めているかをいち早くキャッチアップすることが重要です。
特に、専門的な情報源やアーリーアダプター層が何に注目しているかを追いかけることで、新しいナラティブの兆候を早期に見つけることができます。また、ソーシャルメディアやフォーラムでの議論の動向も重要な手がかりとなります。
重要なのは、ただ流行に乗るのではなく、その背後にある技術的、文脈的根拠を理解し、持続可能な価値があるかどうかを評価することです。
ナラティブに敏感になるためには、定量的データだけでなく、定性的な分析も行うことが効果的です
たとえば、特定のテーマの取引量やトランザクションの増加を観察することも重要ですが、さらに、影響力のある人物やプロジェクトが新しい主張や技術を発表した場合、その情報を収集し、それが市場に与える影響を分析・考察することもナラティブを理解する上で有効です。
結局のところ、ナラティブを利用したマーケティング戦略はタイミングが非常に重要であり、新しいトレンドや市場の変化をいち早く見極め、いつ、どんなバイラルを起こすべきかの判断を下す洞察力が求められます。
2024年上半期の主要なクリプトナラティブ
実際に2024年のナラティブを読み解きましょう。参考にするのはCoinGeckoの2024年第一四半期と2024年第二四半期の二つのレポートです。
2024年第一四半期のレポートでは各テーマの上位10位の平均収益率を示しており、マーケット成長率がわかるようになっています。
ご覧の通りミームコインが圧倒的な成長を見せており、それ以外のテーマは100%~200%の平均収益率に留まっています。
2024年第二四半期のレポートではCoinGeckoの各カテゴリーページのアクセス数からナラティブのシェアを算出しています。やはりここでもミームコインが圧倒的な人気を誇っています。
特に4番目に「Solana Meme Coins」がランクインしていることからも、様々な報道にある通りSolanaでのミームコインの盛り上がりが見て取れます。
以下では、2024年に特に話題になっているナラティブを4つ取り上げてみました。
その概要とレビューを記しています。
ミームコイン
概要
ミームコインとは、インターネットミームや文化的現象に基づいて作られた暗号資産の一種です。
最も有名な例はイーロン・マスクがX(旧Twitter)で度々取り上げたDogecoinです。
元々はジョークとして作成されましたが、大規模なインターネットコミュニティの支持により、市場価値を急激に増加させました。
ミームコインは、しばしば新しい形のマーケティング戦略やソーシャルメディア運動に利用されることがありますが、価値の拠り所が曖昧なため投資対象としてはリスクが高いテーマだと言えます。
レビュー
2024年のミームコインの盛り上がりは、2021年と2022年に見られたNFTブームの流れを受け継いでいる面があります。
NFT市場は、デジタルアートへの投資機会により注目されましたが、流動性の低さが大きな課題となっていました。
これにより、多くの投資家が他の高流動性の資産を求めるようになり、ミームコインがその代替として浮上しているように思えます。
ミームコインは、その気軽さとコミュニティ主導の特性により、ソーシャルメディアでバイラル性を高めて価格が釣り上がる傾向があります。
意図的な価格操作も横行しており、ポンジスキーム的な側面があるため、購入には十分注意が必要です。
2024年第1四半期には、すべてのテーマの中で最も収益性の高いナラティブとしてミームコインが浮上し、主要トークン全体で1312.6%という爆発的なリターンを達成しました。
特に、四半期末の時価総額に基づくトップ10ミームコインのうちBONK、BOME、MEWといった多くの銘柄はSolana上で立ち上げられたミームコインです。
Solanaはその高速処理と低コストで知られています。
Solanaのようなプラットフォームは、その技術的な特性からBot取引に最適な環境を提供しており、多くのBotterが集まっていると言われています。
その投機対象として利鞘の取りやすいミームコインの高頻度取引も盛り上がってると予想できます。
さらに、Solana上でMemecoinの作成と取引を可能にするプラットフォームPump.funの盛り上がりも無視できないでしょう。
Pump.funは2024年2月にリリース以降、5月5日までに41.89万トークンを発行し、累計690万ドルを稼ぎだしたと言われています。
RWA
概要
RWA(Real World Assets)は、実物資産をブロックチェーン技術に統合することを指します。
このテーマは、不動産、金融商品、芸術品などの実世界の資産をデジタルトークン化し、それらを分散型台帳上で売買可能にすることを可能にします。
RWAのトークン化により、資産の流動性が向上し、透明性が確保され、幅広い投資家に対してこれまでにないアクセスを提供します。
これにより、伝統的な資産市場における取引の効率化や、新たな資金調達が可能になることが期待されています。
レビュー
2023年の間に、高級品や米国債などのトークン化された投資商品が、大幅に市場規模を拡大しましたが、2024年に入るとその成長ペースはやや鈍化しているようです。
これはトークン化された実物資産のような金融商品に対する需要が不足していると考えられます。
RWAの潜在的なユーザーは機関投資家や伝統金融機関がメインになる可能性が高いと予想されますが、まだ多くの国で法整備が整っていなかったり投機環境が整っていないため、未だRWAに対する需要は限定的です。
しかし、それでもRWAのナラティブは、暗号通貨分野で2番目に収益性の高いものとして浮上し、285.6%という魅力的なリターンを生み出しました。
このテーマを牽引しているのはOndo Finance、Pendleなどが挙げられるでしょう。
当初、RWAは2月初旬に一時的にトップの座を獲得しましたが、ミームコインとAIのナラティブに追い抜かれました。しかし、徐々に勢いを取り戻し、3月末までに再びAIセクターの収益率を上回っています。
AI
概要
Web3におけるAIセクターは、基本的には人工知能にブロックチェーン技術を活用し、データの透明性、セキュリティ、そして効率性を向上させる目的があります。
このテーマでは、ストレージ、学習トレーニング、コンピューティング、データの分析と予測など、多岐にわたるプロセスを改善しようとしています。
これらの技術は、透明性と分散化を基に新しい形のデータ共有とアプリケーション開発の可能性を広げています。
AIとブロックチェーンの統合は、データのプライバシーを守りながらアクセス可能性を高め、デジタルトランザクションとアプリケーションの新たなスタンダードを作ろうとする試みです。
レビュー
2024年のAIセクターの盛り上がりは、世界中でAI技術が注目される中、Web3とAIの統合を目指すプロジェクトの出現により盛り上がりを見せています。
また、DePINナラティブとの交差も見られます。DePINは物理的なインフラを分散化することを目指しており、この分野の発展はAIセクターの進化と密接に関連しています。
AI(人工知能)の収益率はRWAに僅差で続き、今年第1四半期に222.0%のリターンを得ました。
主要なAIトークンはすべて利益を記録し、AIOZ Networkが480.2%でトップに立ち、Fetch.aiが378.3%でそれに続いていました。
最もパフォーマンスの低いOriginTrailでさえ、第1四半期に74.9%という注目すべきリターンを記録し、AIのナラティブを取り巻く前向きな関心があったことが伺えます。
DePIN
概要
DePINとは、ブロックチェーン技術を用いて物理的なインフラストラクチャを分散的に構築・運用するネットワークのことを指します。
これは、分散型台帳技術とインセンティブモデルを組み合わせて、物理的なインフラ(通信ネットワーク、エネルギー供給、データセンターなど)を効率的かつ透明性の高い方法で管理・運営する新しいアプローチとしてカテゴライズされています。
レビュー
2023年後半から2024年上半期にかけてのDePINは、大きく注目度が上がりました。
AIナラティブにも関連するプロジェクトも多く、2024年3月10日時点でDePIN関連のトークンの市場価値が310億ドルを超えました。
DePINは、インターネットインフラの分散化や、中央集権型クラウドサービスの市場支配に挑戦するというプロジェクトが人気を集めています。
DePINは、第1四半期前半は停滞しましたが、その後回復し、81.0%のリターンで四半期を終えました。主要なDePINトークンの中で目立ったパフォーマンスを示したのは、292.5%という驚異的な利益を上げたArweave、133.7%の増加を記録したLivepeer、124.5%のQTDを記録したTheta Networkなどがあります。
しかし、Heliumは、第1四半期に10.5%の下落を記録した唯一の大型DePINトークンであり、パフォーマンスが低調でした。
ナラティブの期待値をどう評価するか
投機的期待値
投機的期待値は、Web3トレンドを形成するために重要な要素です。
特に初期段階でのナラティブを形成する際に重要な役割を果たします。
高い投機的期待があるプロジェクトは、短期間で大量のユーザーと資金を引き寄せ、市場の注目を集める傾向があります。
これは、マーケティング戦略として利用する際、特にプロモーションやハイプの生成に効果的ですが、長期的な価値とは必ずしも一致しないため注意が必要です。
投機的期待値をどのタイミングで、どの程度まで高めるべきか、或いは、そもそも投機的期待値をユーザーに与えることは是か否かという議論は未だ答えのない問いです。
資金調達額
各テーマの主要プロジェクトが調達している資金の量は、その開発の継続性と拡張性を示唆します。
大規模な資金調達は、プロジェクトが市場から信頼を得ている証拠ともなり、そのナラティブを強化する要素となるでしょう。
マーケティング戦略では、成功した資金調達ラウンドを強調することで、さらなる信頼と投資を促すことができます。
傾向としては投資ラウンドなどでの資金調達のニュースから数ヶ月〜1年程で大きく成長するプロジェクトは少なくないため、資金調達額からある程度中長期的なトレンドを予測することは可能です。
成長可能性
成長可能性も、ナラティブの持続性と市場での成功を左右する最も重要な要素の一つです。
特にコンポーザビリティの高いプロジェクトは成長可能性が高いと評価することができるでしょう。
相互運用性、APIとの統合、モジュール性、開発キットやツールの充実度などで推し量ることができます。
高い成長可能性を持つプロジェクトは、長期的な成長が期待でき、投資家や市場参加者にとって魅力的な選択肢となります。その他にもネットワーク効果や市場規模などを検討することも重要です。
ビジョンと理念の共有
ビジョンと理念の共有は、ユーザーコミットを高めるために重要です。
ユーザーと長期的なエンゲージメントを築けるとコミュニティとの関係構築や強化に役立ちます。
プロジェクトが世界のどのような課題を、どのようなソリューションで解決しようとしているのかをコミュニティに理解してもらうことで、投機的な活動を超えた持続可能性の高いコミュニティの形成が可能になります。マーケティングの観点からは、ユーザーとのコミュニケーションと教育を重視するべきでしょう。
数ヶ月後のナラティブを掴むためにやるべきこと
VCや取引所のレポートをチェック
ベンチャーキャピタル(VC)や暗号通貨取引所が公開するレポートは、市場の最新トレンドや将来有望なプロジェクトについての洞察を提供します。
これらのレポートは、専門家による分析や市場データに基づいたもので、新しいナラティブを先取りするのに非常に有効です。
例えば、投資家の関心が集まる分野、技術的な革新、または規制の変更が市場に与える影響などが詳しく記されています。
VCは特に新興技術やマーケットの課題意識が高いプロジェクトに資金を提供することが考えられることから、資金調達額が伸びやすいテーマを見極めるのに役立ちます。
大きく資金調達しているプロジェクトをチェック
クリプトニュースを眺めていると振興プロジェクトの大規模な資金調達を達成しているプロジェクトが報道されることがあります。これは投資家から高い期待を受けていることの表れです。
これらのプロジェクトを追跡することで、どの技術やアイデアが資金の流れを引きつけているかを把握できます。
大きな資金調達は、将来的に巨額のエアドロップやエコシステムへの助成金につながることが多いため、投機期待値の増大や成長可能性が見込めます。
主要プロジェクトのフォーラムやDiscordなどをチェック
主要なブロックチェーンプロジェクトやスタートアップのコミュニティフォーラム、Discordチャンネルは、開発者やユーザーがリアルタイムで意見を交換し、フィードバックを提供する場です。
これらのプラットフォームを監視することで、コミュニティがどんな課題や要望を共有しているかを知ることができます。
こういったところから振興プロジェクトのアイディアが出てくる可能性は十分あり、市場がどういう方向に進みたがっているかの火種を見つけることに役立つでしょう。
オンチェーンデータサイトをチェック
オンチェーンデータサイトを活用することも非常に効果的です。
初心者の方であれば、CoinMarketCapやCoinGeckoなどの無料サイトを活用し、時価総額ランキングを日々チェックするだけでも有効な手段です。
これにより、どのプロジェクトが注目を集めているのかが把握できます。
カテゴリー別のランキングと合わせてチェックすることで、よりナラティブを掴みやすくなるでしょう。
上級者なら、有料のオンチェーンデータサイトを利用することで、取引量やアクティブユーザーの推移など、より詳細な分析が可能になります。
こうしたデータを分析することで、トレンドの早期発見や市場の動向を把握することができます。
まとめ
本レポートでは、2024年のクリプト市場をリードする代表的なナラティブを紹介し、ナラティブをいち早くキャッチアップするためのアイディアを提供しました。
どんなに素晴らしいプロダクトでもナラティブから外れてしまうとなかなか見つけてもらうことすら難しいというのが現在のWeb3です。
業界に携わる者として、この辺りに課題を感じる一方で、プロジェクト成功のためには今後しばらくはこのナラティブという要素を無視することはできないでしょう。
ナラティブの流れを追いかけ、その変化を見極めることが、マーケティングで重要な視点になっています。
※免責事項:本レポートは、法的または財政的な助言とみなされるものではありません。
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