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週刊Hyperliquid2026年8月26日

週間取引高は2.6倍の約15兆円に拡大、6.2億ドルの流入超過へ転換

対象期間: 8/19(水)〜8/25(火) / データ取得日: 2026-08-26(水) / 公開日: 2026-08-26(水)

本レポートは、特定の取引所やサービスの利用を推奨するものではありません。Hyperliquidを定点観測の対象とするのは、オンチェーン金融の中で取引量が最も大きく、資金の流れ・商品の広がり・収益構造の変化を数字で観測できるためです。オンチェーン金融のいまを掴むための市場観測レポートとして、読者のみなさま向けに毎週発行します。数値は公開データの当社集計に基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。

今週の目次

  1. 週間取引高とDEXシェア
  2. 資金フロー
  3. 銘柄別Top30とRWAシェア
  4. HYPE
  5. HIP-3市場
  6. ボルト
  7. ステーブルコイン・担保基盤
  8. 今週の出来事
    • トランプ米大統領がCFTCによるHyperliquidの米国対応に言及
    • EntropyIOが1,400万ドルを調達し、Anthropicの上場前株式perpを開設
    • Hyperliquid関連団体がSECに上場前perpの規則整備を求める書簡を提出
  9. アナリストコメント

1. 週間取引高とDEXシェア|取引高は前週の2.6倍の936億ドルに増加した

指標 数値 出典
週間perp取引高(8/19〜8/25) 936億ドル(約14.9兆円) 当社集計(注1)
前週比 +162.0%(前週357億ドル) 同上
日次ピーク 8/20の198億ドル 同上
デリバティブDEXシェア(主要11社ベース) 51.8%(分散型を名乗る全23社では46.0%) CoinGecko(注2)
主要デリバティブDEX11社の合計取引高(推計) 週約1,810億ドル 当社推計(注2)
OI(未決済建玉、注9) 130.5億ドル(8/26昼時点。前回取得の8/19昼は116.3億ドル) Hyperliquid公式データ

perp(無期限先物。決済期限がなく持ち続けられる先物取引)の週間取引高は936億ドルで、前週の2.6倍に増加しました。週約14.9兆円という規模は、東証プライム市場の1日平均売買代金11兆6,019億円(2026年7月、出典: 日本取引所グループ)の約1.3日分に相当します。月間に換算すると約64.6兆円で、JPXのデリバティブ市場全体(同月401兆円)の16.1%です(注1)。

日次Perp取引高
日次Perp取引高

増加の起点は日次の内訳にはっきり表れています。週初8/19(水)の89.5億ドルに対し、8/20(木)は197.5億ドルと1日で2.2倍になり、この日が週内のピークでした。トランプ米大統領がCFTC(商品先物取引委員会)によるHyperliquidの米国対応に言及したのは米国時間の8/19で、日本時間では8/19深夜から8/20未明に当たります(セクション8①)。発言の時期と取引の立ち上がりが一致しており、その後も8/23(日)を除いて日次110億〜180億ドル台の高い水準が続きました(注8)。

OI(未決済建玉。決済されずに残っているポジションの総額、注9)も130.5億ドルと前回取得時点から12.2%増加し、当シリーズの観測開始以来の最高値です。資金調達レート(perpの買い方と売り方の間で授受される調整金利)の週間平均は年率でBTC 11.5%、ETH 10.5%、HYPE 23.6%でした。需給が中立でも年率4%台半ばになる設計を踏まえても、いずれも買い方への傾きが前週(BTC 7.1%、ETH 8.4%、HYPE 10.3%)より強まっており、特にHYPEに買いが集中しています(注8)。

perpを扱うDEX(分散型取引所。企業ではなくブロックチェーン上のプログラムが運営する取引所)の間でも、Hyperliquidの存在感は増しました。継続比較のために固定している主要11社ベースのシェアは51.8%で、前週の47.0%から4.8ポイント上昇しています。11社合計の取引高も週約1,810億ドルと推計され、市場全体が拡大する中でHyperliquidの伸びがそれを上回った形です(注2)。

DEXシェア
DEXシェア

2. 資金フロー|6.2億ドルの流入超過に転じ、残高は5月のピーク水準に並んだ

取引の元手となるチェーン上のステーブルコイン残高(97.9%がUSDC、注3)は68.0億ドルで、対象週に6.19億ドル増加しました。小幅な減少が3週続いた後の、明確な流入超過への転換です。当シリーズが観測を始めた6月以降で最大の週間増加であり、残高の水準は今年5月のピーク(68.1億ドル)にほぼ並びました。

チェーン上ステーブルコイン残高の週次増減
チェーン上ステーブルコイン残高の週次増減

新しい資金が入り、その資金がよく回転した週でした。週間出来高を預かり資産の総額(セクション7のTVL、66.7億ドル)で割った回転数は14.0回で、前週の5.9回から2.4倍になっています(注8)。前週までの「資金の総量が動かないまま場内の回転だけが変わる」構図とは異なり、流入と回転が同時に伸びました。なお、参考値として見ているArbitrumブリッジ経由の入出金は対象週1.10億ドルの出金超過で、チェーン全体の増加とは逆方向です。現在の資金の出入りがブリッジ以外の経路(チェーン上での直接発行など)を主体としていることを示す動きです(注3)。

3. 銘柄別Top30とRWAシェア|暗号資産の取引が4.4倍に増加し、RWAシェアは21.3%へ低下した

銘柄別の週間取引金額の上位30です(8/19〜8/25の当社集計、注4)。市場列の「本体」はHyperliquidの基本市場、xyzは外部運営市場(HIP-3)を指します。前週比は、各銘柄の週間出来高の前週からの増減率です。

順位 銘柄 市場 週間出来高(百万ドル) 前週比 区分
1 BTC 本体 33,014 +257.8% 暗号資産
2 ETH 本体 16,960 +377.0% 暗号資産
3 HYPE 本体 7,458 +531.3% 暗号資産
4 SOL 本体 3,488 +556.8% 暗号資産
5 SKHX(SK hynix) xyz 3,155 +32.9% 株式
6 ZEC 本体 2,941 +1,074.5% 暗号資産
7 XRP 本体 2,282 +1,288.4% 暗号資産
8 SNDK(SanDisk) xyz 2,008 -27.2% 株式
9 XYZ100(株価指数) xyz 1,509 +8.6% 指数
10 SP500(S&P500) xyz 1,429 +12.9% 指数
11 PUMP 本体 1,169 +401.3% 暗号資産
12 DRAM(メモリ株ETF) xyz 1,055 +8.2% 指数
13 MU(Micron) xyz 986 -3.5% 株式
14 SPCX(SpaceX) xyz 938 -38.0% 株式
15 SKHY(SK hynix・別建て銘柄) xyz 759 +16.8% 株式
16 CL(WTI原油) xyz 652 -27.6% コモディティ
17 SILVER(銀) xyz 613 +3.5% コモディティ
18 SMSN(Samsung) xyz 592 +33.6% 株式
19 LIT 本体 510 +496.4% 暗号資産
20 GOLD(金) xyz 488 +1.5% コモディティ
21 BRENTOIL(ブレント原油) xyz 483 -28.9% コモディティ
22 TRUMP 本体 452 +4,214.9% 暗号資産
23 ENA 本体 427 +1,736.7% 暗号資産
24 NVDA(NVIDIA) xyz 423 +63.8% 株式
25 DOGE 本体 386 +791.9% 暗号資産
26 CRCL(Circle) xyz 383 +272.7% 株式
27 UNITREE(Unitree Robotics) xyz 341 +900.0% 株式
28 NEAR 本体 312 +778.5% 暗号資産
29 MRNA(Moderna) xyz 294 新規上場 株式
30 GOOGL(Google) xyz 286 +24.0% 株式

株式・指数・コモディティ・FXなど現実資産(RWA)のperpが週間取引全体に占める「RWA取引シェア」は21.3%で、前週の53.7%から大きく低下しました(注4)。ただしこの低下は、RWA銘柄の取引が減少したためではありません。RWA系perpの取引金額は199.6億ドルと前週から4.1%増加しており、分母である暗号資産の取引が165.5億ドルから736.5億ドルへ4.4倍になったことで、割合として押し下げられました。内訳は株式13.8%、指数4.9%、コモディティ2.5%、FX・債券0.1%です(前週は株式34.5%、指数11.3%、コモディティ7.8%、FX・債券0.1%)。シェアの数字だけを見ると伝統資産への流れが止まったように読めますが、実際に起きたのは暗号資産の取引の復調です。

資産クラス構成
資産クラス構成

増加分579億ドルの内訳は、BTCが238億ドル(増加分の41%)、ETHが134億ドル(同23%)、HYPEが63億ドル(同11%)で、本体市場の主要3銘柄だけで75%を占めます(注8)。増加は主要銘柄にとどまらず、ZECが11.7倍、XRPが13.9倍、TRUMPが43倍と、アルトコインまで広がりました。一方、xyz市場の株式・指数は、指数(XYZ100 +8.6%、S&P500 +12.9%)が増加し、前週に主役だったSanDisk(-27.2%)やSpaceX(-38.0%)が減少するなど銘柄ごとにまちまちで、市場全体では前週比+3.3%とほぼ横ばいでした。

4. HYPE|上場来高値を更新し、買い戻しは前週の3.1倍の31.9万HYPEに増加した

HYPE(Hyperliquid独自のトークン)は81.75ドル、時価総額181.9億ドルで暗号資産の10位です(CoinGecko、8/26時点)。8/23(UTC。日本時間では8/24朝)には上場来高値の83.27ドルを付けました。直近7日で40.0%、直近30日で37.3%の上昇であり、同じ30日のBTC(+24.1%)を上回っています。取引手数料が買い戻しを通じてHYPEに還流する設計のため、本章では手数料、買い戻し、保有・ステーキング(トークンをネットワーク運営に預けて報酬を得る仕組み)の順に流れを追います。

指標 数値 出典
週間手数料 3,011万ドル(前週比+258.4%) DefiLlama(注7)
対象週の買い戻し 約31.9万HYPE(約2,600万ドル) Hypurrscan・週初と週末の差分(注7)
Assistance Fund保有 4,677万HYPE(総供給の4.7%) Hypurrscan(8/26時点)
ステーキング総委任 4.36億HYPE(財団・チーム分を含む) Hyperliquid公式データ
ステーキング解除待ち 322万HYPE(総委任の0.7%) Hypurrscan(注8)
週次手数料
週次手数料

週間手数料は3,011万ドルで、前週の840万ドルから3.6倍になりました。取引高の2.6倍を上回る増加率です。理由は増加の中身にあります。取引の増加分のほとんど(99%)が、通常の料率が適用される本体市場で生じ、手数料が大幅に割り引かれている外部運営市場(HIP-3)の取引はほぼ横ばいでした。取引金額に対する手数料率は前週の2.35bpから3.22bpへ上昇しており、取引の減少時に手数料が減少しにくいと観測した前週とは逆向きに、同じ構図が働いています(注7、注8)。

Assistance Fund(取引手数料でHYPEを買い戻して保有する公式基金)の買い戻しは約31.9万HYPE(約2,600万ドル)で、前週の約10.3万HYPEから3.1倍になりました。保有量は4,677万HYPEで総供給の4.7%です。ステーキングは総委任4.36億HYPEと横ばいの一方、解除待ち行列は322万HYPEと前週の162万HYPEから2.0倍になりました。解除には7日を要するため、売却圧力の先行指標として観測しています。高値の更新と解除待ちの倍増が同じ週に起きた事実は記録しておきます(注8)。

5. HIP-3市場|EntropyIOの新市場「io」が稼働し、Anthropicの上場前株式perpが取引を開始した

対象週の新規上場は7銘柄でした(注4)。最大の動きは、市場開設事業者EntropyIOによる新市場「io」の稼働です。8/19にANTH(Anthropicの上場前株式を参照するperp)とSNDK(SanDisk)の2銘柄で取引を開始し、初週の出来高はANTHが965万ドル、SNDKが8,314万ドルでした。未上場企業の評価額を参照する銘柄は、上場前に取引が始まったSpaceX(2026年6月にNasdaq上場)やUnitree Roboticsに続く系統で、生成AIの中核企業であるAnthropicが加わったことになります(セクション8②)。このほかxyz市場にModerna(初週2.94億ドル)とバイオ株ETFのXBI、para市場に米国債利回りの2年・30年が上場しました。

一方で、外部運営市場の回転の速さも変わりません。io市場では8/23にIonQの上場イベントがありましたが、8/26取得時点の稼働銘柄はANTHとSNDKの2つで、IonQを含む3銘柄(OAI、NBIS、IONQ)は登録後に取引可能な一覧から外れています(出典: Hyperliquid公式データ)。稼働市場は5つ(8/26時点でxyz 101銘柄、para 22、hyna 18、mkts 2、io 2)で、OIではHIP-3市場37.0億ドルのうち36.7億ドル(99.2%)が引き続きxyzに集中しています(注4)。

現物市場の上場権オークション(仕組みは注9)は、対象週に3枠の落札が成立しました。RAINが613.0 HYPE、EQMSFTが500.0 HYPE、ONEが594.0 HYPEです。EQMSFTを落札したのは、前週にEQSPYなど5枠を続けて確保したアドレスと同一で、同アドレスによる米国株を連想させるEQ系ティッカーの落札は、8/10のEQQQQから数えてこれで7件目になります。HYPE高騰により、下限の500 HYPEをドル換算した落札コストは約4.1万ドルと、前週時点の約2.9万ドルから4割上昇しました。RAINとONEは下限をやや上回る価格での落札で、金額はまだ小さいものの、下限張り付きが続いた8月前半とは異なる動きです(出典: Hypurrscan)。

現物上場権オークションの落札額推移
現物上場権オークションの落札額推移

6. ボルト|預かり資産は2.82億ドルへ4.9%増加した

ボルト(他の利用者に運用を任せられる、投資ファンドのような機能)は稼働3,127本、預かり資産は2.82億ドルです(8/26時点、注5)。前週の2.68億ドルから4.9%増加しました。最大のHLPは1.84億ドルと前週から1.4%の減少で、増加はHLP以外のボルトで生じています。上位のボルトは次のとおりです(HLPの構成戦略は合計から除いています。理由は注5)。

ボルト 預かり資産(百万ドル) 直近APR(%、注5)
Hyperliquidity Provider(HLP) 184.0 7.4
HLP Strategy X 100.1 0.8
HLP Liquidator 2 30.0 9.2
drkmttr 18.4 535.6
Systemic Strategies L/S Grids 11.1 95.2
Systemic Strategies HyperGrowth 10.0 23.6

表のうちHLP Strategy XとHLP Liquidator 2はHLP本体の内側にある口座で、その金額はHLP本体の数値に含まれるため、合計には重ねて足していません(注5)。前週に1億ドルが配分されたHLP Strategy Xの残高は今週も1.0億ドルのままで、追加の組み替えは観測されていません。上位には預かり資産1,840万ドルのdrkmttrが新たに入りました。APRは直近実績の年率であり、過去の成績が続くことを示すものではありません(注5)。

7. ステーブルコイン・担保基盤|現物USDC残高が10.4%増加、保有アドレス数は3.5万増加

項目 数値(8/26時点) 出典
預かり資産の総額(TVL) 66.7億ドル DefiLlama
うち現物取引の口座残高 27.46億ドル(前週比+10.4%) Hypurrscan
うちperp側(証拠金・ボルト等) 約36.0億ドル(注6) 当社算出
うちArbitrumブリッジに残る分 3.26億ドル 当社集計(注3)
USDH発行量(実流通) 745万USDH Hypurrscan
現物USDCの保有アドレス数 109.8万(1週間で+3.5万) Hypurrscan
HyperEVMのTVL 15.8億ドル(前週比+26.7%) DefiLlama

担保の全レイヤーが同時に拡大した週です。TVLは前週の60.1億ドルから66.7億ドルへ増加し、現物口座の残高が10.4%、HyperEVM(Hyperliquidの汎用ブロックチェーン部分)のTVLが26.7%増加しました。現物USDCの保有アドレス数は1週間で3.5万増加しており、増加幅は前週(+1.4万)の2.5倍です(アドレス数は口座数の近似値です。注6)。通貨基盤は実質USDCのみで(チェーン上ステーブルコインの97.9%、注3。ステーブルコインがHyperliquid上でどう使われるかは注9)、Hyperliquid発のステーブルコインUSDHは745万ドルと全体の0.1%にとどまります(注6)。ステーブルコイン市場全体の動きは週刊ステーブルコイン(8月25日)をご覧ください。

8. 今週の出来事

① トランプ米大統領が8/19(米国時間)、テクノロジー企業の経営者や連邦機関のトップを集めた会見で、「Hyperliquidを完全に適法な形で米国に持ち込むためにマイク(セリグCFTC委員長)が取り組んでいる」と発言しました(出典: The Blockの報道Yahoo Financeの報道)。報道によれば、報道時点までの24時間でHYPEは17%上昇し、HYPEを保有する米上場企業Hyperliquid Strategiesの株価は同日30.4%上昇しました。CFTCの既存権限で米国内のperp提供に道を開く案は前号のセクション8③で報じた流れで、行政の最高位からの言及に進んだことになります。Hyperliquidの利用規約は米国居住者等を「制限対象者」として利用を禁じており、現在、米国の利用者向けにはサービスが提供されていません。

② 市場開設事業者のEntropyIOが8/25(日本時間)、Ribbit Capital主導で1,400万ドルの出資と、4,000万ドル相当のHYPEステーキングの確保を発表しました(出典: 同社のX投稿)。同社はHIP-3の新市場「io」をHyperliquid上で稼働させ、第1弾としてAnthropicの上場前株式を参照するperpとSanDiskを上場しています(セクション5)。価格の参照にはオラクル事業者RedStoneのデータを使うと報じられています。Anthropicを参照する市場は今年に入り一度閉鎖された経緯があり、今回の上場は再開に当たると報じられています(出典: Cryptobriefingの報道)。市場開設に必要なステーキングを外部の出資で確保する形は、前号で報じたHyperion DeFiのEntropyへの50万HYPE充当と符合します。

③ Hyperliquid Policy Centerとxyz市場を運営するtrade[XYZ]が8/18(米国時間)、SEC(米証券取引委員会)に対し、上場前企業を参照するperp(IPOP)の規制枠組みの整備を求める書簡を提出したと報じられました(報道ベース。出典: Cryptobriefingの報道crypto.newsの報道)。書簡は、商品分類、情報開示、上場の適格性、投資家のアクセス要件、市場の健全性の5本柱の規則を提案し、完了した既存5市場(SpaceX、SK hynix等)では、取引開始直前のperpの最終価格が株式の上場初値と0.44〜7.23%の範囲に収まった実績を挙げています。同じ報道によれば、比較の基準を公募価格に変えると見え方は異なり、米国での上場4件では公募価格が前日のperp水準を10.8〜38.4%下回っていました。perpの織り込みと引受側の値付けの間には、まだ大きな開きがあります。書簡は株式に連動するperpを証券先物と証券ベーススワップのいずれに分類するかの明確化も求めており、①のCFTC路線と同じ週に、証券規制の側でも当局への働きかけが続いた形です。

9. アナリストコメント

週間取引高936億ドルの内訳を見ると、増加分の98.6%は株式でも金でもなく、BTC・ETH・HYPEを中心とする暗号資産の取引でした。きっかけとして時期が一致するのは、規制に関する発言だけです。新しい商品も、システムの改良もなく、「米国で適法に使えるようになるかもしれない」という一言と同じ週に、取引高が2.6倍になり、6.2億ドルの資金が入り、手数料収入が3.6倍になりました。日本の金融機関にとって示唆的なのは、オンチェーン市場の規模を決める最大の変数が、技術ではなく規制の側にあると数字で確認できたことです。国内では改正資金決済法や金商法の議論が続いていますが、規制の明確化はコンプライアンスの論点であると同時に、市場規模を直接動かす材料でもあります。米国が「持ち込む」方向を明言した市場を、日本の制度がどう受け止めるかは、取引所や証券会社の事業計画の前提を左右する変数になりつつあります。


注記(集計方法と出典の詳細)

  1. 週間取引高: Hyperliquid本体と外部運営市場(HIP-3)で取引可能な全322銘柄(上場廃止済みの銘柄は除く)について、公式の約定データ(売買数量×終値)を当社で合算した実測値です。対象週は日本時間の水曜0:00〜火曜24:00です。終値換算のため、実際の売買価格ベースとはわずかに差が出ます。前週比が極端に大きいため第2ソースと突合し、CoinGeckoの取引所別出来高から同じ窓を概算した約899億ドルと約4%の差にとどまることを確認しています。円換算は159.24円/ドル(ECB参照レート、8/25時点)、月間換算は週間値×52/12です。東証プライムの売買代金とJPXデリバティブ取引代金の出典は日本取引所グループ「2026年7月の売買状況について」(参照)です。
  2. DEXシェア: 対象はデリバティブ(perp)を扱う分散型取引所で、現物のみのDEX(Uniswap等)は含みません。CoinGeckoの取引所別出来高(BTC建て。8/26に取得した直近7日分)の当社集計です。本編の51.8%は、出来高上位の主要11社(Hyperliquid、Aster、ApeX Omni、Lighter、edgeX、Variational、Pacifica、GMTrade、Extended、SynFutures、dYdX)の合算に対する値です。この他にCoinGecko上で分散型を名乗る取引所が12社確認でき、全23社を分母にした広義のシェアが46.0%です。広義側のうち2社(StandX、Nado)は取得期間の全時点でデータが返らず0として扱い、GMTradeは欠損時間帯を除いた有効データのみで正規化しています。各社の出来高は取引所の報告値に基づき、独立に検証できないものを含むため、対象の取り方でシェアは変動します。比較対象の前週47.0%も同じ主要11社ベースです。主要11社の合計取引高(週約1,810億ドル)は、当社実測のHyperliquid週間取引高をシェアで割り戻した概算です。CoinGeckoは取得時点から遡る7日間を対象とするため、集計期間は当社の週境界と最大半日ずれます。
  3. 資金フロー: チェーン上(HyperEVM分を含む)の全ステーブルコイン残高の週次差分で、出典はDefiLlamaの公表値です(水曜0:00 UTC時点の差分。内訳はUSDCが97.9%(8/26取得の構成データ))。日次公表のため、日本時間の週境界(火曜24:00=15:00 UTC)とは9時間ずれます。USDCが現在はHyperliquidのチェーン上で直接発行されるため、特定のブリッジを見るだけでは資金の出入りを捉えられず、全ての経路を反映する残高の増減を主指標としています。参考値のArbitrumブリッジ経由の入出金(オンチェーンデータの当社集計)は対象週1.10億ドルの出金超過(入金4.96億ドル、出金6.07億ドル)で、チェーン全体の6.19億ドル増加とは方向が逆でした。同ブリッジの残高(3.26億ドル)はDefiLlamaの公表値と0.2%以内で一致しています。「5月のピーク」はDefiLlamaの同系列における2026年5月の最大値(68.1億ドル)です。
  4. 銘柄別出来高とRWA取引シェア: RWAはReal World Asset(株式・指数・コモディティ・FXなど現実世界の資産)の略です。シェアは週次出来高ベース(分子=RWA系perpの週間取引金額、分母=全perpの週間取引金額)で算出しています。区分は、個別株・預託証券・上場前企業を参照するperpを「株式」、株価指数とETF等の指数連動商品を「指数」、商品価格を「コモディティ」、FX・債券利回りを「FX・債券」としています。本号でRWA区分を新たに割り当てた銘柄は、Moderna(株式)、io市場のSanDisk・Anthropic・IonQ(株式。Anthropicのような上場前企業は株式区分)、MercadoLibre(株式)、バイオ株ETFのXBI(指数)、米国債利回りの2年・30年(FX・債券)、ANSEM(暗号資産。人物名を冠したSolana上のトークンであることをThe Defiant等の報道で確認、2026-08-26時点)の9件です。内訳の割合は四捨五入のため、合計がシェアと末尾で一致しない場合があります。Top30表も週間出来高ベースで、上位30銘柄で週間全体の91.6%をカバーします。新規上場の件数は上場イベント(perpDeploy)の記録から数えています。
  5. ボルト: 出典はHyperliquid公式データです(8/26時点。閉鎖済みを含む累計は9,469本)。預かり資産の合計は、HLPの構成戦略(Strategy A・B・X、Liquidator群の7口座。運営アドレスがHLP本体と同一で、出資者もHLP本体のみ)を除いた値です。単純に合算すると同じ資金を二重に数えることになるためです。ボルトの残高はOI(注9)と同様に取得時点のスナップショットで、前週の値は8/19昼、本号は8/26昼の取得です。APRは公式データの直近実績(年率)で、過去の実績であり将来の収益を示すものではありません。drkmttrのAPR(535.6%)のような極端な値は直近の短期間の成績を年率換算したものです。
  6. perp側の担保額: 預かり資産の総額(DefiLlamaのTVL)から、現物取引の口座残高(Hypurrscan)とArbitrumブリッジ残高を差し引いた概算で、証拠金・ボルト・未実現損益などを含みます。このTVLはUSDC建ての預かり資産で、現物として保有されるHYPEやビットコイン等のトークン残高は含みません。USDHの発行量はジェネシスアドレス保有分を除く実流通で、保有者は14,476アドレスです(Hypurrscan、8/26時点)。現物USDCの保有アドレス数は口座数の近似値として掲載しています(1人が複数アドレスを持つ場合があります)。前週の増加幅(+1.4万)は前号の掲載値です。
  7. 手数料: 本編の週間手数料はDefiLlamaの公表値を主指標としています。perp・現物・HLPへの配分を含む広い定義で、日次公表のため集計窓が当社の週境界より9時間前にずれます(本号は8/19〜8/25のUTC日次合算)。突合先のHypurrscanは取引手数料のみを累積値の差分で集計しており(境界は取得できる直近値、8/18 8:41〜8/25 8:51 日本時間)、本号は2,330万ドル・前週比+253.6%でした。定義の広さの違いにより両者の乖離が10%を超えるため、当シリーズの規定に従い両方の値を記載します。増加の方向と増加率はほぼ一致しています。手数料率は取引金額の約3.22bp(DefiLlama基準。前週は2.35bp)です。Assistance Fundの買い戻し(週初と週末の保有量差分。ドル換算は8/26時点の81.75ドル)は、Dune上の公開集計(手数料からの推計・日次価格換算で約32.2万HYPE、2,370万ドル)と1%以内で整合しています。
  8. 前週比の分解と構造指標: 前週比の増減は、銘柄別の週間出来高(当社集計・全322銘柄)の差分で分解しています。全体の増加578.8億ドルのうち、本体市場が570.7億ドル(98.6%)を占め、外部運営市場xyzは6.3億ドル(1.1%)でした。日次の最小値(8/23の70.5億ドル)と最大値(8/20の197.5億ドル)は、いずれも当社集計の日本時間ベースです。トランプ大統領の発言と取引ピークの関係は時刻の前後関係の観測であり、因果の断定ではありません。資金調達レートは公式データの1時間ごとの実績を対象週(日本時間、168時間)で平均し、年率換算(×24×365)した値です。前週の値(BTC 7.1%、ETH 8.4%、HYPE 10.3%)は前号の掲載値です。Hyperliquidの資金調達レートは金利成分を含む設計のため、需給が完全に中立でも年率4%台半ばのプラスになります。回転数(週間出来高÷預かり資産の総額。分母はセクション7のTVL)は14.0回で、前週は同じ算式で5.9回です。市場別の回転率(週間出来高÷OI)は本体約7.9回転、xyz約5.4回転です。ステーキングの解除待ちは、取得時点(8/26昼)で解除が完了していないものの合計です。OIの「観測開始以来の最高値」は、当シリーズが取得を始めた2026年8月以降のスナップショット値(8/10朝109.4億、8/19昼116.3億、8/26昼130.5億ドル。8/10の値は8月12日公開号の掲載値)の中での最高という意味です。
  9. 仕組みの解説(初めての読者向け): 本文が前提にしている仕組みをここにまとめます。
    OI(未決済建玉): 決済されずに残っているポジションの総額です。取引高がその週の売買の量(フロー)を示すのに対し、OIは市場に積み上がったリスクの残高(ストック)を示し、取引と同時にOIも増加する週は、新しいポジションの構築が優勢だったと読めます。本誌のOIは毎週の取得時点のスナップショットで、前週比も同時点どうしの比較です(前回は8/19昼、本号は8/26昼の取得です)。
    HIP-3: 所定のステーキング要件(50万HYPE)を満たした事業者が、自らperp市場を開設・運営できる仕組みです。xyz市場を運営するtrade[XYZ]や、本号で新市場を開設したEntropyIOが例です。
    上場前株式のperp: AnthropicやUnitree Roboticsのような未上場企業について、株式そのものではなく、評価額の推定値(オラクルが提供する参照価格)に連動するperpを取引する仕組みです。決済は現金(USDC)で行われ、株式の受け取りや株主の権利は発生しません。参照価格の設計は市場ごとに異なります。
    現物のティッカーオークション: 約31時間ごとに1枠が競売され、高い価格から始まり時間とともに下限の500 HYPEまで下がるダッチ方式で、最初に応札した人がティッカー(銘柄コード)と発行・上場の権利を得ます。支払いは2025年5月下旬からHYPE建てです(それ以前はUSDC建て。出典: Hyperliquid公式ドキュメント)。上場審査を入札コストに置き換えたスパム防止の仕組みで、落札額は上場需要の指標になります。
    ステーブルコインの用途: Hyperliquid上のUSDC等は、①perp取引の証拠金、②現物取引の決済通貨、③ボルトへ預ける運用原資、④HyperEVM上の貸付などに使われます。証券口座でいう預り金と委託保証金に相当する、取引の元手です。
ブロックチェーン総研Blockchain Research Institute
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