対象期間: 8/26(水)〜9/1(火) / データ取得日: 2026-09-02(水) / 公開日: 2026-09-02(水)
本レポートは、特定の取引所やサービスの利用を推奨するものではありません。Hyperliquidを定点観測の対象とするのは、オンチェーン金融の中で取引量が最も大きく、資金の流れ・商品の広がり・収益構造の変化を数字で観測できるためです。オンチェーン金融のいまを掴むための市場観測レポートとして、読者のみなさま向けに毎週発行します。数値は公開データの当社集計に基づく情報提供であり、投資勧誘・投資助言を目的としません。
- 今週の目次
- 1. 週間取引高とDEXシェア|取引高は588億ドルへ37%減少した一方、未決済建玉は増加した
- 2. 資金フロー|残高は68.3億ドルで横ばい、前週に入った資金は場内に残った
- 3. 銘柄別Top30とRWAシェア|暗号資産の取引が4割減少し、RWAシェアは25.2%へ上昇
- 4. HYPE|上場来高値86.71ドルを付けた週に、買い戻しは半減した
- 5. HIP-3市場|HyENAが全市場の廃止を開始し、稼働市場は入れ替わりが続く
- 6. ボルト|預かり資産は2.89億ドルへ2.7%増加した
- 7. ステーブルコイン・担保基盤|現物USDC残高が2.5%増加、保有アドレス数は2.6万増加
- 8. 今週の出来事
- 9. アナリストコメント
- 注記(集計方法と出典の詳細)
今週の目次
- 週間取引高とDEXシェア
- 資金フロー
- 銘柄別Top30とRWAシェア
- HYPE
- HIP-3市場
- ボルト
- ステーブルコイン・担保基盤
- 今週の出来事
- Hyperliquid LabsがKraken親会社と米国向けperp提供を協議とBloombergが報道
- HYPEの上場来高値更新と、月次アンロック約1,418万枚の予定日が同じ週に重なった
- HIP-3市場「HyENA」が運営終了を告知し、8/31から全市場の廃止を開始
- アナリストコメント
1. 週間取引高とDEXシェア|取引高は588億ドルへ37%減少した一方、未決済建玉は増加した
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 週間perp取引高(8/26〜9/1) | 588億ドル(約9.4兆円) | 当社集計(注1) |
| 前週比 | -37.2%(前週936億ドル) | 同上 |
| 日次ピーク | 8/27の117億ドル | 同上 |
| デリバティブDEXシェア(主要11社ベース) | 50.0%(分散型を名乗る全23社では42.9%) | CoinGecko(注2) |
| 主要デリバティブDEX11社の合計取引高(推計) | 週約1,180億ドル | 当社推計(注2) |
| OI(未決済建玉、注9) | 136.7億ドル(9/2朝時点。前回取得の8/26昼は130.5億ドル) | Hyperliquid公式データ |
perp(無期限先物。決済期限がなく持ち続けられる先物取引)の週間取引高は588億ドルで、前週の936億ドルから37.2%減少しました。前週は米大統領の発言と同じ週に取引が2.6倍に増加した週であり、その反動が出た形です。週約9.4兆円という規模は、東証プライム市場の1日平均売買代金10兆4,501億円(2026年8月、出典: 日本取引所グループ)の約0.9日分に相当します。月間に換算すると約40.8兆円で、JPXのデリバティブ市場全体(同月290兆円)の14.1%です(注1)。

日次の内訳では、週前半の8/26(水)〜8/28(金)が97億〜117億ドルで推移し、8/30(日)に29.6億ドルまで落ち込んだ後、8/31(月)に94.8億ドルへ回復しました。前週の日次ピーク(8/20の198億ドル)と比べると、週内の最大値でも6割弱の水準です(注8)。
取引の減少とは対照的に、OI(未決済建玉。決済されずに残っているポジションの総額、注9)は136.7億ドルと前回取得時点から4.8%増加しました。取引が減少する中でポジションの名目額は増加しており、売買を繰り返すよりも建てた玉を持ち越す動きが優勢だった週と読めます(OIは名目額のため、価格の上昇分も含みます。注9)。資金調達レート(perpの買い方と売り方の間で授受される調整金利)の週間平均は年率でBTC 10.7%、ETH 9.8%、HYPE 7.9%でした。前週(BTC 11.5%、ETH 10.5%、HYPE 23.6%)と比べ、前週に買いが集中していたHYPEの水準は3分の1になりました。需給が中立でも年率4%台半ばになる設計を差し引いた偏りの部分では、約19ポイントから約3.5ポイントへ5分の1程度に縮小しています(注8)。
perpを扱うDEX(分散型取引所。企業ではなくブロックチェーン上のプログラムが運営する取引所)の中でのシェアは、主要11社ベースで50.0%と前週の51.8%から1.8ポイント低下しました。11社合計の取引高も週約1,180億ドルと推計され、前週の約1,810億ドルから市場全体が縮小しています。Hyperliquidの減少率が市場平均をわずかに上回った週です(注2)。

2. 資金フロー|残高は68.3億ドルで横ばい、前週に入った資金は場内に残った
取引の元手となるチェーン上のステーブルコイン残高(97.8%がUSDC、注3)は68.3億ドルで、対象週の増減は+0.3億ドルとほぼ横ばいでした。前週に6.2億ドルの流入超過があった後、その資金が引き揚げられることなく場内に残った週です。週の途中では8/27に67.6億ドルまで減少した後、8/30に68.7億ドルまで回復しており、週内の振れ幅は約1.2億ドル(丸め前の差は1.17億ドル)にとどまりました(注3)。

資金の総量が動かないまま、取引だけが減少した週でした。週間出来高を預かり資産の総額(セクション7のTVL、67.0億ドル)で割った回転数は8.8回で、前週の14.0回から低下しています(注8)。回転数の低下とOIの増加が同時に起きており、入った資金が短期の売買ではなく持ち越しのポジションに向かったと読めます。参考値として見ているArbitrumブリッジ経由の入出金は、対象週は0.2億ドルの入金超過(入金2.96億ドル、出金2.76億ドル)で、前週の1.1億ドルの出金超過から反転しました。ブリッジの残高は3.52億ドルです(注3)。
3. 銘柄別Top30とRWAシェア|暗号資産の取引が4割減少し、RWAシェアは25.2%へ上昇
週間出来高の上位30銘柄は次のとおりです(週間出来高ベース、注4)。
| 順位 | 銘柄 | 市場 | 週間出来高(百万ドル) | 前週比 | 区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | BTC | 本体 | 20,228 | -38.7% | 暗号資産 |
| 2 | ETH | 本体 | 7,969 | -53.0% | 暗号資産 |
| 3 | HYPE | 本体 | 4,495 | -39.7% | 暗号資産 |
| 4 | SOL | 本体 | 3,887 | +11.5% | 暗号資産 |
| 5 | ZEC | 本体 | 2,197 | -25.3% | 暗号資産 |
| 6 | SKHX(SK hynix) | xyz | 1,773 | -43.8% | 株式 |
| 7 | NVDA(NVIDIA) | xyz | 1,189 | +181.0% | 株式 |
| 8 | XYZ100(株価指数) | xyz | 1,174 | -22.2% | 指数 |
| 9 | CL(WTI原油) | xyz | 1,021 | +56.5% | コモディティ |
| 10 | SNDK(SanDisk) | xyz | 1,012 | -49.6% | 株式 |
| 11 | SP500(S&P500) | xyz | 964 | -32.5% | 指数 |
| 12 | PUMP | 本体 | 837 | -28.4% | 暗号資産 |
| 13 | SILVER(銀) | xyz | 705 | +15.1% | コモディティ |
| 14 | MU(Micron) | xyz | 681 | -31.0% | 株式 |
| 15 | XRP | 本体 | 642 | -71.9% | 暗号資産 |
| 16 | DRAM(メモリ株ETF) | xyz | 641 | -39.2% | 指数 |
| 17 | GOLD(金) | xyz | 583 | +19.3% | コモディティ |
| 18 | SPCX(SpaceX) | xyz | 513 | -45.3% | 株式 |
| 19 | BRENTOIL(ブレント原油) | xyz | 461 | -4.4% | コモディティ |
| 20 | SKHY(SK hynix・別建て銘柄) | xyz | 348 | -54.1% | 株式 |
| 21 | ENA | 本体 | 340 | -20.4% | 暗号資産 |
| 22 | SMSN(Samsung) | xyz | 309 | -47.8% | 株式 |
| 23 | CRCL(Circle) | xyz | 295 | -22.8% | 株式 |
| 24 | TRUMP | 本体 | 258 | -42.8% | 暗号資産 |
| 25 | LIT | 本体 | 246 | -51.7% | 暗号資産 |
| 26 | SNDK(SanDisk) | io | 230 | +176.5% | 株式 |
| 27 | XMR | 本体 | 191 | +21.8% | 暗号資産 |
| 28 | FARTCOIN | 本体 | 187 | -32.4% | 暗号資産 |
| 29 | CASHCAT | 本体 | 175 | +18.6% | 暗号資産 |
| 30 | META(Meta) | xyz | 171 | +24.2% | 株式 |
株式・指数・コモディティ・FXなど現実資産(RWA)のperpが週間取引全体に占める「RWA取引シェア」は25.2%で、前週の21.3%から3.9ポイント上昇しました(注4)。ただしこの上昇は、RWA銘柄の取引が増加したためではありません。RWA系perpの取引金額は148.0億ドルと前週から25.9%減少しており、分母の大半を占める暗号資産の取引が736.5億ドルから440.0億ドルへ40.2%減少したことで、割合として押し上げられました。内訳は株式14.7%、指数5.5%、コモディティ4.9%、FX・債券0.1%です(前週は株式13.8%、指数4.9%、コモディティ2.5%、FX・債券0.1%)。

減少分348億ドルの内訳は、BTCが128億ドル(減少分の37%)、ETHが90億ドル(同26%)、HYPEが30億ドル(同9%)で、本体市場の主要3銘柄で7割を占めます。本体市場全体で減少分の85.1%、xyz市場が15.8%です(io市場などが増加したため、合計は100%を超えます。注8)。一方、減少の中でも増加した銘柄があります。NVIDIA(+181.0%)は前週の4.2億ドルから11.9億ドルへ2.8倍になり、xyz市場の株式で最大の増加でした。WTI原油(+56.5%)、金(+19.3%)、銀(+15.1%)のコモディティ3銘柄も増加しており、コモディティ区分のシェアは2.5%から4.9%へ倍増しています。前週に取引が集中したSK hynix(-43.8%)は4割強、SanDisk(-49.6%)はほぼ半減の減少でした。
4. HYPE|上場来高値86.71ドルを付けた週に、買い戻しは半減した
HYPE(Hyperliquid独自のトークン)は82.59ドル、時価総額183.7億ドルで暗号資産の10位です(CoinGecko、9/2時点)。8/27(UTC。日本時間では8/28未明)に上場来高値の86.71ドルを付け、前週に更新した83.27ドルを上回りました。直近30日の上昇率は57.1%で、同じ30日のBTC(+21.7%)を上回っています。取引手数料が買い戻しを通じてHYPEに還流する設計のため、本章では手数料、買い戻し、保有・ステーキング(トークンをネットワーク運営に預けて報酬を得る仕組み)の順に流れを追います。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 週間手数料 | 1,949万ドル(前週比-35.3%) | DefiLlama(注7) |
| 対象週の買い戻し | 約16.9万HYPE(約1,390万ドル) | Hypurrscan・週初と週末の差分(注7) |
| Assistance Fund保有 | 4,694万HYPE(総供給の4.7%) | Hypurrscan(9/2時点) |
| ステーキング総委任 | 4.37億HYPE(財団・チーム分を含む) | Hyperliquid公式データ |
| ステーキング解除待ち | 324万HYPE(総委任の0.7%) | Hypurrscan(注8) |

週間手数料は1,949万ドルで、前週の3,011万ドルから35.3%減少しました。取引高の減少(-37.2%)と同じ方向で、減少幅も近い水準です。前週は取引の増加分が通常料率の本体市場に集中して手数料が取引以上に増加しましたが、本号ではその本体市場の取引が40.2%減少し、手数料も追随して縮小しました。手数料の集計窓は日次公表の都合で対象週より半日あまり早く、窓の取り方によって減少率は-28%から-35%の幅があります。突合先のHypurrscanでは-32.9%です(注7)。
Assistance Fund(取引手数料でHYPEを買い戻して保有する公式基金)の買い戻しは約16.9万HYPE(約1,390万ドル)で、前週の約31.9万HYPEから47%減少しました。手数料の減少に加え、HYPE価格が前週より高い水準で推移したため、同じ金額で買える枚数が減少した影響も含まれます。保有量は4,694万HYPEで総供給の4.7%です。ステーキングは総委任4.37億HYPEと横ばいで、解除待ち行列は324万HYPEと前週の322万HYPEからほぼ変わりませんでした。解除には7日を要するため、売却圧力の先行指標として観測しています。ただし合計が横ばいでも中身は入れ替わっています。解除は申請から7日で完了するため、この指標は直近7日間の新規申請の合計にほぼ等しく、前週の行列(322万HYPE)は対象週にすべて完了して外れ、対象週の新規申請のうち取得時点で残る324万HYPEに置き換わりました(注8)。新規申請のうち最大は、xyz市場の運営者アドレスによる50万HYPE(8/29申請、9/5完了予定)です。8/30に申請された約43.3万HYPEは、開発元に帰属するウォレットからのものと報じられており(セクション8②)、当社もHypurrscanの解除待ち一覧で同額の申請を確認しました。8/29には月次のアンロック約1,418万枚が予定されていました(セクション8②)。
5. HIP-3市場|HyENAが全市場の廃止を開始し、稼働市場は入れ替わりが続く
対象週の新規上場は7銘柄で、取得時点で取引できるのはこのうち4銘柄です(注4)。xyz市場にはSheinの上場前株式を参照するperp(SHEIN)が上場し、初週の出来高は1,866万ドルでした。io市場では、前号で登録後に取り消されたNebius(NBIS)が8/26に再登録されて4,869万ドルを取引し、9/1にはGoPro(GPRO)が加わりました。para市場にはSoFi(SOFI)が上場しています。io市場全体の週間出来高は4.54億ドルと前週の0.93億ドルから4.9倍になり、SanDisk(2.30億ドル)とAnthropic(1.62億ドル)が牽引しました。一方、io市場の韓国株ETF(EWY)、para市場のソフトウェア株ETF(IGV)とAnthropic(ANTH)は、登録後に取引可能な一覧から外れています(出典: Hyperliquid公式データ)。
市場の側でも動きがありました。Ethena発行のUSDeを証拠金に使う市場として運営されてきたHyENA(hyna)が8/28に運営終了を告知し、8/31から1時間に1市場ずつ廃止を進めています(セクション8③)。9/2朝の取得時点で取引できる銘柄は登録25銘柄中6銘柄(BTC、ETH、HYPE、SOL、PUMP、ENA)で、前週の18から減少しました。稼働市場は5つ(9/2時点でxyz 103銘柄、para 23、hyna 6、mkts 4、io 4)で、OIではHIP-3市場35.9億ドルのうち35.6億ドル(99.0%)が引き続きxyzに集中しています(注4)。
現物市場の上場権オークション(仕組みは注9)は、対象週に4枠の落札が成立しました。EQAMZNが500.0 HYPE、EQMUが500.0 HYPE、SLが501.7 HYPE、EQSPCXが500.0 HYPEで、いずれも下限の500 HYPE近辺です。EQAMZN、EQMU、EQSPCXを落札したのは前週までにEQMSFTなど7枠を確保したアドレスと同一で、同アドレスによる米国株を連想させるEQ系ティッカーの落札はこれで10件目になります。下限の500 HYPEをドル換算した落札コストは約4.0万〜4.2万ドル(各落札日の終値換算)で、前週号で示した約4.1万ドルとほぼ同じ水準です(出典: Hypurrscan)。

6. ボルト|預かり資産は2.89億ドルへ2.7%増加した
ボルト(他の利用者に運用を任せられる、投資ファンドのような機能)は稼働3,119本、預かり資産は2.89億ドルです(9/2時点、注5)。前週の2.82億ドルから2.7%増加しました。最大のHLPは1.89億ドルと前週から2.5%増加しています。上位のボルトは次のとおりです(HLPの構成戦略は合計から除いています。理由は注5)。
| ボルト | 預かり資産(百万ドル) | 直近APR(%、注5) |
|---|---|---|
| Hyperliquidity Provider(HLP) | 188.6 | 6.8 |
| HLP Strategy X | 100.1 | 1.4 |
| HLP Liquidator 2 | 30.0 | 9.2 |
| drkmttr | 17.7 | 734.8 |
| Systemic Strategies L/S Grids | 12.9 | 102.3 |
| Growi HF | 10.4 | 56.4 |
表のうちHLP Strategy XとHLP Liquidator 2はHLP本体の内側にある口座で、その金額はHLP本体の数値に含まれるため、合計には重ねて足していません(注5)。上位には預かり資産1,040万ドルのGrowi HFが新たに入りました。APRは直近実績の年率であり、過去の成績が続くことを示すものではありません(注5)。
7. ステーブルコイン・担保基盤|現物USDC残高が2.5%増加、保有アドレス数は2.6万増加
| 項目 | 数値(9/2時点) | 出典 |
|---|---|---|
| 預かり資産の総額(TVL) | 67.0億ドル | DefiLlama |
| うち現物取引の口座残高 | 28.36億ドル(前週比+2.5%) | Hypurrscan |
| うちperp側(証拠金・ボルト等) | 約35.1億ドル(注6) | 当社算出 |
| うちArbitrumブリッジに残る分 | 3.52億ドル | 当社集計(注3) |
| USDH発行量(実流通) | 722万USDH | Hypurrscan |
| 現物USDCの保有アドレス数 | 112.4万(1週間で+2.6万) | Hypurrscan |
| HyperEVMのTVL | 15.0億ドル(7日前比-1.1%) | DefiLlama |
取引が4割近く減少した週でも、担保の基盤は縮小していません。TVLは前週の66.7億ドルから67.0億ドルへ小幅に増加し、現物口座の残高は2.5%増加しました。現物USDCの保有アドレス数は1週間で2.6万増加しており、前週(+3.5万)よりは緩やかながら、増加が続いています(アドレス数は口座数の近似値です。注6)。HyperEVM(Hyperliquidの汎用ブロックチェーン部分)のTVLは15.0億ドルで、7日前から1.1%の減少でした。通貨基盤は実質USDCのみで(チェーン上ステーブルコインの97.8%、注3。ステーブルコインがHyperliquid上でどう使われるかは注9)、Hyperliquid発のステーブルコインUSDHは発行量722万USDH(約722万ドル)と全体の0.1%にとどまります(注6)。USDeを証拠金とする市場を運営してきたHyENAは、終了の理由にHyperliquidのUSDC連携の強化を挙げています(セクション8③)。ステーブルコイン市場全体の動きは週刊ステーブルコイン(9月1日)をご覧ください。
8. 今週の出来事
① Bloombergは8/31(米国時間)、Hyperliquidの開発元Hyperliquid Labsが、暗号資産交換業者Krakenの親会社Paywardと、米国の利用者向けにperpを提供する協議を進めていると報じました(報道ベース。出典: The Blockの報道、Cryptobriefingの報道)。報道によれば、Payward傘下でCFTC(商品先物取引委員会)の規制下にあるデリバティブ取引所Bitnomial(出典: Bitnomial公式サイト)が、Hyperliquid上の暗号資産perpに連動する一部の商品を米国の登録利用者向けに上場する構造で、Paywardは既にCFTCへ構造の概要を提示しています。米国の利用者がHyperliquidの分散型取引所そのものに接続するのではなく、規制下の取引所が間に立つ形です。Krakenの広報はコメントを控えたと報じられ、規制当局の最終承認は得られていません。報道の4日前にあたる8/27の決算発表で、HYPEを保有する米上場企業Hyperliquid Strategiesは、同社の知る限りとの限定を付したうえで「Hyperliquidに関する申請、登録、適用除外、規則制定はCFTCで認められておらず、審査中のものもない」と開示し、米国の規制上の経路が実現する保証はないとしています(出典: Hyperliquid Strategiesの発表)。
② HYPEは8/29に月次の定期アンロック(保有制限の解除)を予定しており、約1,417.6万枚(総供給の約1.4%、報道時点で約12億ドル相当)が移転可能になると事前に報じられました。配分は初期投資家など関係者に46.6%、コミュニティに46.3%、Hyper Foundationに7%です(報道値。四捨五入のため合計は100%になりません。報道ベース。出典: Decryptの報道、CryptoRankの報道)。アンロックは保有者がトークンを移転できる状態になることを意味し、売却そのものではありません。同じ週の8/28未明(日本時間。UTCでは8/27)にはHYPEが上場来高値86.71ドルを付けています(CoinGecko)。あわせて、開発元に帰属するとされるウォレットが8/30に約43.3万HYPE(約3,600万ドル)のステーキング解除を申請し、9/6に移転可能になると報じられました(報道ベース。出典: crypto.newsの報道)。当社が観測する解除待ち行列の合計は前週から横ばいです(セクション4)。
③ HIP-3市場の一つで、Ethenaのステーブルコイン USDeを証拠金とするperp市場を運営してきたHyENAが8/28、運営終了を告知しました。同社の告知によれば8/31 10:00(UTC)から1時間に1市場ずつ廃止し、9/2までに全市場を閉じる計画で、廃止時点で残る建玉は自動で決済され、証拠金は利用者の現物口座に戻ります(出典: HyENAのX投稿、crypto.newsの報道)。同社は終了の理由として、Hyperliquidのステーブルコイン基盤がUSDCとの連携を深めたことでUSDe建て証拠金の商品を広げる余地が狭まった点を挙げています。累計の取引高は約40億ドル、利用者は1.2万人超と報じられており、トークンは発行しておらず発行の予定もないとしています。当社の取得時点では登録25銘柄のうち6銘柄が取引可能な状態で残っていました(セクション5)。
9. アナリストコメント
週間取引高が936億ドルから588億ドルへ4割近く減少した週に、OIは4.8%増加し、ステーブルコイン残高は68.3億ドルで横ばい、現物口座の残高と保有アドレス数は増加しました。前週に入った6.2億ドルの資金は、取引が減少しても引き揚げられていません。出来高の急増は一過性でも、資金と口座は残るという順序で市場が推移したことになります(OIの増加には価格上昇分も含まれます)。日本の金融プレイヤーにとって重要なのは、①のBloombergが報じた構造です。分散型取引所そのものを米国に持ち込むのではなく、CFTC登録の取引所が価格に連動する商品を上場し、間に立つ形が検討されています。国内で暗号資産デリバティブを扱う登録業者にとっても、米国のこの事例は、オンチェーン市場の価格を参照する商品を既存の枠組みの中でどう扱うかを考える材料になります。同じ週にUSDe建て証拠金の市場が終了し、通貨基盤がUSDCに集約されている状態が改めて確認された点は、規制下の取引所が参照する市場の分かりやすさという面でも記録しておく事実です。協議は報道段階で、元SEC法律顧問はSECとCFTCによる解釈規則の見直しを含めると順調に進んでも10〜12か月を要し得るとの見方を示したと報じられており、実現の可否はまだ確定していません。
注記(集計方法と出典の詳細)
- 週間取引高: Hyperliquid本体と外部運営市場(HIP-3)で取引可能な全317銘柄(上場廃止済みの銘柄は除く)について、公式の約定データ(売買数量×終値)を当社で合算した実測値です。対象週は日本時間の水曜0:00〜火曜24:00です。終値換算のため、実際の売買価格ベースとはわずかに差が出ます。第2ソースとして、CoinGeckoの取引所別出来高(BTC建て・24時間トレーリングの日次点)から概算した約629億ドルと突合し、差は約7%でした(CoinGeckoの日次点は当社の週境界より約15時間早い窓のため、差の一部は集計期間のずれによります)。前週の936億ドルは本号で再集計した値で、前号掲載値との差は0.01%未満です。円換算は160.16円/ドル(ECB参照レート、9/1時点)、月間換算は週間値×52/12です。東証プライムの売買代金とJPXデリバティブ取引代金の出典は日本取引所グループ「2026年8月の売買状況について」(参照)です。
- DEXシェア: 対象はデリバティブ(perp)を扱う分散型取引所で、現物のみのDEX(Uniswap等)は含みません。CoinGeckoの取引所別出来高(BTC建て。9/2に取得した直近7日分)の当社集計です。本編の50.0%は、出来高上位の主要11社(Hyperliquid、Aster、ApeX Omni、Lighter、edgeX、Variational、Pacifica、Extended、GMTrade、SynFutures、dYdX)の合算に対する値です。この他にCoinGecko上で分散型を名乗る取引所が12社確認でき、全23社を分母にした広義のシェアが42.9%です。広義側のうち2社(StandX、Nado)は取得期間の全時点でデータが返らず0として扱っています。各社の出来高は取引所の報告値に基づき、独立に検証できないものを含むため、対象の取り方でシェアは変動します。比較対象の前週51.8%も同じ主要11社ベースです。主要11社の合計取引高(週約1,180億ドル)は、当社実測のHyperliquid週間取引高をシェアで割り戻した概算です。CoinGeckoは取得時点から遡る7日間を対象とするため、集計期間は当社の週境界と最大半日ずれます。
- 資金フロー: チェーン上(HyperEVM分を含む)の全ステーブルコイン残高の週次差分で、出典はDefiLlamaの公表値です(水曜0:00 UTC時点の系列。内訳はUSDCが97.8%(9/2取得の構成データ))。本号は取得時点(9/2 6:00 日本時間)で9/2 0:00 UTCの値が未公表のため、週末の値は最新の公表点である9/1 0:00 UTC(対象週末より15時間前)を使い、8/26 0:00 UTCからの6日分の差分(+0.30億ドル)を対象週の増減として記載しています。週内の最小値(8/27の67.6億ドル)と最大値(8/30の68.7億ドル)は同じ日次系列の値です。USDCが現在はHyperliquidのチェーン上で直接発行されるため、特定のブリッジを見るだけでは資金の出入りを捉えられず、全ての経路を反映する残高の増減を主指標としています。参考値のArbitrumブリッジ経由の入出金(オンチェーンデータの当社集計)は対象週0.20億ドルの入金超過(入金2.96億ドル、出金2.76億ドル)でした。同ブリッジの残高(3.52億ドル)はDefiLlamaの公表値と0.1%以内で一致しています。
- 銘柄別出来高とRWA取引シェア: RWAはReal World Asset(株式・指数・コモディティ・FXなど現実世界の資産)の略です。シェアは週次出来高ベース(分子=RWA系perpの週間取引金額、分母=全perpの週間取引金額)で算出しています。区分は、個別株・預託証券・上場前企業を参照するperpを「株式」、株価指数とETF等の指数連動商品を「指数」、商品価格を「コモディティ」、FX・債券を「FX・債券」としています。本号で初めて週間出来高が計上され、RWA区分を新たに割り当てた銘柄は、Shein(株式。未上場企業を参照するperp)、Nebius・GoPro・SoFi(株式)、米小型株指数のSMALL2000(指数)、米国債のUSBOND(FX・債券)の6件です(SMALL2000とUSBONDはmkts市場に対象週より前から登録されていた銘柄で、本号の集計で初めて出来高が計上されました)。内訳の割合は四捨五入のため、合計がシェアと末尾で一致しない場合があります。Top30表も週間出来高ベースで、上位30銘柄で週間全体の91.4%をカバーします。新規上場の件数は上場イベント(perpDeploy)の記録から数えており、9/2 0:46(日本時間)に登録されたpara市場のTake-Two(TTWO)は対象週外のため含めていません。HIP-3市場のOI合計(35.9億ドル)は、取得時点で取引可能な銘柄の建玉の合算です。
- ボルト: 出典はHyperliquid公式データです(9/2時点。閉鎖済みを含む累計は9,470本)。預かり資産の合計は、HLPの構成戦略(Strategy A・B・X、Liquidator群など運営アドレスがHLP本体と同一の7口座)を除いた値です。単純に合算すると同じ資金を二重に数えることになるためです。ボルトの残高はOI(注9)と同様に取得時点のスナップショットで、前週の値は8/26昼、本号は9/2朝6時の取得です。APRは公式データの直近実績(年率)で、過去の実績であり将来の収益を示すものではありません。drkmttrのAPR(734.8%)のような極端な値は直近の短期間の成績を年率換算したものです。
- perp側の担保額: 預かり資産の総額(DefiLlamaのTVL)から、現物取引の口座残高(Hypurrscan)とArbitrumブリッジ残高を差し引いた概算で、証拠金・ボルト・未実現損益などを含みます。このTVLはUSDC建ての預かり資産で、現物として保有されるHYPEやビットコイン等のトークン残高は含みません。USDHの発行量はジェネシスアドレス保有分を除く実流通で、保有者は14,379アドレスです(Hypurrscan、9/2時点)。現物USDCの保有アドレス数は口座数の近似値として掲載しています(1人が複数アドレスを持つ場合があります)。前週の増加幅(+3.5万)は前号の掲載値です。HyperEVMのTVLはDefiLlamaの日次値で、9/1と8/25(いずれもUTC)の比較です。前号に掲載した8/26の値(15.8億ドル)はDefiLlama側で15.6億ドルに改定されています。
- 手数料: 本編の週間手数料はDefiLlamaの公表値を主指標としています。perp・現物・HLPへの配分を含む広い定義で、UTCの日次公表です。本号は取得時点で9/1(UTC)の日次値が未公表のため、集計窓は直近の完結した7日である8/25〜8/31(UTC)としました。対象週(日本時間8/26 0:00〜9/2 0:00=8/25 15:00〜9/1 15:00 UTC)より15時間早い窓で、前号の窓(8/19〜8/25 UTC)と8/25の1日が重なります。同じ1日ずらした窓どうし(8/18〜8/24 UTC、2,723万ドル)で比較すると-28.4%です。突合先のHypurrscanは取引手数料のみを累積値の差分で集計しており(境界は取得できる直近値、8/25 8:51〜9/1 8:51 日本時間)、本号は1,564万ドル・前週比-32.9%でした。定義の違いと集計窓の違いにより両者の乖離が10%を超えるため、当シリーズの規定に従い両方の値を記載します。図5の各週は本号の窓に合わせてUTC日次を7日ずつ区切っており、直近週の左隣の棒(8/18〜8/24)は2,723万ドルです。本文の前週値(前号掲載の3,011万ドル、8/19〜8/25)とは区切りが1日異なります。減少の方向と減少率はほぼ一致しています。手数料率は取引金額の約3.31bp(DefiLlama基準。前週は3.22bp)ですが、分子と分母の集計窓がずれているため参考値です。本誌の「総供給」はジェネシス発行の10億HYPEを分母としています(CoinGecko掲載のtotal supply 9.55億枚を分母にすると、Assistance Fund保有は4.9%、アンロック枚数は1.5%になります)。Assistance Fundの買い戻し(週初と週末の保有量差分。ドル換算は9/2時点の82.59ドル)は、Dune上の公開集計(手数料からの推計・日次価格換算で約15.9万HYPE、1,315万ドル)と6%以内で整合しています。
- 前週比の分解と構造指標: 前週比の増減は、銘柄別の週間出来高(当社集計・全317銘柄)の差分で分解しています。全体の減少348.1億ドルのうち、本体市場が296.3億ドル(85.1%)、外部運営市場xyzが55.1億ドル(15.8%)を占め、io市場は3.6億ドルの増加、その他3市場(hyna・para・mkts)は合計0.3億ドルの減少でした。日次の最小値(8/30の29.6億ドル)と最大値(8/27の117.1億ドル)は、いずれも当社集計の日本時間ベースです。資金調達レートは公式データの1時間ごとの実績を対象週(日本時間、168時間)で平均し、年率換算(×24×365)した値です。前週の値(BTC 11.5%、ETH 10.5%、HYPE 23.6%)は前号の掲載値です。Hyperliquidの資金調達レートは金利成分を含む設計のため、需給が完全に中立でも年率4%台半ばのプラスになります。回転数(週間出来高÷預かり資産の総額。分母はセクション7のTVL)は8.8回で、前週は同じ算式で14.0回です。市場別の回転率(週間出来高÷OI)は本体約4.4回転、xyz約4.0回転です。ステーキングの解除待ちは、取得時点(9/2朝)で解除が完了していないものの合計です。解除は申請から7日で完了するため、この系列は直近7日間の新規申請の合計にほぼ等しくなります。対象週には前週の行列にあった約322万HYPEが全て完了して外れ(前週の取得後に申請され対象週中に完了した分を含む完了総額は1,801件・約325万HYPE)、対象週の新規申請のうち取得時点で残る分(1,070件・約324万HYPE。最大はxyz市場の運営者アドレスによる50万HYPE、次いで約43.3万HYPE)が置き換わったため、合計は前週比+1.4万HYPEにとどまりました。前週比2.6倍の取引増加と前週の日次ピーク(8/20の198億ドル)は前号(8月26日公開号)の掲載値です。OIの前週比は、いずれも取得時点のスナップショット(前回8/26昼、本号9/2朝)どうしの比較です。
- 仕組みの解説(初めての読者向け): 本文が前提にしている仕組みをここにまとめます。
– OI(未決済建玉): 決済されずに残っているポジションの総額です。取引高がその週の売買の量(フロー)を示すのに対し、OIは市場に積み上がったリスクの残高(ストック)を示し、取引高が減少してもOIが増加する週は、売買の回転が落ちる一方で建てた玉を持ち越す動きが優勢だったと読めます。OIは建玉の数量に価格を掛けた名目額のため、数量が同じでも価格が上昇すれば増加します。本誌のOIは毎週の取得時点のスナップショットで、前週比も同時点どうしの比較です(前回は8/26昼、本号は9/2朝の取得です)。
– HIP-3: 所定のステーキング要件(50万HYPE)を満たした事業者が、自らperp市場を開設・運営できる仕組みです。xyz市場を運営するtrade[XYZ]や、本号で運営終了を告知したHyENAが例です。市場ごとに証拠金に使う通貨を選べ、HyENAはUSDCではなくEthena発行のUSDeを採用していました。
– 上場前株式のperp: SheinやAnthropicのような未上場企業について、株式そのものではなく、評価額の推定値(オラクルが提供する参照価格)に連動するperpを取引する仕組みです。決済は現金(USDC)で行われ、株式の受け取りや株主の権利は発生しません。参照価格の設計は市場ごとに異なります。
– トークンのアンロック: 初期投資家やチーム、コミュニティ向けに配分されたトークンのうち、一定期間は移転できない設定になっている分が、あらかじめ決められた日程で移転可能になることを指します。HYPEは毎月定期的にアンロックが行われており、移転可能になったトークンが実際に売却されるかは保有者の判断によります。
– 現物のティッカーオークション: 約31時間ごとに1枠が競売され、高い価格から始まり時間とともに下限の500 HYPEまで下がるダッチ方式で、最初に応札した人がティッカー(銘柄コード)と発行・上場の権利を得ます。支払いは2025年5月下旬からHYPE建てです(それ以前はUSDC建て)。周期・下限価格・支払通貨はいずれもHyperliquid公式ドキュメントによります。上場審査を入札コストに置き換えたスパム防止の仕組みで、落札額は上場需要の指標になります。
– ステーブルコインの用途: Hyperliquid上のUSDC等は、①perp取引の証拠金、②現物取引の決済通貨、③ボルトへ預ける運用原資、④HyperEVM上の貸付などに使われます。証券口座でいう預り金と委託保証金に相当する、取引の元手です。
