香港特別行政区政府は9月29日、総額約200億香港ドル(約4000億円、1香港ドル=20円換算)のデジタルグリーン債(環境関連事業の資金を集めるグリーン債をブロックチェーンなどのデジタル基盤上で発行・管理する債券)について、価格決定を完了したと発表しました。香港政府によると、発行規模はデジタル債として世界最大となります。今回の発行では世界初となるトークン化預金を用いた決済が香港ドル建てで導入されており、ブロックチェーン技術を活用した金融インフラの実用化が進む事例として注目されます。
株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。
世界初のトークン化預金決済とデータ連携の導入
今回のデジタルグリーン債では、香港ドル建て債券の発行時決済において、世界で初めてトークン化預金が統合されました。トークン化預金とは、銀行預金をデジタル上で表現し、移転や決済に利用できるようにした仕組みです。香港政府は、この仕組みの導入がデジタル通貨のプログラム可能性を探る基盤になるとしています。前回の発行ではデジタル形式の中央銀行マネー(香港ドルと人民元)が決済手段に用いられましたが、今回は民間のトークン化預金へと対象が広がりました。
決済は香港金融管理局(HKMA)が運営する債券決済システムを通じて行われ、海外の主要な証券決済システムとも接続されます。決済期間は取引日の翌営業日です。
また、債券情報には国際資本市場協会(ICMA)が定める最新基準である「債券データ分類2.0」が採用されました。発行額や通貨、満期、金利、重要日程などの情報を機械が読み取れる形式で整理することで、債券の発行から償還に至るまでのデータ連携や業務の自動化を進める狙いがあります。調達された資金は、香港政府のグリーンボンド枠組みに定められた環境関連事業の新規投資や借り換えに充てられる予定です。
旺盛な市場需要と政府による定期発行方針
今回の債券は香港ドル、人民元、米ドル、ユーロの4通貨建てで発行され、投資家からの購入申し込みは発行額の1.3倍から11.3倍に達しました。香港政府によるデジタルグリーン債の発行は2023年以降で4回目となります。2023年に世界初のトークン化政府グリーン債を発行して以降、複数通貨建ての発行やデジタル通貨による決済など、段階的に技術的な検証を重ねてきました。
香港政府はデジタル債を定期的に発行する方針を打ち出しています。2026年2月に公表された予算案において、トークン化債券やデジタル資産の利用拡大を進める方針が示されました。さらに香港金融管理局(HKMA)も6月に金融機関や市場インフラ企業などが参加するトークン化債券の専門家グループを設立しており、政策、市場慣行、技術面の課題を整理しながら、デジタル債市場の拡大に向けた基盤整備を進めています。
ポイント
- 発行規模が世界最大となる約200億香港ドル(約4000億円)に達し、投資家からの申し込みが最大11.3倍に上るなど市場の強い需要が示された点で注目されます。
- 香港ドルのトークン化預金を統合した世界初のデジタル債であり、デジタル通貨のプログラム可能性を実務環境で検証する基盤となる点で重要です。
- 国際資本市場協会の「債券データ分類2.0」を採用し、機械可読なデータ形式によって債券の発行から償還までの自動化を推進している点で先進的です。
- 香港政府がデジタル債の定期発行方針を掲げ、金融当局による専門家グループ設立を通じて市場拡大を制度面からも推進している点で注目されます。
総研プライム
ブロックチェーンを、
徹底的に読み解く。
技術の仕組み、企業の戦略、市場の構造まで。独自の調査・分析で掘り下げる専門レポート。
初月無料で読む