米連邦裁判所は、破綻した暗号資産レンディング企業セルシウス・ネットワークの訴訟管理人がブロックチェーン分析企業チェイナリシスに対して提起した訴訟について、請求の大半を棄却しました。一方で裁判所は、セルシウス幹部による受託者義務違反をチェイナリシスがほう助したとする1件の請求については審理の継続を認めています。この訴訟は、チェイナリシスのソフトウェアを用いて資産額を算出し「監査」と称して発表した経緯を巡るものであり、暗号資産分析企業の対外発表への関与と法的責任の範囲が争点となる点で重要視されます。
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受託者義務違反のほう助に関する審理を継続
ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のマーガレット・ガーネット判事は、チェイナリシス側による請求棄却の申し立てを一部退け、受託者義務違反のほう助に関する請求の審理を続ける判断を下しました。裁判所は、セルシウスが2020年に発表したプレスリリースに虚偽の記載が含まれていることをチェイナリシスが認識しながら、その情報の拡散を支援したとする原告側の主張について、十分な根拠があると判断しています。
一方で、裁判所は原告側が提起していた他の請求のうち12件について、今後この訴訟において原告側が訴えを修正できない形で棄却しました。また、消費者保護法に関する3件の請求については再提訴を妨げない形で棄却されており、原告側には2026年10月20日までに請求を修正して提出するか、修正しない意向を裁判所に伝える期限が設定されています。
今回の訴訟を起こしたのは、セルシウスの財産について訴訟管理人および回収管理人を務めるブロックチェーン・リカバリー・インベストメント・コンソーシアム(BRIC)です。セルシウスは2022年7月に破産を申請し、その1カ月前に出金を停止したことで顧客の資産約47億ドル(約7410億円)がアクセス不能となっており、今回の訴訟は債権者への資金返還を目指す財産管理手続きの一環として進められています。
資産算出額が引き上げられた33億ドルの監査発表が焦点
本訴訟の核心となっているのは、セルシウスが2020年に実施した資産の算出と、それを公表したプレスリリースの内容です。セルシウスは当時、チェイナリシスに依頼して同社のソフトウェア「リアクター(Reactor)」を使用し、運用資産残高を算出しました。
裁判所のまとめによると、セルシウス幹部は当初、リアクターを用いて約11億8,000万ドル(約1860億円)の資産を算出していました。しかし、その後に算出方法を変更したことで、金額は約33億ドル(約5200億円)まで増加したとされています。セルシウスは2020年12月9日、チェイナリシス・リアクターを利用して33億ドルの資産を確認する「監査」を実施したとするプレスリリースを発表しました。この算出は、2018年のサービス開始以降の取引や預金総額、出金総額などを基にしたものでした。
原告側は、チェイナリシスがこのプレスリリースの作成、編集、承認を支援したと主張しています。さらに、一連の作業を「監査」や「独立した検証」と表現することが虚偽であり、重要な点で誤解を招く内容であることをチェイナリシスが認識していたと訴えています。なお、これらの主張は現時点で立証されたものではなく、チェイナリシス側は訴訟全体の棄却を求めていました。
ポイント
- 米連邦裁判所はセルシウス訴訟管理人がチェイナリシスに提起した訴訟について、15件の請求を棄却した一方、受託者義務違反のほう助を巡る1件の請求については審理継続を認めました。
- 争点となっているのは、チェイナリシスの分析ソフトにより資産算出額が約11億8,000万ドルから約33億ドルに増額され、それを「監査」と称して発表したプレスリリースへの関与です。
- 分析ツールを提供するブロックチェーン企業が、顧客企業の公表内容の虚偽性を認識しながら作成や拡散を支援したかという法的責任が問われる点で注目されます。
- 棄却された請求のうち消費者保護法に関する3件については、原告側に2026年10月20日までに修正提出を行うかどうかの判断期限が与えられています。
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