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ブロックチェーン総研by Pacific Meta

スウェーデン中銀がデジタルクローナの法整備調査を議会に提起。導入準備に少なくとも5年を要するため先行着手する方針

スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクは、中央銀行デジタル通貨(CBDC:中央銀行が発行するデジタル通貨)「デジタルクローナ」の将来的な導入に備え、必要な法改正を検討する公的調査の開始を議会に提起しました。現時点で発行や調査の開始は決定していませんが、中銀や民間銀行による準備作業だけで少なくとも5年を要するため、発行の是非にかかわらず早期に法制面の検討を始める必要があると説明しています。欧州中央銀行(ECB)によるデジタルユーロの開発進展や、米ドル連動型を中心とするステーブルコインの普及、地政学的リスクの高まりを背景に、将来的な自国通貨決済の競争力維持や耐障害性の確保を目指す方針です。

監修:ブロックチェーン総研編集部

株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。

法整備調査を提起した背景と導入に要する5年の準備作業

スウェーデン中央銀行は2017年からデジタルクローナの研究を進め、2023年に技術的な実証プロジェクトを終了しました。同年に公表された政府の決済に関する調査報告書では、当時は発行するほど強い社会的ニーズはないと判断され、具体的な法改正案も示されていませんでした。

しかし、同中銀が10月7日付で議会の財政委員会に提出し、10月15日に公表した書簡によると、デジタルクローナを実際に導入する場合、中銀や民間銀行などの市場参加者によるソフトウェア開発、新たな決済基盤への接続、既存システムとの統合といった準備作業に少なくとも5年かかると見積もられています。この期間には法改正に必要な時間は含まれていません。

スウェーデン中央銀行法では、デジタル決済手段の発行に議会の同意が必要と定められています。法制度の整備には、デジタルクローナの法的地位や利用条件、民間事業者との役割分担、オフライン利用のほか、中央銀行が利用者の決済内容を監視できない仕組みといったプライバシー保護の検討が含まれます。準備に長期間を要することから、同中銀は最終的に発行しない場合や導入を延期する場合であっても、現時点で法整備の検討に着手することには合理性があると説明しています。

デジタルユーロ構想への対抗とステーブルコイン台頭への懸念

今回の提起の背景には、欧州および国際的な決済環境の変化があります。欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏向けCBDC「デジタルユーロ」の開発を進めており、関連するEU規則が2026年中に成立することを前提に、2027年後半の試験運用開始と2029年の発行に向けた準備を行っています。

スウェーデンは欧州連合(EU)加盟国ですが、ユーロを導入せず独自通貨のクローナを使用しています。今後のEUにおける決済サービスやインフラ、法制度がデジタルユーロを前提に整備される見通しであるため、自国通貨に基づく同等の仕組みがなければ、長期的には同国の決済システムの競争力に影響する可能性があると指摘されています。なお、デジタルクローナを発行する際には、ECBが計画するインフラを利用することで、障害に強い決済基盤の確保や欧州域内の国際決済の迅速化、コスト削減が可能になると説明されています。

あわせて、米ドル連動型を中心とするステーブルコインの利用や流通量の増加も挙げられています。現在は暗号資産取引での利用が中心であるものの、将来的に外国通貨連動型のステーブルコインが広く普及した場合、スウェーデン国内でクローナの利用が減少する恐れがあります。短期的には重大なリスクではないとしつつも、長期的には無視できない課題として位置付けられています。さらに、地政学的状況の悪化を踏まえ、停電や通信障害時にも決済を継続できるオフライン決済機能を備えることで、国家全体の決済システムの耐障害性を高める狙いもあります。

ポイント

  • スウェーデン中銀がデジタルクローナ導入に向けた法整備調査を議会に提起し、発行の有無にかかわらず早期に法制度の議論を始める姿勢を示した点で注目されます。
  • システム開発や民間銀行の接続準備だけで少なくとも5年を要し、法改正にも追加の時間が必要とされるため、長期的な視点で事前準備を進める方針である点で注目されます。
  • EU加盟国でありながら独自通貨を持つスウェーデンが、先行するデジタルユーロのインフラ整備に対して自国の決済システムの競争力を維持する布石となる点で注目されます。
  • 米ドル連動型を中心とするステーブルコインの普及による自国通貨利用の減少リスクや、オフライン決済による有事の耐障害性向上を導入検討の理由に挙げている点で注目されます。

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