ビットコインのライトニングネットワーク関連技術を開発するライトニング・ラボは、新たな拡張技術「LayerTree(レイヤーツリー)」を紹介しました。同技術は、100万人規模のユーザーが1つのUTXOを共有し、第三者に資産を預けることなく管理できる非カストディアル型の設計を採用しています。ビットコインのデータ肥大化という拡張性の課題に対応し、ライトニングネットワークとの連携も想定されていますが、現時点では技術提案の段階でありメインネットでの利用には新たなオペコードの追加が必要とされています。
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1つのUTXOを100万人規模で共有する仕組みと自己管理の維持

ビットコインは、取引によって生成される資金の塊である「UTXO(未使用トランザクション出力)」によって残高を管理しています。銀行口座のように残高を直接記録するのではなく、保有するUTXOの合計額を計算する仕組みのため、UTXOの数が増加するとネットワークを維持するノードのデータ管理負担が増大し、拡張性における課題となっていました。レイヤーツリーは、各ユーザーの残高をブロックチェーンの外部でツリー状の階層構造としてまとめ、その状態を共有UTXOに反映させることで、ブロックチェーン上の記録を抑えながら多数のユーザーによる資金共有を可能にします。
また、レイヤーツリーは第三者に資金管理を委ねない非カストディアル型の仕組みを採用しています。運営者は新規ユーザーの参加承認や拒否を行えますが、参加者の資金を勝手に移動させる権限はありません。ビットコインの資金使用時に取引条件を設ける「コベナンツ」と呼ばれる技術を活用することで、各ユーザーは自身の残高証明データを用い、運営者の承認なしに1回の取引で資金を引き出すことができます。事前に署名された取引を用意する必要がなく、共有UTXO自体に有効期限が設定されていない点も特徴です。なお、個々のユーザーには退出期限を設定でき、期限経過後に運営者が退出処理を行った場合でも、資金はユーザー本人に払い出される設計となっています。
ライトニングネットワーク連携と導入に向けた技術的課題
レイヤーツリーは、ビットコインの取引を毎回ブロックチェーンに記録せず高速かつ低コストで送金する仕組みである「ライトニングネットワーク」との連携も想定されています。共有UTXO内の資金をライトニングネットワークの決済に利用できるほか、運営者が支払いを仲介する方式などを採用することで、ユーザーが常時オンラインでなくても資金を受け取ることが可能です。ただし、受け取り方式によっては支払い処理中に一時的な信用リスクが生じる点には留意が必要です。
技術的な制約としては、多数のユーザーが同じUTXOから一斉に資金を引き出そうとした場合、順番に取引を処理するため手続きが滞る可能性があります。この課題に対しては、複数のツリーに分割して運用する対策が挙げられています。さらに、レイヤーツリーの実現には、ビットコインの取引条件を検証するプログラムで使用する命令である「オペコード」の追加が不可欠です。既存のオペコード提案を組み合わせて利用する設計ですが、現時点ではビットコインのメインネットで有効化されておらず、本技術は提案段階にとどまっています。
ポイント
- 1つのUTXOを100万人規模で共有し、ノードのデータ管理負荷を抑えながらビットコインの拡張性を高める設計である点
- 第三者に資金を預けない非カストディアル型であり、コベナンツ技術によりユーザーが単独で資金を引き出せる安全性を備えている点
- 共有UTXOの資金をライトニングネットワーク決済に利用でき、常時オンラインでなくても受け取りが可能になる点
- 一斉引き出し時の滞留リスクや一時的な信用リスクが存在し、複数ツリーによる分割運用などの対策が示されている点
- 実現には新たなオペコードの有効化が必要であり、現時点ではメインネットで利用できない技術提案の段階である点