ポリゴンラボ(Polygon Labs)は2026年10月19日、独自ブロックチェーン開発ツール群「ポリゴンCDK(Polygon CDK)」において、ハイパーレジャー・ベス(Hyperledger Besu)を採用した新構成「ポリゴンCDKベス(Polygon CDK Besu)」を発表しました。これにより、銀行などの金融機関は自社インフラ内に取引データを保持したプライベートチェーンを構築し、相互運用基盤「アグレイヤー(Agglayer)」を通じて外部ネットワークと連携させることが可能になります。この機能は同社が推進する決済基盤「ポリゴン・オープン・マネー・スタック(OMS)」の一環として提供され、トークン化預金の移動や金融機関同士の精算といった実業務への適用が期待されています。
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機密性と柔軟性を両立する独自チェーンの構築環境
ベスは、リナックス財団(Linux Foundation)傘下のハイパーレジャープロジェクトとして開発されているオープンソースのイーサリアムクライアント(ノードを運用し取引やブロックを処理するソフトウェア)です。許可された参加者のみで構成される企業向けネットワークにも利用できる特徴を持っています。
ポリゴンCDKには従来、OPスタック(OP Stack)を活用する構成が存在していましたが、今回ベスが選択肢に加わったことで、企業は自社の開発チームが扱い慣れた技術や用途に合わせて構築方法を選べるようになりました。CDKベスで構築されたチェーンでは、取引データが自社インフラ内に保持され、イーサリアムのパブリックチェーン上には公開されません。
ガバナンス面では、金融機関単独または複数機関によるコンソーシアムがバリデーター(取引の検証者)を運営し、参加可能なユーザーを独自に制御できます。共同運営を行う構成では、チェーン間の資産移動を精算する証明書に対して事前に定めた複数機関の署名を必須とすることで、単独の機関による不正なブロック生成や引き出しを防ぐ運用が可能です。なお、構築したネットワークの活動収益をポリゴンラボへ分配する義務はなく、標準のベスクライアントや接続ソフトウェア、導入手順も公開されています。
アグレイヤー連携によるチェーン間移動と安全性
CDKベスで立ち上げたチェーンは、最初のブロックの生成時から相互運用基盤「アグレイヤー」へ接続できます。また、既存のベスネットワークであっても、新規構築とは異なる設定を行うことでアグレイヤーへの接続に対応するとされています。
チェーン間の安全な資産移動を実現するため、ゼロ知識証明を用いた「ペシミスティックプルーフ(pessimistic proof)」が採用されています。この仕組みでは、ブリッジ上における各チェーンの資産残高を超える不正な引き出しを防止します。仮に接続先のチェーンが侵害された場合でも、他のチェーンに預け入れられた資産が引き出される事態を防ぐ設計です。証明データはサクシンクト(Succinct)の証明生成ネットワークで作成され、イーサリアム上で検証されます。この検証対象はブリッジでの資産収支であり、プライベートチェーン内部の個別取引そのものを公開・証明するものではありません。
加えて、各接続チェーン上では元の資産に対応する正規のトークン表現が1つに統一されます。これにより、ブリッジごとに異なる派生トークンが乱立し、流動性が分散したり管理が煩雑になったりする課題を抑制します。
ポリゴンラボは具体的な用途として、トークン化預金や担保資産のチェーン間移動、異なる基盤を利用する金融機関間の精算などを想定しています。例えば、銀行が法人向けに発行したトークン化預金を別のチェーンへ移動させ、そのネットワーク上で発行されているトークン化マネーマーケットファンド(MMF)への投資に充当する事例などが挙げられています。
決済プラットフォーム「OMS」の推進と関連インフラの整備
今回のCDKベスは、ウォレット機能や法定通貨と暗号資産の交換、複数チェーン間の資金移動、オンチェーン精算を統合する決済プラットフォーム「ポリゴン・オープン・マネー・スタック(OMS)」の構成要素として提供されます。
ポリゴンラボはOMSの強化に向けた基盤整備を急速に進めています。10月14日には、米国の暗号資産決済企業コインミー(Coinme)の買収完了を発表しました。同社が保持する37州の送金業ライセンスおよび11州の適用除外を通じて全米48州をカバーする規制対応基盤を獲得し、ステーブルコインと既存金融システムを結ぶ決済機能の強化を図っています。
また、インフラの安定性向上の一環として、10月15日にはブロックチェーン「ポリゴンPoS(Polygon PoS)」のノードソフトウェア「ボー(Bor)」に存在した2件の脆弱性に対応し、修正版「Bor v2.10.3」を公開しました。低コストでノードに過大な負荷を与えて処理を遅延させるリスクを解消しており、メインネットおよびテストネットにおいて悪用は確認されていないと発表されています。
ポイント
- 企業向けイーサリアムクライアント「Hyperledger Besu」がPolygon CDKに対応し、金融機関が慣れ親しんだ技術スタックでプライベートチェーンを構築可能になった点で注目されます。
- 取引データを自社インフラ内に保持しつつ、相互運用基盤「アグレイヤー」を通じて外部チェーンとの資産移動を両立できる点が重要視されます。
- ゼロ知識証明を活用したペシミスティックプルーフにより、万一特定のチェーンが侵害されても他チェーンの資産が保護される強固な安全設計が組み込まれています。
- トークン化預金からトークン化MMFへの投資など、分断されがちな金融資産のオンチェーン精算や移動を円滑化するインフラとして期待されます。
- 決済基盤「Polygon Open Money Stack」の一角として位置づけられ、買収したCoinmeの全米48州対応ライセンス基盤などとともに実務的な決済・金融基盤の強化が進められています。
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