ステラ開発財団は、ステラブロックチェーンの次期ネットワークアップグレード「Bell(Protocol 30)」の内容と導入スケジュールを公開しました。今回のアップグレードでは、企業による複数顧客の資金管理を効率化するスマートアカウントの機能拡張、耐量子電子署名の検証機能、将来の処理高速化に向けたミリ秒単位の時刻管理が導入されます。暗号資産取引所やカストディ事業者の運用負担を軽減するとともに、将来の暗号解読リスクや台帳確定間隔の短縮を見据えた重要な変更と位置づけられます。メインネットでの承認投票は11月23日に予定されており、バリデーターの承認を経て正式に有効化される見込みです。
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スマートアカウントの拡張による企業向け資金管理の効率化
プロトコル変更提案の1つであるCAP-84では、企業がスマートアカウントを利用して複数顧客の資金を管理しやすくするための機能が追加されます。スマートアカウントとは、スマートコントラクトによって複数人による承認や支出額の制限など、資金の使用条件を柔軟に設定できるアカウントです。
暗号資産取引所やカストディ事業者などでは、1つのアカウントで複数顧客の資金をまとめて保有し、顧客ごとの残高をブロックチェーン外で管理する運用が行われる場合があります。従来のステラのアカウントには顧客ごとの識別IDを付与して入金を区別する仕組みがありましたが、スマートアカウントには同様の機能がなく、顧客ごとに個別のスマートコントラクトを用意する必要がありました。
今回の変更により、スマートコントラクトのアドレスに64ビットの識別IDを付与できる多重化コントラクトアドレスが導入されます。新たに導入されるWで始まるアドレスに送金すると、資金は対応するスマートコントラクトに入金され、送金イベントに識別IDが記録されます。これにより、事業者は顧客ごとに個別コントラクトを配置することなく、1つのコントラクトで入金先を判別し、資金を一括管理できるようになります。
耐量子電子署名への対応とミリ秒単位の台帳時刻管理
2つ目の提案であるCAP-87では、スマートコントラクトが耐量子電子署名方式であるML-DSAの署名を検証できるようになります。ML-DSAは、米国国立標準技術研究所(NIST)が2024年に標準化した耐量子電子署名方式の1つです。ステラでは現在、楕円曲線暗号に基づく電子署名を採用していますが、将来的に高性能な量子コンピューターによって解読されるリスクが指摘されています。
この変更によって、スマートアカウントの資金使用条件にML-DSA署名を設定できるようになります。署名の検証機能はノードソフトウェアであるステラ・コアが提供するため、開発者が暗号処理を独自に実装する必要はありません。ただし、今回のアップグレードでネットワーク全体が耐量子暗号へ移行するわけではなく、トランザクション署名には引き続きEd25519が使用されます。従来型アカウント向けの耐量子署名機能については、将来のプロトコル変更で導入される方針です。
3つ目の提案であるCAP-88では、将来的な台帳確定間隔の短縮に向けた基盤が整えられます。台帳確定間隔とは、ある台帳が確定してから次の台帳が確定するまでの時間を指します。ステラでは直近のアップグレードで確定間隔が約5.7秒から5秒に短縮されましたが、従来の秒単位の管理では端数や1秒未満の間隔を正確に設定できない制約がありました。CAP-88では秒単位の情報を維持しつつ、台帳確定時刻をミリ秒単位でも記録できるように変更されます。なお、今回のBell自体が確定間隔を直接短縮するものではありません。
事業者の対応要件と導入スケジュール
Bellの導入にあたり、ステラ開発財団は開発者やインフラ事業者に対して最新のソフトウェア開発キット(SDK)への更新を求めています。台帳ヘッダーの形式が変更されるため、古いSDKでは新しい台帳データを正常に読み取れなくなる可能性があるためです。また、アドレスを扱うアプリケーション側での新しいWアドレス形式への対応や、SDKを介さずにデータを読み取るシステムにおけるデータ形式(XDR)の更新が必要となります。なお、既存のスマートコントラクトについては変更を加えずにそのまま利用可能です。
ソフトウェア関連では、ステラ・コアのバージョン30.0.0が10月16日に公開されており、関連インフラやSDKの安定版は10月23日までに順次公開される予定です。アップグレードの承認投票は、テストネットが11月3日、メインネットが11月23日に予定されており、時間はいずれも世界協定時17:00(日本時間翌日2:00)とされています。これらの日程は変更される可能性があります。
ポイント
- 取引所やカストディ事業者が1つのスマートコントラクトで複数顧客の資金を一括管理できるようになり、インフラ運用の効率化につながる点で注目されます。
- 米国国立標準技術研究所(NIST)が標準化した耐量子署名「ML-DSA」の検証が可能になり、将来の量子コンピューター解読リスクへの対策が段階的に進められます。
- 台帳確定時刻をミリ秒単位で記録する仕組みを導入することで、将来的な処理高速化や確定間隔短縮に向けた基盤が整備されます。
- 台帳ヘッダー形式の変更や新アドレス形式の導入に伴い、事業者はSDKのアップデートなどの技術対応が必要です。
- メインネットの承認投票は11月23日に予定されており、バリデーターの合意を経て新プロトコルへ移行する方針です。
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