博報堂DYホールディングス子会社のアズ・フォー・ヒューマニティは、人間認証技術「ワールドID(World ID)」を活用した広告商品「ヒューマン・ベリファイド・アド」について、LINEヤフー、Meta、Xなどの主要プラットフォームへの配信を開始したと発表しました。あわせて同社は、ワールドIDを手がけるツールズ・フォー・ヒューマニティ(TFH)およびLGエレクトロニクスとの業務提携を発表しています。広告の表示やクリックを偽装するアドフラウド被害が拡大するなか、ブロックチェーン技術と分散型IDを組み合わせることで、実在する人間のみに広告を配信するビジネスモデルの実用化が進んでいます。
株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。
主要プラットフォームへの配信拡大と広告効果の検証結果
アズ・フォー・ヒューマニティが提供するヒューマン・ベリファイド・アドは、ワールドIDによって人間であることが確認された利用者に絞って広告を配信するソリューションです。今回の配信先拡大では、博報堂DYワンが提供する生活者データ基盤「オーディエンスワン」が活用されました。利用者向けアプリ「ヒューマッド(Humad)」において人間認証済みであることを示す情報を、個人が特定されない形で利用し、広告配信向けのデータ基盤を構築しています。
本仕組みの有効性については、ローソンエンタテインメントが運営する旅行予約サービス「ローチケ[旅行]」を用いた比較検証が行われました。9月18日から10月17日までの期間中、同一の広告素材を用いて従来の広告運用と比較したところ、クリック率は約3倍となり、クリック単価は約61%低下したと報告されています。また、同社は広告のターゲット層に占める認証済み人間の割合を示す指標として「ヒューマン・レート(Human Rate)」を提唱しており、従来の指標と併用していく方針です。
TFHおよびLGエレクトロニクスとの提携による三位一体の体制
配信拡大と同時に発表された業務提携では、三者がそれぞれの技術と基盤を拠出する体制が整えられました。TFHがワールドIDによる人間認証機能を担当し、LGエレクトロニクスは広告の配信記録を改ざん困難な形で保持するブロックチェーン技術を提供します。博報堂DYグループは、広告主や媒体社とのネットワーク、および広告配信・データ基盤の運用を担います。
今後に向けて、アズ・フォー・ヒューマニティはLGエレクトロニクスと広告配信システムの共同開発や改善を進め、TFHとはヒューマッドアプリの開発・改善に取り組む計画です。博報堂、TFH、LGエレクトロニクスの3社は2025年7月から8月にかけて実証実験を行っており、その結果を踏まえて今年4月にアズ・フォー・ヒューマニティが設立され、6月からの商品販売を経て今回の連携拡大に至っています。
アドフラウド被害の深刻化とWeb3技術のビジネス活用
今回の取り組みの背景には、デジタル広告市場におけるボットトラフィックの急増と、それに伴うアドフラウド被害の深刻化があります。公式発表によると、現在インターネット上のトラフィックに占めるボットの割合は53%に達しており、AIエージェントによるトラフィック数も前年比で7,851%の増加を記録しています。
アドフラウドによる被害額は全世界で年間13兆円(2023年時点)、日本国内だけでも1,592億円(2025年時点)に上るとされています。不正に広告費が詐取される課題に対し、改ざん耐性を持つブロックチェーンと生体認証に基づく人間認証技術を広告配信ネットワークに直接統合することは、費用対効果の改善と広告市場の健全化を両立させるアプローチとして注目されます。
ポイント
- アズ・フォー・ヒューマニティがWorld IDを活用した人間認証型広告をLINEヤフー、Meta、Xなどへ配信開始しました。
- 先行検証において、従来の広告と比較してクリック率が約3倍に向上し、クリック単価が約61%削減される成果が示されました。
- TFHが人間認証、LGエレクトロニクスがブロックチェーンによる改ざん防止技術、博報堂DYグループが広告・データ基盤を担う三者提携が発表されました。
- ボットによるアドフラウド被害が拡大するなか、実在する人間に絞ってリーチするWeb3技術の具体的な実用化モデルとして注目されます。
総研プライム
ブロックチェーンを、
徹底的に読み解く。
技術の仕組み、企業の戦略、市場の構造まで。独自の調査・分析で掘り下げる専門レポート。
初月無料で読む