ビットコインの急騰、次々に登場する新しいプラットフォーム―。一寸先も未知数なWeb3業界。
Pacific Meta Researchでは、そんな業界のトップランナーへのインタビューを通じて、最新動向とリアルな声をお届けしていく。 今回は、ゲーム会社The Sandboxの共同創業者でCOOのセバスチャン・ボルジェ(Sebastien Borget)氏に話を聞くことができた。
「メタバース」という言葉は一時の流行に終わったのか?その答えを、ボルジェ氏がどのように描くのか。そして日本とWeb3、そしてメタバースの未来について、彼の視点から語ってもらった。
ボルジェ氏は、日本文化への深い愛情を持ち、私たち日本人にも共感できる部分が多い人物だ。実際に「カシオの時計やポーターのカバンを愛用している」というエピソードからも、日本の精緻な製品に対する深い敬意を感じる。そんな彼が語る、日本とメタバースの新たな可能性とは―
聞き手 株式会社Pacific Meta 共同創業者・事業開発部長 邵 鴻成
※本インタビューは2024年11月23日に実施されたものです。
メタバースは果たして「終わった」のか?
— メタバースという概念は、まだ勢いを持っていると思いますか?
ボルジェ氏:
もちろん。私たちはそれを証明するために活動しています。 メタバースの話題を聞く機会は減ったかもしれませんが、かといってそれが衰退を意味するわけではありません。FortniteやRobloxといった企業も、引き続きメタバースに注力していることを発表しています。
私たちも積極的にクリエイターを支援したり、製品を高頻度でアップデートしたりしています。今度リリースするアルファ シーズン4ではさらに多くのブランドを招いています。

私たちが目指すメタバースは一過性のものではありません。私たちが作っているのは、リアルな体験を提供できる空間です。
例えば、The Sandboxではユーザーが自らコンテンツを創造し、より深い価値を生み出せるようになっています。メタバースというのは、その可能性を実現するためのツールに過ぎません。この仮想空間を、交流や創造、収益活動、教育の場として提供することが私たちの使命であり、それを着実に実現しています。
FortniteやRobloxが持つ1億人以上のユーザーには及びませんが、The Sandboxに50万人のプレイヤーが集まったというのは、私たちにとっては非常に意義のある成果です。
困難な市場環境の中でも着実に成長を遂げるThe Sandbox/2025年 Web3ゲーム業界に求められる姿勢とは
— 2024年はThe Sandboxにとってどんな年でしたか?
ボルジェ氏:
The Sandboxとしては素晴らしい一年でした。新たにローンチしたシーズン4では、ユニークプレイヤー数が50万人に達し、過去最高を記録しました。アップデートも好評で、土地販売も好成績を収め、トークンも安定しています。 近年、多くのプロジェクトが資金調達や投資家の確保に失敗し、人員削減やプロジェクトの終了を余儀なくされています。そんな中でも、The Sandboxのユーザーベースは600万ウォレットにまで成長しました。

— Web3ゲーム業界の現状や今後の展望を聞かせてください。
ボルジェ氏:
今年、業界全体としては成長したものの、各プロジェクトが独自のゲームエコシステムを持ち、独立して乱立している状態です。特定のプロジェクトが数百万人のユーザーを獲得したとしても、他での価値上昇にはつながっていない状況です。新しいプロジェクトは今一度コミュニティを築き直し、支持を集める必要があるでしょう。
— 昨今、ビットコインなどの価格上昇が目立ちますが、もしブルラン(市場の急騰)が起きた場合、The SandboxやWeb3ゲーム業界にはどのような影響があるとお考えですか?
ボルジェ氏:
現時点では、注目を集めることがすべてだと思います。ビットコインの高騰が再び小売セクターの注目を引きつけるかもしれません。
ビットコインへの資金流入が十分な利益を生み出し、その一部がNFTやエンタメの分野に振り分けられるかどうかは、まだ見守る必要があります。 今年初めには、ETF(上場投資信託)がローンチされ、機関投資家の資金を引き寄せました。しかし、その資金は主にビットコインに集中し、トークン購入やNFTゲーム、Web3ゲームに流れることはありませんでした。 今後ビットコインの価格や世界経済、インフレが安定していけば、一般消費者が再びNFTの世界に戻り、カルチャーやエンタメ、ゲームを楽しみ、支出するようになるかもしれません。

意外なコラボも続々!ボルジェ氏が見出す日本の可能性
— 御社はJR九州とのコラボレーションなど、日本の地方創生に関連する興味深い取り組みもされていますよね。
ボルジェ氏:
そうですね、このプロジェクトの主な目的は、九州への観光を促進することでした。 JR九州はThe Sandbox上に「九州鉄道LAND」を制作し、デジタルの世界で九州地域の魅力を探求し楽しむ機会をユーザーに提供しました。この取り組みは、オンライン上でお客様との新しい接点を築くだけでなく、将来的にリアルなイベントとの融合を通じて、JR九州のファン層を拡大し、九州全体の観光活性化を推進する可能性を秘めています。また、他にも、東京のランドマークを再現するゲームジャムを立ち上げたり、SHIBUYA109とパートナーシップを組んだりもしています。こうした取り組みが、日本文化を海外に押し出しています。


— 日本文化とメタバースとの関係をどう見ていますか。
ボルジェ氏:
日本は自国の文化を世界に広げる力を持っています。食やアニメ、マンガから観光に至るまで、最初に世界へ押し出した国です。これらの文化を輸入し、さらにはコスプレのように再創造する強力な市場が世界中に存在しています。
日本文化の素晴らしさは、例えば鉄道のような身近なものをトランスメディアIPに変換する力です。日本はストーリーやコンテンツ、キャラクターを作り上げる点において、依然として世界をリードしています。
そしてメタバースは、そうしたキャラクターと遊び、自分だけのストーリーを作り上げる素晴らしい手段です。
— 日本のメタバースユーザーの特徴としてはどのようなことが挙げられますか?
ボルジェ氏:
インターネットが早期に普及し、また世界的なゲームが数多く生まれた国として、仮想空間でデジタルコンテンツを楽しむ土壌がすでに出来上がっていたことは大きな特徴といえます。
また、日本にはコレクタブル、アーケードゲームの文化、「集める」文化が根付いています。さまざまなニッチな分野がありますよね。たとえば、好きなアニメのフィギュアを集める人もいれば、衣装の少ないフィギュアを好む市場もあります。こういった「人間らしい特徴」を持つフィギュア市場は日本独特のものです。
もうひとつ注目すべきなのは、日本のコレクターは「推し」への情熱が非常に強く、その収集に多額のお金を費やすことです。ただ、彼らは収集物を転売することはほとんどありません。
The Sandboxのデータを見ても、アバターや土地を長期間保有しているユーザーが多いことがわかりました。最近行ったブートキャンプでは、3年以上保有している参加者が集まっていました。
日本人はデジタル資産に関しても、高い感情的価値を感じているように思います。

— 日本にはファッション、観光、食など、さまざまなIPがありますよね。The Sandboxは多くのIPを取り込んでいますが、日本文化に関して新たに取り組みたい分野はありますか?
ボルジェ氏:
まだ取り組んでいない分野としては、ファッションやスポーツがありますね。スポーツとマンガが交差する分野として、サッカーやバレーボール、テニス、卓球、野球などが足掛かりになるかもしれません。また、ボクシングも人気で、ネット上で大きな注目を集めています。
さらに日本は、バーチャルインフルエンサーのような分野もリードしており、この新しいトレンドには私たちも注目しています。
また、日本の素晴らしい職人技にも触れたいですね。「Made in Japan」の品質は世界中で認められていますし、それが自動車メーカーやライフスタイル製品(時計や衣服など)に反映されています。たとえば、私はポーターバックパックやカシオの時計を持っています。日本の職人技をメタバースでどのように表現できるかは非常に興味深いテーマです。具体的には、トヨタ、オニツカタイガー、ポーターのような日本の象徴的なブランドとコラボし、それらをメタバースに登場させることを検討しています。
これにより、日本のユーザーだけでなく、グローバルなZ世代の興味も引きつけられると考えています。

メタバース成功のカギとは?市場全体の繁栄を見据えるボルジェ氏の視点とメッセージ
— 著名なWeb3プラットフォームのCOOとして、他プロジェクトの動向はチェックしていますか?
ボルジェ氏: もちろん常にチェックしていて、それぞれの強みを理解しています。また、「Open Metaverse Alliance (OMA)」の一員として、他プロジェクトと連携もしていますし、共同プロモーションなども積極的に行っています。
メタバースの成功は決して「勝者総取り」ではないのです。各プラットフォームには独自の専門分野やニッチ市場があります。単一のプラットフォームが目的地となるのはユーザーにとっても望ましくありません。

— メタバースやThe Sandboxがさらなる存在感を持ち、市場を拡大するためのポイントについてどう考えますか。
ボルジェ氏:
メタバースの成功と普及には4つの柱があると思います。The Sandboxもこの視点に基づいて改善を続けています。
1つ目のポイントは、【製品と技術】。メタバース業界の技術は未成熟。SF映画が描いた現代と、2024年時点の現実には大きなギャップがあります。特に、マルチプレイヤープレイの強化、アクセス速度改善、デバイスの統合などが課題です。しかしそんな中でもThe Sandboxはこの2年間で大きく進化し、今では10秒以内にアクセスできるようになりました。グラフィックの品質も大幅に向上しています。
2つ目は【技術が成熟するための時間】です。変革や新発明ばかりが求められがちですが、得意な部分をさらに伸ばし、時間をかけて小さな改善を積み重ねていくことが重要です。
3つ目は【魅力的なコンテンツ】。優れた技術があっても、他にないような楽しいコンテンツがなければ意味がありません。
最後は【エコシステム】です。開発者、スタジオ、コミュニティ、DAOなど、多様なエコシステムを築くことが重要です。
The Sandboxは分散型で、独自のチェーンを持つことにより、膨大なユーザーウォレットやランドオーナー、アバターホルダーを活用できます。これにより、ユーザーはその資産をモバイルゲームや他のゲームで使えるのです。 このボーダーレスな考えこそがメタバースの本来のビジョンであり、市場の拡大につながるポイントだと考えます。

— 最後に、日本のWeb3やメタバースに関わるビジネスパーソンへのメッセージをお願いします
ボルジェ氏:
私たちは、日本の文化をさらにThe Sandboxに取り入れることをとても楽しみにしています。アニメやマンガだけでなく、それを超えた表現も追求しています。
The Sandboxの強みは「ノーコード」機能。コーディングの知識がなくても、誰でもクリエイターになれるのです。才能豊かなクリエイターが多い日本から、この国のユニークな文化や技術を活かし、さらに多くの仲間が加わることを楽しみにしています。
The Sandboxもそのためのプラットフォームを提供し、サポートしていきたいと思っています。

写真右:Pacific Meta 共同創業者・事業開発部長 邵 鴻成
Introduction of Mr Borget:
【 プロフィール】

セバスチャン・ボルジェ(Sébastien Borget)
The Sandbox 共同創設者兼COO 分散型メタバース「The Sandbox」の共同創設者兼COO。2020年、業界の主要500人のメンバーから成る非営利組織「Blockchain Game Alliance」会長に就任。CoinTelegraphによる「暗号通貨業界で最も影響力のある人物トップ100(2022年)」では第4位に選出。
Introduction of The Sandbox:
【The Sandbox(ザ・サンドボックス)について】

『The Sandbox』 は、4000万ユーザーを誇る「The Sandbox」シリーズのブロックチェーンメタバースです。すでに『The Sandbox』には、Warner Music Group、Ubisoft、 Gucci、 The Walking Dead、 Adidas、 Avex, Steve Aoki、 SM Entertainment、 進撃の巨人、SHIBUYA109を含む300以上のパートナーシップを持ち、今後も多くのIPパートナーと提携し、オープンなメタバースと独自の仮想通貨を通じて、Play and earnを軸としたソーシャルエクスペリエンスを提供していきます。『The Sandbox』は、今後もグローバルに慕われるブロックチェーンゲームの開発とゲーム会社とのコラボレーションの開拓に積極的に取り組みます。2022年にTimes誌の「最も影響力のある企業トップ100(TIME100)」に選出。現在、全世界で50万人以上のユーザーが利用しています。
公式ホームページ:https://www.sandbox.game/ja/
※本インタビューは2024年11月23日に実施されたものです。