ステーブルコインとは?仕組み・種類・日本の規制・企業活用をわかりやすく解説

ステーブルコインとは?仕組み・種類・日本の規制・企業活用をわかりやすく解説

ステーブルコインは、ブロックチェーン上で使える「価値が安定するよう設計されたデジタル資産」です。米ドルや日本円などの法定通貨、金などの特定資産に価値を連動させることで、送金・決済・清算・担保管理に使いやすい形を目指します。

企業にとって重要なのは、ステーブルコインを単独の金融商品として見るのではなく、国際送金、BtoB決済、RWA・トークン化資産の決済、オンチェーン金融を支えるインフラとして捉えることです。

たとえば、海外取引先への支払い、トークン化資産の売買、スマートコントラクトによる自動決済、決済待機資金の管理などでは、ステーブルコインが実務設計の選択肢になります。

この記事では、ステーブルコインの基本、仕組み、種類、日本における規制、企業活用、導入時の確認ポイントを整理します。

ステーブルコインとは

ステーブルコインとは

ステーブルコインとは、特定の資産に価値を連動させるよう設計されたデジタル資産です。代表的なものとして、米ドルや日本円などの法定通貨に連動するタイプがあります。なかでも法定通貨建てのステーブルコインは、送金・決済・清算などの用途で活用が検討されています。

企業利用では、以下のような役割で検討されます。

  • ブロックチェーン上の決済手段
  • 国際送金・BtoB決済の手段
  • RWA・トークン化資産の決済通貨
  • スマートコントラクト上の支払い手段
  • オンチェーン金融における担保・清算手段
  • 決済待機資金の管理手段

つまり、ステーブルコインは「価格が安定しやすいトークン」というだけでなく、ブロックチェーン上で金融取引を成立させるための決済レイヤーとして重要です。

なぜ企業での活用が注目されているのか

なぜ企業での活用が注目されているのか

ステーブルコインが企業で注目される理由は、既存の決済・送金・金融取引の課題と接続しているためです。

国際送金では、複数の銀行や決済ネットワークを経由することで、着金までの時間、手数料、照合作業が発生します。ステーブルコインを使うと、ブロックチェーン上で価値を直接移転できるため、送金・決済プロセスを短縮しやすくなります。

また、RWAやデジタル証券などのトークン化資産では、資産の移転と決済を同じ基盤上で扱うことが重要になります。ステーブルコインは、こうしたオンチェーン取引における決済通貨として機能します。

さらに、スマートコントラクトと組み合わせることで、納品確認後の支払い、担保差し入れ、分配、償還などを自動化しやすくなります。これは単なる決済手段の追加ではなく、金融・商取引のオペレーションを再設計する入口になります。

グローバル市場では米ドル建てステーブルコインが主流で、市場シェアの大部分を占めています。一方、日本国内では2023年の改正資金決済法施行を契機に、円建てステーブルコインの開発が本格化しています。今後は、個人向けの少額決済、企業間の大口決済、海外との取引といった用途ごとに、複数のステーブルコインが使い分けられていくと予想されています。

ステーブルコインの仕組み

ステーブルコインの仕組み

法定通貨建てステーブルコインの場合、基本構造は「発行体」「準備資産」「利用者」「償還」の関係で理解できます。

発行体は、法定通貨や短期国債などの準備資産を保有し、その裏付けに応じてステーブルコインを発行します。利用者は受け取ったステーブルコインを、送金、決済、担保、清算などに利用します。必要に応じて、一定の条件のもとで法定通貨への償還が行われます。

企業が確認すべき基本論点は以下です。

  • 発行体は誰か
  • 準備資産は何か
  • 準備資産の開示・監査はあるか
  • 償還条件はどうなっているか
  • どの国・地域で利用できるか
  • どのブロックチェーン上で流通しているか
  • カストディやウォレット管理をどう設計するか

ステーブルコインは「発行されていること」よりも、「どのように裏付けられ、どのように償還でき、どのような体制で流通しているか」が重要です。

ステーブルコインの主な種類

ステーブルコインの主な種類

ステーブルコインは、価値を安定させる仕組みによって分類されます。企業が検討する場合は、名称だけで判断せず、裏付け資産、償還条件、発行体、規制上の位置づけを確認する必要があります。

法定通貨担保型

米ドルや日本円などの法定通貨、またはそれに近い資産を裏付けとして発行されるタイプです。決済・送金用途で検討されることが多く、企業利用では最も理解しやすい分類です。

ただし、同じ法定通貨建てでも、発行体、準備資産、償還条件、法的位置づけは異なります。日本円建てでは後述のJPYCやJPYSCのような事例がありますが、資金移動業型か信託型か、発行体や流通体制、償還条件、送金上限などはそれぞれ確認する必要があります。

暗号資産担保型

暗号資産を担保として発行されるタイプです。担保資産の価格が変動するため、過剰担保や自動清算の仕組みが使われることがあります。

企業が決済・資金管理で使う場合は、担保設計、清算ルール、スマートコントラクト、プロトコル運営体制を確認する必要があります。

コモディティ担保型

金など特定資産への連動を目指すタイプです。金に連動する場合、金価格そのものが変動するため、法定通貨建ての価格が常に安定するわけではありません。

そのため、企業決済よりも、資産性や保全性の文脈で扱われることが多い分類です。

アルゴリズム型

担保資産ではなく、市場メカニズムや供給量調整によって価格安定を目指すタイプです。設計が崩れると価格が大きく乖離することがあります。2022年に発生した「Lunaショック」では、アルゴリズム型ステーブルコインのTerra USD(UST)の価値がドルから乖離し、大きな損失が発生しました。

企業利用では、仕組みの透明性、過去の安定性、流動性、緊急時の対応を慎重に確認する必要があります。企業の決済・資金管理用途では、アルゴリズム型を主要な決済手段として採用するには慎重な検討が必要です。

ステーブルコインの活用場面

ステーブルコインの活用場面

ステーブルコインの価値は、単に「送金できる」ことではありません。企業にとっては、決済スピード、資金効率、取引の自動化、オンチェーン資産との接続が重要です。

国際送金・BtoB決済の効率化

国際送金・BtoB決済の効率化

海外子会社への送金、海外取引先への支払い、グローバルサプライヤーへの決済など、ブロックチェーン上で直接価値を移転できます。従来の銀行送金に比べ、着金までの時間や中継コストを抑えられるケースがあります。ただし、取引先の受け入れ体制、利用するチェーン、入出金経路、規制対応によっては、着金時間や照合作業を短縮できる可能性がある一方で、すべてのケースで安くなる・早くなるわけではありません。

実務では法定通貨との入出金、送金先の受け入れ体制、KYC/AML、会計処理、送金上限を含めて設計する必要があります。

スマートコントラクトによる自動決済

スマートコントラクトによる自動決済

ステーブルコインは、スマートコントラクトと組み合わせることで、条件に応じた支払いを自動化できます。

たとえば、以下のような使い方が考えられます。

  • 納品確認後の自動支払い
  • トークン化資産の売買決済
  • 担保差し入れと決済の連動
  • 収益分配・利払い・償還の自動化
  • サプライチェーン上の支払い管理

人手による確認や照合作業を減らし、取引条件と決済を一体で設計できる点が特徴です。

EC・デジタルサービス決済

海外ユーザー向けのデジタルサービスでは、ステーブルコイン決済が選択肢になります。返金、不正利用対応、本人確認、法定通貨への換金を含めた決済設計が必要です。

RWA・トークン化資産の決済

不動産、債券、ファンド、売掛債権などをトークン化する場合、売買、配当、利払い、償還に使う決済手段が必要になります。ステーブルコインは、こうしたオンチェーン取引の決済・清算手段になります。特にRWAやトークン化資産を扱う事業では、資産の権利移転と決済を同じ基盤上で設計できるかが重要になります。

決済待機資金(フロート)の管理・運用

決済待機資金(フロート)の管理・運用

オンチェーン上で資産を取引する場合、決済に使う資金をあらかじめブロックチェーン上に置いておく必要があります。月末入金から翌月末支払までの間に滞留する待機資金(フロート)は、これまで銀行口座に置かれることが一般的でした。ステーブルコインとトークン化された資産を組み合わせることで、この待機資金をオンチェーン上で効率的に管理できる可能性があります。

また、フロート資金をステーブルコインで保持する場合、ブロックチェーン上のレンディングプロトコルやトークン化定期預金などの運用手段に接続できる設計も存在します。一定の利回りを得られる可能性がある一方で、貸付先の信用リスク、スマートコントラクトの技術リスク、流動性制約、規制・会計上の取扱いなど、追加の確認論点が発生します。企業が検討する際は、運用利回りそのものではなく、フロート管理の効率化・担保流動性の向上を主目的として設計し、利回りは付随する要素として位置づけるのが現実的です。

取引履歴・資金移動の可視化

取引履歴・資金移動の可視化

ブロックチェーン上の取引は、一定の範囲で検証できます。決済履歴、資金移動、担保状況、スマートコントラクト上の処理を追跡しやすくなります。

金融機関や事業会社にとっては、監査、レポーティング、不正検知、取引先管理に活用できます。一方で、取引情報の公開範囲やプライバシー設計も重要になります。

オンチェーン金融との関係

オンチェーン金融とは、送金、決済、担保管理、清算、権利移転などの金融プロセスをブロックチェーン上で実行・記録する考え方です。ステーブルコインは、オンチェーン金融における決済・清算・担保の基盤になります。スマートコントラクトによる自動決済、担保差し入れ、RWA決済、フロート管理も、オンチェーン金融の構成要素として位置づけられます。RWAやトークン化資産が広がるほど、安定した価値移転手段としての重要性は高まります。

金融業界以外での利用検討

金融業界以外での利用検討

ステーブルコインの活用は、金融機関だけでなく、金融以外の業界でも検討が始まっています。たとえば、越境ECやデジタルサービスの決済、サプライチェーン上のBtoB決済、IP・コンテンツ領域でのトークン化資産の決済などで、実用性が議論されています。製造業、商社・卸売業、物流・運輸業など、キャッシュフローが大きく国際送金の頻度が高い業種では、手数料削減と着金の迅速化が特に重要な論点になります。

海外ではすでに本番運用されている事例も複数あります。Visaによる決済基盤への統合、Stripeによる101カ国でのステーブルコイン建て金融口座提供、Linklogisによるサプライチェーン金融での大規模運用、Trip.comでのコンシューマー向け決済導入など、実用化が進んでいます。

日本におけるステーブルコイン規制

日本におけるステーブルコイン規制

日本では、法定通貨建てで発行価格と同額での償還が想定される一部のステーブルコインについて、資金決済法上の「電子決済手段」として整理される枠組みがあります。

重要なのは、すべてのステーブルコインが電子決済手段になるわけではない点です。暗号資産担保型やアルゴリズム型などは、別の規制枠組みで整理される場合があります。

電子決済手段の発行主体として、資金移動業者(1号電子決済手段)と信託会社(3号電子決済手段)が制度化されています。資金移動業型では、制度上・サービス上の取引上限が論点になります。第二種資金移動業型(JPYCなどが該当)は、資金移動業の類型として1件あたり100万円以下という制限がある一方、ウォレット間の送信や決済、発行・償還の上限はサービス仕様として個別に確認する必要があります。信託型には法定の送金上限がありません。この違いは、企業が大口決済やトークン化資産の決済を検討する際に重要な論点になります。

企業が確認すべきポイントは以下です。

  • 対象ステーブルコインの法的位置づけ
  • 発行者のライセンス・登録状況
  • 仲介者・取引業者のライセンス
  • 償還条件
  • KYC/AML対応
  • 利用者保護
  • 送金上限
  • 対象国・地域の規制
  • 準備資産の開示
  • カストディ体制

国際送金やクロスボーダー決済で使う場合は、日本だけでなく、送金先・受取先の国や地域の規制も確認する必要があります。

国内の円建てステーブルコイン動向

国内の円建てステーブルコイン動向

国内でも、日本円建てステーブルコインの発行・流通に向けた動きが進んでいます。

JPYC(資金移動業型・発行中)

JPYCは、資金移動業者が発行する日本円建ての電子決済手段として位置づけられるステーブルコインです。2025年10月に発行が開始され、日本円と1:1で交換可能で、裏付け資産は日本円(預貯金および国債)によって保全されています。比較的利用イメージを持ちやすい一方、資金移動業の類型上、1件あたり100万円以下という制限が論点になるため、企業間の大口決済では発行・償還、送金、決済フローを分けて実務上の制約を確認する必要があります。なお、ウォレット間の送信や決済の上限はサービス仕様として個別に確認が必要です。

JPYSC(信託型・先行提供中)

信託型の日本円建てステーブルコインとしては、SBIホールディングスとStartale Groupが共同開発したJPYSCがあります。JPYSCは、SBI新生信託銀行が発行する信託型の3号電子決済手段で、2026年6月24日に発行され、SBI VCトレードの口座内限定で先行提供が開始されました。

ただし、現時点では外部ウォレットへの移転はできず、パブリックチェーン上での流通は、関係法令や税務実務上の整理、監督当局の確認を経て移行する予定とされています。実務決済、資金管理、クロスボーダー決済、機関投資家向け取引、トークン化資産の決済などが想定されていますが、企業利用では「発行済みか」だけでなく、どこまで流通・決済インフラとして使える状態かを確認する必要があります。

3メガバンク共同発行(信託型・協議中)

さらに、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが、信託型の円建てステーブルコインの共同発行に向けて協議を始めていると報じられており、2027年3月までの実務運用開始を目指しているとされています。三菱UFJ信託銀行を受託者とする信託型の設計で、大口決済や機関投資家向け取引での活用が想定されています。

日本円建てステーブルコインの整理

日本円建てステーブルコインといっても、発行スキーム、償還条件、送金上限、取扱事業者、想定ユースケースは一様ではありません。企業が導入を検討する際は、自社の用途が少額・高頻度決済なのか、大口決済・資金管理・トークン化資産の決済なのかを分けて確認する必要があります。

導入前に確認すべきリスクと設計ポイント

導入前に確認すべきリスクと設計ポイント

ステーブルコイン導入では、技術的に使えるかだけでなく、事業・法務・会計・運用の観点を同時に確認する必要があります。

主な確認ポイントは以下です。

  • 利用目的:送金、決済、RWA決済、担保、資金管理のどれか
  • 発行体:誰が発行し、どのような責任を負うか
  • 準備資産:何で裏付けられ、どのように開示されているか
  • 償還:いつ、誰が、どの条件で法定通貨に戻せるか
  • 規制:自社は利用者か、仲介者か、サービス提供者か
  • ウォレット:秘密鍵、承認フロー、送金上限をどう管理するか
  • 会計・税務:保有、送金、決済をどう処理するか
  • セキュリティ:誤送金、不正送金、スマートコントラクト不具合にどう備えるか
  • 取引先対応:相手方が受け取れるか、社内規程上扱えるか

企業利用では、担当者個人のウォレットで管理する設計は避けるべきです。複数承認、権限分離、監査ログ、インシデント対応まで含めて設計する必要があります。

企業が導入を検討する際の進め方

企業が導入を検討する際の進め方

ステーブルコイン導入は、ユースケースを絞って小さく検証するのが現実的です。

まず、自社が何を実現したいのかを明確にします。国際送金を短縮したいのか、RWA決済を設計したいのか、オンチェーン上の決済待機資金を管理したいのかによって、必要なパートナー、規制確認、システム設計が変わります。

次に、規制・発行体・ウォレット・会計処理を確認します。自社が単なる利用者なのか、決済サービス提供者なのか、発行体に近い役割を担うのかによって、検討すべき論点は大きく異なります。

最後に、限定された範囲でPoCを行います。特定の取引先、金額範囲、国・地域、決済フローに絞り、送金、償還、会計処理、承認フロー、取引先対応まで検証します。

重要なのは、技術デモで終わらせないことです。PoCでは、本番導入に進めるか、どの論点がボトルネックになるか、どのパートナーと組むべきかを判断できる状態にする必要があります。

Pacific Metaでは、ブロックチェーン領域の事業開発・実装支援の知見をもとに、ステーブルコイン、RWA、オンチェーン金融に関するユースケース設計、PoC設計、パートナー選定、実装ロードマップ策定を支援しています。

まとめ

ステーブルコインは、ブロックチェーン上で送金・決済・清算・担保管理を行うための重要な決済レイヤーです。国際送金、BtoB決済、RWA・トークン化資産の決済、オンチェーン金融の実務化において、企業が検討すべきテーマになっています。

一方で、導入には発行体、準備資産、償還条件、規制、ウォレット、会計・税務、社内統制の確認が欠かせません。すべてのステーブルコインが同じ仕組み・同じ規制で扱われるわけではないため、対象となるステーブルコインごとに確認する必要があります。

企業が検討する際は、まずユースケースを明確にし、規制・技術・運用を同時に整理したうえで、PoCから段階的に進めることが重要です。

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のステーブルコイン、トークン、サービス、金融商品の購入・利用・投資を推奨するものではありません。掲載情報は執筆時点の情報に基づくため、最新情報は各発行体・公的機関・専門家の情報をご確認ください。実際の導入や取扱いにあたっては、最新の法令・規制、会計・税務処理、各サービスの利用条件を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

事業者向け
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta