インターオペラビリティとは、異なるブロックチェーン同士、またはブロックチェーンと既存システムの間で、データや資産を検証可能な形でやり取りできる性質のことです。2023年8月には国際送金網のSwiftが、Chainlinkの接続技術を使ってSwiftネットワークとブロックチェーンをつなぎ、異なるチェーン間でトークン化資産を移転する実験の結果を公表しました。

国内でも、ステーブルコインやセキュリティトークンを複数の基盤にまたがって動かす実証が続いています。企業がトークン化資産やステーブルコインを扱うとき、どのチェーンを選ぶか以上に、どうつなぐかが業務設計とリスクを決める段階に入っています。今後はAIエージェントによる決済や資産の移動も、複数のチェーンをまたいで行われることが前提になっていきます。
- インターオペラビリティはチェーン間でデータや資産を検証してやり取りする性質
- 方式の違いは誰を信頼するかの違いとリスクの所在の違い
- 企業の利用は国際送金・資産流通・貿易データの連携が中心
- 導入は接続先と方式の選定から着手し、監査と運用体制まで確認
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インターオペラビリティとは
インターオペラビリティは日本語で「相互運用性」と訳されます。医療情報やIT全般でも使われる言葉で、ブロックチェーンではチェーン同士や既存システムとの接続を指します。日本総研の先端技術リサーチ(2023年7月)は、ブロックチェーンの相互運用性を「異なるブロックチェーン同士を接続し、相互にデータを読み書きできる性質」と定義しています。

この性質が必要になるのは、ブロックチェーンが設計上それぞれ孤立しているためです。Cosmosの接続規格IBCの公式ドキュメントも、チェーンAはチェーンBの状態にアクセスできず、従来の接続は第三者の中継を信頼する必要があったと説明しています。チェーンを複数使う構想では、つなぐ仕組みを別に選ぶ必要があります。
企業や金融機関がインターオペラビリティに注目する理由
Swiftが2023年8月に公表した実験では、ANZ、BNP Paribas、Citi、Euroclear、DTCCなど10数機関が参加しました。模擬のトークン化資産を、同じパブリックチェーン内、異なるパブリックチェーン間、パブリックとプライベートのチェーン間の3通りで移転しています。既存の金融網から複数のチェーンへ指示を出せるかを確かめた実験です。

国内では2021年12月、東京海上日動・NTTデータ・スタンデージ・トレードワルツの4社が貿易決済の実証結果を公表しました。NTTデータが複数のブロックチェーンを連携する技術を提供し、電子B/Lとデジタル通貨を同時に移転できることを確認しています。
どちらの実証も、複数のチェーンが並存する前提で業務を設計している点が共通しています。Swiftの実験はプライベートチェーンとの接続も対象にしており、金融機関の検討は単一のチェーンに絞り込む前提で進んでいません。
インターオペラビリティの仕組みと主な方式
チェーン同士をつなぐ仕組みとは、片方のチェーンで起きた取引を、もう片方のチェーンが正しいものと確かめて受け入れるための手順です。日本総研のレポートは、実装の容易さからチェーン外の仲介者が検証する仕組みが多い一方で、仲介者への信頼を必要としない技術もあると整理しています。方式を分けるのは検証をどこに任せるかという一点です。

| 方式 | 仕組み | 信頼の置き先 | 代表例 | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|
| ブリッジ(ロック&ミント) | 元のチェーンで資産をロックし、先のチェーンで同等のトークンを発行 | ブリッジの管理者・署名者 | 各種ブリッジ、CCIPのLock & Mint | 署名鍵の侵害 |
| 外部検証者型メッセージング | 外部の検証者ネットワークがメッセージを承認 | 検証者の構成 | LayerZero、Axelar、Chainlink CCIP | 検証者の構成次第 |
| ライトクライアント型 | 相手チェーンの状態を自チェーン上で暗号学的に検証 | 相手チェーンのコンセンサス | Cosmos IBC | 実装の複雑さ |
| 共有セキュリティ型 | 中心のチェーンが接続チェーンのセキュリティを共有 | リレーチェーンのバリデータ集合 | Polkadot | 接続できる範囲が限られる |
方式①:ブリッジ型
ブリッジは、元のチェーンで資産をロックし、移転先のチェーンで同等のトークンを発行する方式です。Chainlink CCIPの公式ドキュメントも、トークン移転の方式としてLock & MintとBurn & Mintの2つを用意しています。仕組みが分かりやすい反面、ロックした資産を管理する署名者が攻撃の的になります。

方式②:外部検証者型メッセージング
外部の検証者がチェーン間のメッセージを確認し、承認したものだけを実行する方式です。LayerZeroは、各アプリケーションが分散型検証者ネットワーク(DVN)を選んで自らのセキュリティ構成を設定します。Axelarは、バリデータが分割して持つ鍵で接続先のコントラクトを制御し、一定数以上の承認でミントやメッセージ実行を認めます。どちらも安全性は検証者をどう構成するかで決まり、採用時には検証者の数と選び方を確かめることになります。

方式③:ライトクライアント型
Cosmos IBCは、各チェーンが相手チェーンの状態を追うライトクライアントを動かし、届いたメッセージが相手側で確かにコミットされたかを暗号学的証明で検証します。仲介者を信頼せずに済む点が最大の特徴です。日本総研のレポートの時点(2023年7月)で、Cosmosでは数十のチェーンがIBCで接続していました。

方式④:共有セキュリティ型
Polkadotでは、中心となるリレーチェーンに接続したパラチェーンが、すべてリレーチェーンのセキュリティを共有します。パラチェーン同士はXCMというメッセージ形式で通信し、配送はXCMPが担います。信頼の前提がリレーチェーンのバリデータ集合だけになるため、接続チェーンごとに信頼先を見直す必要がありません。

クロスチェーンやブリッジとの違い
インターオペラビリティは性質を指す言葉で、ブリッジやクロスチェーンはそれを実現する手段や場面を指します。

| 用語 | 意味 | インターオペラビリティとの関係 |
|---|---|---|
| 互換性(コンパチビリティ) | 同じ規格や仕様のまま動作できること | 仕様が違うチェーン同士をつなぐのが相互運用性で、仕様の一致を前提にしない |
| クロスチェーン | 複数のチェーンをまたいで取引や通信をすること | 相互運用性を使って行う行為や場面 |
| ブリッジ | チェーン間で資産を移す仕組み | 相互運用性を実現する方式の1つ |
| マルチチェーン | 1つのサービスを複数のチェーンに展開すること | チェーン同士がつながっているとは限らない |
企業におけるインターオペラビリティの活用領域と事例
企業の利用は、暗号資産の移し替えよりも、決済や資産流通といった既存業務の置き換えとして進んでいます。

活用領域①:国際送金・決済
Swiftの2023年の実験は、金融機関が既存のSwiftネットワークからトークン化資産を動かせるかを確かめたものです。2024年10月には、JCBと富士通がCBDCを使ったブリッジによる相互運用性のホワイトペーパーを公開しました。サーバー管理型とチップ管理型のキャッシュレスサービスが併存する前提で、異なるサービス間の送金と支払いをつなぐ仕組みを論じています。

活用領域②:トークン化資産とステーブルコインの流通
2023年3月、Datachain・三菱UFJ信託銀行・ソラミツは技術提携を始めました。Progmat Coinで発行するステーブルコインと地域銀行の地域デジタル通貨の間で、異なる基盤をまたぐ相互移転(PVP決済、2つの通貨を同時に交換する決済)の実現を目指す計画です。Pacific Metaも戦略的業務提携を結ぶST発行基盤Progmatでは、2026年10月6日にステーブルコインを使ったセキュリティトークンのDvP決済(証券と代金を同時に受け渡す決済)の実証「Project Trinity」でフェーズ2の完了が公表されています。

ステーブルコインの移転では、CircleのCCTPがUSDCを移転元でバーンし移転先でミントします。従来型ブリッジの流動性プールを使わない公式の仕組みで、EURCなどにも拡張されています。
活用領域③:サプライチェーン・貿易データ
2021年の4社の実証では、貿易プラットフォームTradeWaltzと、複数のブロックチェーンを連携するNTTデータの技術を使いました。船荷証券の移転と代金の支払いを同時に行えることを確認しており、書類と決済を別々の基盤で管理したまま連動させる使い方です。公表時点では2023年度中の事業化を目標としていました。

相互運用性に関するよくある誤解
つなぐ技術があることと、安全かつ標準的に使えることは別の話です。

| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| つなげば資産は自動で安全に移る | 安全性は方式と検証者の構成で決まり、接続点が攻撃されると資産を失う |
| 1つの規格に統一されつつある | IBC・XCM・CCIP・LayerZeroなど複数の方式が並存している |
| パブリックチェーン同士だけの話 | Swiftの実験のように、プライベートチェーンや既存の金融網との接続も対象になる |
インターオペラビリティのリスクと設計上の注意点
2022年3月23日、ゲーム向けチェーンRoninのブリッジで、Sky MavisとAxie DAOのバリデータノードが侵害されました。Ronin公式の公表では、173,600ETHと2,550万USDCが流出しています。

リスク①:単一障害点
Roninの事件では、9つのバリデータのうち5つの署名を攻撃者が掌握しました。少数の署名で資産を動かせる構成は、接続点そのものが単一障害点になります。事件後、必要な署名数は8へ引き上げられました。

リスク②:鍵管理と監査
ブリッジ型や外部検証者型では、署名鍵や検証者の運用が安全性を左右します。ブリッジ型は資産をロックする署名者、外部検証者型は検証者の構成が攻撃の的になるため、どの方式でもスマートコントラクトの監査と鍵の保管体制の確認が欠かせません。

リスク③:規制とAML
チェーンをまたぐ資産の移転では、送金経路が追いにくくなります。マネーロンダリング対策やトラベルルールへの対応を、接続方式の選定と同時に確認する必要があります。

インターオペラビリティ導入検討の進め方とチェックリスト
導入検討は、接続先の特定から事業化の判断まで5つの段階で進めます。

- ユースケースと接続先のチェーンや既存システムを特定する
- 方式と信頼の置き先(トラストモデル)を選ぶ
- 規制・会計上の扱いを確認する
- 監査と運用体制を決める
- PoCで事業化の可否を判断する
2の段階では、EthereumやSolana、L2、カストディや署名基盤の選定までを一体で決めることになります。Pacific Metaはこの選定と実装を支援メニューとして提供しており、方式の選択がその後の監査範囲と運用負荷を決めることを前提に検討を進めます。

| 論点 | 確認すること | 確認先 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 接続先と用途 | どのチェーン・システム間で何を動かすか | 事業部門・システム部門 | 接続先と移す資産・データが一覧化されている |
| 方式とトラストモデル | 検証を誰に任せるか、障害時の影響範囲 | 各方式の公式ドキュメント | 採用方式と信頼の置き先を文書で説明できる |
| 規制とAML | 移転する資産の法的区分、トラベルルールの要否 | 法務部門・弁護士 | 必要な登録・届出の有無が判定されている |
| 会計処理 | ロックやミントの際の資産計上の扱い | 経理部門・監査法人 | 仕訳の方針が合意されている |
| 監査と運用体制 | コントラクト監査、鍵管理、障害時の手順 | 監査会社・運用担当 | 監査報告と運用手順書がそろっている |
接続方式の選定は、技術の比較だけでは決まりません。どの資産を動かすかで規制上の扱いが変わり、方式によって業務フローと監査範囲も変わるため、技術・法務・業務の3つを同時に見る必要があり、社内の1部門では決めきれない論点になりやすいところです。検討の進め方は支援内容で確認できます。
Pacific Metaのサービス
ブロックチェーンの事業構想・戦略設計を支援します。
業務課題の特定から適合性判断・PoC設計まで、導入検討の最初の一歩を伴走します。
事業構想・戦略設計サービスの詳細を見るよくある質問
インターオペラビリティとクロスチェーンは同じ意味ですか?
同じではありません。インターオペラビリティはチェーン同士がやり取りできる性質を指し、クロスチェーンはその性質を使って複数のチェーンをまたぐ取引や通信を指します。ブリッジは資産を移す仕組みとして、その性質を実現する手段の1つにあたります。
ビットコインとイーサリアムは直接つながりますか?
直接はつながりません。各チェーンは台帳とコンセンサスが独立しており、相手のチェーンの状態を読めないためです。ビットコインをイーサリアム上で使う場合は、ブリッジなどの接続の仕組みを介します。
社内システムとブロックチェーンをつなぐこともインターオペラビリティですか?
含まれます。Swiftの実験はSwiftネットワークとブロックチェーンの接続を確かめたもので、既存システムとチェーンの接続も相互運用性の重要な対象です。
安全な接続方式はどう見分ければよいですか?
まず、検証を誰に任せているかを確認します。そのうえで、署名者や検証者の数と分散の程度、監査の有無、障害時の対応手順を見比べます。
インターオペラビリティのまとめ
インターオペラビリティとは、異なるブロックチェーンや既存システムの間でデータや資産を検証してやり取りできる性質です。Swiftや国内の金融機関の実証が示すとおり、複数のチェーンが並存する前提での設計が進んでいます。

方式はブリッジ、外部検証者型、ライトクライアント型、共有セキュリティ型に分かれ、信頼の置き先の違いがリスクの所在の違いになります。Roninの事件のように、接続点は攻撃の的になりやすい部分です。
どのチェーンとどの方式でつなぐかは、規制・会計・運用体制と切り離せません。自社の資産やデータをどこまでチェーンに載せるかを決める段階で、技術と制度の両面から検討の筋道を立てます。