アジアの総合デジタル資産グループであるハッシュキーホールディングス(HashKey Holdings)は、シンガポールのデリバティブ取引所アジア・パシフィック・エクスチェンジ(APEX)の全株式取得に向けた検討を行っていると発表しました。同社の完全子会社が主要株主らと法的拘束力のない枠組み合意を締結したもので、金融機関や機関投資家向けの取引執行および清算インフラの強化を目指しています。決済分野のライセンスに加え、資本市場分野の規制基盤を獲得することで、取引からカストディ、清算、決済までを一体的に提供する次世代金融インフラの構築に繋がる取り組みとして注目されています。なお、現時点で正式契約の締結や規制当局の承認取得には至っておらず、買収の実施自体は未定となっています。
非拘束的な枠組み合意の締結と現在の状況
ハッシュキーホールディングスは2026年7月29日、同社の完全子会社であるHKDAG(Singapore)を通じて、APEXおよびその主要株主との間でAPEXの全株式を取得する可能性に関する法的拘束力のない枠組み合意を同年7月22日に締結したことを明かしました。相手方となる主要株主は、APEX株式の50.925%を間接保有するジュ・ユーチェン(ZHU Yuchen)氏です。
今回の発表時点では最終的な取引条件を規定する正式契約は締結されておらず、シンガポール金融管理局(MAS)からの承認も取得していません。このため、買収が最終的に行われるかどうかは未確定の段階にとどまっています。
ライセンス領域の拡大と機関投資家向けインフラの強化
暗号資産やデジタル資産事業を手掛けるハッシュキーグループは、アジア地域を中心に規制に準拠した総合的なデジタル資産プラットフォームの構築を進めているとされています。同社はすでに別法人のハッシュキーテクノロジーサービシズを通じ、MASの主要決済機関(MPI)ライセンスに基づいたデジタル決済トークンサービスを提供しています。これは規制上、決済分野に分類されるサービスです。
これに対して買収対象となるAPEXは、2018年2月にMASの承認を受けたデリバティブ取引所であり、金、銀、パーム油、外国為替のほか、ビットコイン(BTC)などを原資産とする先物および無期限先物を取り扱っています。APEX自体はMASの金融機関ディレクトリにおいて認可取引所(AE)および認可持株会社に分類されており、清算業務を担当する傘下のアジア・パシフィック・クリア(Asia Pacific Clear)は認可清算機関(ACH)として登録されています。これらは決済分野とは異なる資本市場分野のライセンス領域です。
買収が完了した場合、ハッシュキーは決済分野だけでなく資本市場分野の規制基盤を同時に手にすることになります。これにより、取引、カストディ(保管)、支払い、清算、決済までを包括的に網羅した次世代金融インフラの開発が進められ、金融機関や機関投資家に対するサービス能力の大幅な拡充に繋がるものと見られます。
ポイント
- ハッシュキーホールディングスが、シンガポールのデリバティブ取引所APEXの全株式取得に向けた非拘束的な枠組み合意を締結しました。
- 最終的な正式契約の締結やシンガポール金融管理局(MAS)の承認取得には至っておらず、買収の実施は確定していません。
- APEXはビットコイン先物なども扱う「資本市場分野」の認可取引所(AE)および認可清算機関(ACH)のライセンスを保有しています。
- ハッシュキーが保有する「決済分野」の既存ライセンス(MPI)と組み合わせることで、事業基盤の相互補完が期待されます。
- 取引からカストディ、清算、決済を包括する次世代金融インフラを構築し、機関投資家向けサービス能力を強化する試みとして重要視されています。