顧客数1億4,000万人を超える中南米最大のデジタル銀行Nu(ヌー)は、米国での金融サービス提供と、多通貨デジタル口座「Nu Global(ヌー・グローバル)」の段階的な提供開始を9月10日に発表しました。Nu Globalでは米ドル連動型ステーブルコインのUSDCとユーロ連動型ステーブルコインのEURCを活用し、35か国以上との間で手数料無料の送金や受け取りを可能にします。従来の国際送金において平均約6%の手数料や為替マージンが発生している課題に対し、民間企業が発行するステーブルコインをインフラとして組み込むことでコストの解消を図っています。中南米の巨大デジタル銀行がステーブルコインを実用的な送金基盤として本格採用し、グローバル規模での事業展開へ踏み出した事例として注目されます。
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ステーブルコインを活用した多通貨口座「Nu Global」の仕組み
Nu Globalは、複数の国で生活や仕事をする利用者に向けた多通貨デジタル口座サービスです。Nuによると、国境を越えて暮らす人々は世界で3億人を超えており、2025年の国際的な個人送金額は推計約8,000億ドル(約123.4兆円)に達したとされています。一方で、一般的な国際送金では平均約6%が手数料や為替マージンとして失われている実態があり、Nu Globalはこのコスト課題の解決を目指して設計されました。
同サービスでは、利用者が預けた資金が米サークル(Circle)の提供するステーブルコインであるUSDCまたはEURCへと変換されます。中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)ではなく民間発行のデジタル資産を活用する形となっており、35か国以上を対象に手数料無料での送金および受け取りが行えます。
さらに、Nu Globalでは利回り(APY)が付与される仕組みが用意されており、USDC残高には年率3.50%、EURC残高には年率2.20%が設定され、収益が毎日付与されます。サービスには為替レートへの上乗せなしで利用可能なバーチャルのMastercard(マスターカード)が付属するほか、アプリ内ではビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの一部の暗号資産の保有や取引にも対応します。
Nu Globalの提供はまず欧州とラテンアメリカの一部の国・地域から開始され、今後数か月以内にブラジル、コロンビア、メキシコ、米国との統合が予定されています。
提携銀行モデルによる米国展開と銀行認可取得の進捗
NuはNu Globalの立ち上げと並行して、米国市場における直接的な金融サービスの提供も開始しました。米国向けには「Nu Account(ヌー・アカウント)」と「Nu Credit Card(ヌー・クレジットカード)」が提供されます。
米国での展開にあたっては、米連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する提携銀行のリード・バンク(Lead Bank)を通じたモデルが採用されており、Nu Accountの預金も同銀行で保有されます。Nuは2025年9月に米通貨監督庁(OCC)へナショナルバンク認可を申請し、2026年1月に条件付き承認を取得しました。現在は正式な銀行認可に向けた手続きを進めている段階であり、認可手続きと並行して提携銀行モデルを活用することで、先行して顧客獲得やフィードバックの収集を進める計画です。
Nu Accountの預金残高には年率3.50%の利回りが設定され、利用可能残高に基づいて毎日計算・支払いが行われます。今後は一定条件を満たした利用者を対象に、「貯蓄目標(Savings Goal)」に設定した残高のうち1万ドル(約154万円)までの利回りを年率4.50%へ引き上げる予定です。また、国際送金はブラジル、メキシコ、コロンビア向けから開始し、今後数十か国への拡大が予定されています。
同時に提供されるNu Credit Cardは年会費無料で、購入額の1.5%がキャッシュバックされます。こちらも条件を満たした利用者を対象に、キャッシュバック率を2%へ引き上げる計画が示されています。Nuの創業者兼CEOであるデイビッド・ベレス(David Vélez)氏は、今回の米国進出とNu Globalの発表について、ラテンアメリカを中心とした事業からグローバルなデジタルバンキングプラットフォームへと成長するための重要な一歩であると述べています。
ポイント
- 顧客数1億4,000万人超を抱えるデジタル銀行Nuが、米サークル発行のステーブルコイン(USDC・EURC)を預金・送金の基盤として正式に導入した点
- 従来の国際送金で生じる平均約6%の手数料や為替マージンに対し、35か国以上での手数料無料送金とステーブルコイン残高への利回り付与を実現した点
- 米国市場において提携銀行モデルを通じた口座・カード提供を開始し、OCCによる正式なナショナルバンク認可手続きと並行してサービス基盤を構築している点
- 暗号資産(BTCやETH)の取引機能やバーチャルカード決済を統合し、ラテンアメリカ地域からグローバル規模のデジタルバンキングプラットフォームへ展開を拡大している点
