米大手格付け機関のS&Pグローバル・レーティングは、ブロックチェーン上の融資ボールトを対象とした新しい評価手法「ボールト・リスク評価(VRA)」の提供を開始しました。オンチェーン融資ボールト全体の預かり資産は、2024年9月の15億ドルから2026年9月時点で約100億ドルへと、2年間で約6.7倍に急拡大しています。従来の信用格付けとは異なり、運用資産の信用力だけでなく基盤技術のリスクまで網羅的に評価する仕組みであり、伝統金融とDeFi(分散型金融)の橋渡しを担う指標として注目されます。
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資産の質と基盤技術を網羅する6項目の評価体系
VRA(Vault Risk Assessment)が対象とする融資ボールトは、預け入れられた資産をプールし、あらかじめ定めた戦略に沿って運用するオンチェーンの投資商品です。運用方針の設計や管理は「キュレーター」と呼ばれる事業者が担っており、S&PはMMF(マネー・マーケット・ファンド)やプライベートクレジットファンドに近い金融商品と位置付けています。
評価項目は「ポートフォリオの信用の質」「流動性のミスマッチ」「キュレーター」「ブロックチェーン」「プロトコル」「ボールトのセキュリティとガバナンス」の6つで構成されます。運用先資産の質にとどまらず、土台となるブロックチェーンネットワークやスマートコントラクトの技術リスクまで分析範囲に含めているのが特徴です。
評価結果は「AAA(v)」のように、末尾に「(v)」を付けた記号で表示されます。S&Pは、VRAは信用格付けではなく利回り水準への見解も示さないと説明しています。ブロックチェーン上の取引は特定時点における透明性を持つものの、ボールトの戦略やリスクに関する開示は限られてきた背景があり、将来を見据えた分析によってその情報不足を補う方針です。
機関化に対応するS&PのWeb3評価事業の拡大
S&Pグローバル・レーティングのヤン・ル・パレック社長は、デジタル資産の機関化が進むなかで、伝統金融と分散型のイノベーションを橋渡しする独立したリスク評価への需要が高まっていると説明しています。
同社はこれまでにも、ステーブルコインの安定性評価や、DeFiプロトコルとして初となるスカイ・プロトコル(Sky Protocol)の信用格付け、ビットコインを裏付けとする証券化商品の格付けなどを手がけてきました。さらに親会社のS&Pグローバルは2026年9月にスマートコントラクト監査を手がけるOpenZeppelinの買収に合意したほか、データ企業Kaikoへの戦略出資を主導するなど、オンチェーン金融の評価体制を強化しています。個別ボールトに対するVRAの初回評価結果は、後日公表される予定です。
ポイント
- オンチェーン融資ボールト全体の預かり資産は2024年9月の15億ドルから2026年9月時点で約100億ドルへと膨らみ、市場規模が2年で約6.7倍に拡大しています。
- 新評価手法「VRA」は、運用資産の信用力だけでなくキュレーターやブロックチェーン、セキュリティを含む6項目から多角的にリスクを分析する点で注目されます。
- 評価結果は「AAA(v)」などの記号で示され、信用格付けや利回りの見解とは区別されたリスク分析ツールとして位置付けられています。
- S&PはOpenZeppelinの買収合意やスカイ・プロトコルの格付けなど、デジタル資産の機関投資家向けインフラ整備を急速に進めています。
- 個別の融資ボールトに対する初回の評価結果は後日公表される計画となっています。
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