USDSとは、Sky Protocol(旧MakerDAO)が発行する米ドル連動型のステーブルコインです。分散型ステーブルコインDAIの後継にあたり、流通額は2026年8月9日時点で約63.96億ドルとステーブルコイン全体の第3位でした(DefiLlama集計)。ドル建てステーブルコインはAIエージェントの決済まで含む次世代の決済インフラの基軸として企業の関心対象になっており、USDSは発行体企業を持たない分散型の代表例にあたります。
この記事では次のポイントを整理します。
- USDSがドルに連動する仕組みとSky Savings Rate(SSR)
- USDT・USDC・DAIとの構造の違い
- 日本での入手可否と日本法上の扱い
- 企業が検討時に確認すべき論点
本記事は2026年8月9日時点の公開情報に基づきます。
USDSとは
USDSは、Sky Protocolが発行する米ドル連動型のステーブルコインです。特定の企業が銀行に準備金を積む方式ではなく、プロトコルが管理する担保を裏付けとして発行されます。
発行主体のSkyは、DAIを生み出したMakerDAOが改称したプロジェクトです。MakerDAOは2024年8月27日にSkyへのリブランドを発表し、同年9月18日にUSDSとガバナンストークンSKYを始動させました。
DAIは廃止されておらず、現在も並行して流通しています。DAIからUSDSへの交換は1対1の比率で、義務ではなく任意です。
前身のMakerDAOは2017年から稼働してきた、DeFiでも最古参級のプロトコルです。USDSは新興プロジェクトの発行物ではなく、最も長く運用されてきた分散型ステーブルコインDAIを引き継ぐ後継通貨といえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | USDS(Sky Dollar) |
| ティッカー | USDS |
| カテゴリ | ステーブルコイン(米ドル連動) |
| 発行開始 | 2024年9月18日 |
| 発行方式 | 過剰担保型(プロトコルが管理する分散担保) |
| 流通規模 | 約63.96億ドル(2026年8月9日時点・DefiLlama集計) |
| 公式サイト | sky.money |
USDSがドルに連動する仕組み
USDSのドル連動は、法定通貨の準備金ではなく過剰担保(発行額を上回る担保)で支えられています。発行体が銀行口座にドルを積むのではなく、プロトコルが保有する資産の価値を発行済みUSDSより常に大きく保つ設計です。

担保は1つの資産に集中していません。ステーブルコイン、オンチェーンやOTCでの暗号資産貸付、短期米国債、AAA格社債などへ分散されています。Sky公式サイトの表示では、2026年8月9日時点で担保総額143.9億ドルに対しローンカバレッジは106億ドルでした。
USDSを発行する各Vault(担保を預けて発行枠を得る仕組み)には、発行額を上回る担保の保有が義務づけられています。担保価値が清算基準を下回るとVaultは自動オークションにかけられ、売却代金から債務が返済されます。この仕組みで価格は1ドルへのソフトペッグ(緩やかな連動)として維持されます。
つまりUSDSの安定性を支えているのは、発行体の銀行預金ではなく、担保の超過分とガバナンス運営の質です。
Sky Savings Rate(SSR)とは
Sky Savings Rate(SSR)は、USDSを預け入れた保有者が受け取る変動利回りです。預け入れるとsUSDSというトークンを受け取ります。sUSDS自体は1ドルに連動せず、1sUSDSと交換できるUSDSの数量が増えていく形で利回りが付きます。表示利率は2026年8月9日時点で年率3.52%でした(Sky公式)。

SSRの利率は市場の需給で自動的に決まるのではなく、SKY保有者によるガバナンス投票で決定されます。ブロックチェーンの検証作業に参加して報酬を得るステーキングとは別物で、SSRの原資はプロトコルの収益です。預金保険のような公的な保護はありません。
USDSとUSDT・USDC・DAIの違い
同じ1ドル連動のステーブルコインでも、信用の源泉が異なります。USDTとUSDCは発行体である企業が準備資産を保有する法定通貨準備型で、USDSとDAIは中央の発行体を持たず、プロトコルが管理する分散担保で発行される過剰担保型です。

| 比較軸 | USDS | DAI | USDT | USDC |
|---|---|---|---|---|
| 発行主体 | Sky Protocol(分散型プロトコル) | Sky Protocol(旧MakerDAO) | Tether社 | Circle社 |
| 担保構造 | ステーブルコイン・暗号資産貸付・短期米国債・AAA格社債等の分散担保(過剰担保型) | 同一プロトコルの担保に裏付けられる過剰担保型 | 発行体が保有する準備資産(法定通貨担保型) | 発行体が保有する準備資産(法定通貨担保型) |
| 償還・価値維持の仕組み | 担保の自動清算オークションで債務を返済する設計 | USDSと1対1で相互交換が可能 | 法定通貨と1対1のペッグ・100%の裏付けを発行体が説明 | (本記事では確認していません) |
| ガバナンス | SKY保有者の投票 | Sky Protocolのガバナンス | 発行体企業の判断 | 発行体企業の判断 |
| 日本での取扱い | 金融庁登録業者の取扱なし(2026年8月9日時点) | 登録業者9社が取扱(令和8年6月30日現在の金融庁一覧) | (本記事では確認していません) | (本記事では確認していません) |
USDT・USDCとの違い
USDTやUSDCを評価する場合、見るべき対象は発行体企業の信用と準備資産の中身です。Tether公式は全トークンが法定通貨と1対1でペッグされ、準備資産で100%裏付けられていると説明し、流通量を原則日次で公表しています。
USDSでは審査の軸が変わります。発行体企業が存在しないため、担保の構成、清算の仕組み、ガバナンスの運営といったプロトコルの設計そのものを確認することになります。企業がステーブルコインを比較する際は、この評価軸の違いを前提に置くと整理しやすくなります。
DAIとの違い
USDSとDAIは同じプロトコルが扱う姉妹通貨で、役割が分かれています。DAIは2026年8月9日時点でも約48.07億ドルが流通しており(DefiLlama集計)、既存の利用環境を保ったまま使い続けられます。
Sky Savings Rateを反映するsUSDSは、USDSの預け入れを前提とした仕組みです。プロトコルの新機能はUSDSを軸に展開されており、USDSはDAIのアップグレード版という関係になります。
USDSは日本で買えるか・日本法での扱い
2026年8月9日時点で、金融庁登録の暗号資産交換業者26社の取り扱う暗号資産にUSDSは含まれていません(金融庁の登録一覧・令和8年6月30日現在)。国内の取引所を通じた購入はできない状態です。
Sky関連の銘柄がすべて国内で扱われていないわけではありません。ガバナンストークンのSKYはbitFlyer・bitbank・BitTrade・OSL Japan・Binance Japanの5社が、DAIは9社が取り扱っています(同一覧)。ステーブルコインのUSDSだけが取扱の外にある形です。
USDSを入手する経路は、海外の事業者や分散型取引所(DEX)に限られます。こうした取引には日本の暗号資産交換業の利用者保護の枠組みが及ばず、トラブルが起きても国内制度による救済の対象外になります。
日本のステーブルコイン規制との関係も確認しておきます。日本では、法定通貨建てで発行価格と同額での償還が想定される一部のステーブルコインについて、資金決済法上の「電子決済手段」として整理される枠組みが設けられています。根拠となるのは資金決済法第2条第5項で、2026年6月1日には裏付け資産の管理義務などを整備した改正資金決済法が施行されています。
USDSのように暗号資産などを担保とする分散型のステーブルコインは、法定通貨建てで同額償還が想定されるという要件との関係で、この電子決済手段の枠組みには当たらないものと整理されています。個別のサービス設計がどの規制に該当するかは、スキームごとに法律専門家の確認が必要な領域です。
売却益の課税にも触れておきます。暗号資産の売却益は、現時点では原則として雑所得(総合課税)として扱われます。2026年7月に成立した金融商品取引法の改正法に伴い、暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産の売却など一定の取引から生じる所得は、改正法の施行日の翌年1月以降に申告分離課税へ移行する予定です(施行日は本記事の基準日時点で確定していません)。取引時点の取扱いは国税庁の公表資料で確認してください。
国内業者の取扱状況は今後変わる可能性があります。最新の状況を確認する場合の一次情報は、金融庁が公表する暗号資産交換業者登録一覧です。
USDSとSKYトークンの関係
USDSとSKYは同じSky Protocolが発行する別々のトークンで、役割が明確に分かれています。Sky Protocolの主要トークンは次の3つです。
- USDS(米ドルに連動する、決済・保有向けのステーブルコイン)
- sUSDS(USDSを預け入れてSSRを反映する利回り付きトークン)
- SKY(プロトコルの運営方針を決めるガバナンストークン)

SKYは旧MakerDAOのガバナンストークンMKRを引き継いだトークンです。2024年9月のリブランド時に1MKRにつき24,000SKYの交換比率が設定され、MKRからの交換は任意とされています。
SKY保有者の投票で決まる代表例がSSRの利率です。USDSの運営条件はガバナンスを通じて変わりうるため、固定された商品条件として読むことはできません。
エコシステムの全体像を見る際は、独立集計のDefiLlamaがSky系プロジェクトをSky Lending・Sky Money・Sky RWAといった区分で集計しています。USDSを評価するときは、通貨単体の仕組みだけでなく、条件を決めるSKYの統治構造まで確認の対象になります。
USDSの発行規模と採用状況
規模の面では、USDSはすでに主要ステーブルコインの一角にあります。DefiLlamaの集計によると、流通額は2026年8月9日時点で約63.96億ドルで、USDT(約1,830.98億ドル)とUSDC(約722.73億ドル)に次ぐ第3位でした。第4位は姉妹通貨のDAI(約48.07億ドル)です。
| 指標 | 数値 | 基準日 | 集計主体 |
|---|---|---|---|
| USDS流通額 | 約63.96億ドル(ステーブルコイン第3位) | 2026年8月9日 | DefiLlama |
| Sky LendingのTVL | 約56.4億ドル(Sky系合計 約58.4億ドル) | 2026年8月9日 | DefiLlama |
| 長期発行体格付け | B-(アウトルック安定的) | 2025年8月11日公表 | S&P Global Ratings |
| ペッグ維持能力の評価 | 5段階評価で4(constrained・制約あり) | 2025年8月11日公表 | S&P Global Ratings |
TVL(プロトコルに預けられた資産の総額)でも、Sky系は合計およそ58.4億ドルの規模でした。
外部評価では、S&P Global Ratingsが2025年8月11日、USDSの発行体であるSkyに長期発行体格付けB-(アウトルック安定的)を付与しました。DeFiプロトコルへの信用格付けとして初の事例と報じられています。あわせて公表されたステーブルコインの安定性評価では、USDSのペッグ維持能力は5段階評価で4、下位から2番目にあたる「制約あり(constrained)」とされました。S&Pは制約の理由として、預け入れやガバナンスの集中と資本の薄さを挙げています。
流通額の順位が示す普及度と、格付けが示す信用力は別の指標です。規模で第3位にあることと、信用評価が低い等級にとどまることは同時に成り立ちます。企業が判断材料にする場合は両方をセットで読む必要があります。
USDSの5つのリスク
USDSのリスクは次の5つに整理できます。いずれも抽象的な懸念ではなく、保有者や利用企業が実際に損失を被る経路を持つものです。

発行体(ガバナンス)リスク
USDSには経営責任を負う発行企業が存在せず、SSRの利率や運営方針はSKY保有者の投票で変わります。USDS保有者の同意とは別の場所で条件が決まる構造です。
前提にしていた利回りや運営条件が事後に変更され、資金計画が狂う形で影響が現れます。S&Pもガバナンスの集中を格付けの制約要因に挙げています。
準備資産(担保)リスク
ドル連動を支える担保は、ステーブルコインや暗号資産貸付、短期米国債などの資産で構成されています。構成資産の価格下落や信用悪化が急激に進み、清算が追いつかなくなれば、1ドルで換金できる前提そのものが揺らぎます。
過剰担保は損失の緩衝材であって、あらゆる下落を吸収する保証ではありません。
規制リスク
米国では2025年7月18日、決済用ステーブルコインを対象とする初の連邦規制枠組みであるGENIUS法が成立しました。決済用ステーブルコインの制度が整う過程で、USDSのような暗号資産担保型・分散型の扱いは引き続き整理が進む論点です。
日本でも2026年6月1日施行の改正資金決済法で電子決済手段の制度が動いています。規制の帰結しだいで、入手や利用の条件が変わる可能性があります。
スマートコントラクトリスク
発行・清算・sUSDSの利回り反映は、いずれもスマートコントラクト(自動執行されるプログラム)で処理されます。コードに脆弱性や不具合があれば、担保が十分でも預けた資産を失う恐れがあります。
担保の健全性とコードの安全性は、別々に評価すべきリスクです。
カウンターパーティーリスク
担保に他の発行体の資産を含む以上、その発行体側の障害が波及します。実例が2023年3月に起きました。Silicon Valley Bankの破綻でCircleが同行に預けた準備金へアクセスできなくなり、USDCが一時0.88ドル前後まで下落しました。当時のDAIは裏付け資産の約半分がUSDCだったため、DAIも1ドルから一時約0.89ドルまで下落しています(2023年3月11日、CoinGecko集計値をCoinDeskが報道)。
現在のUSDSは当時のDAIと担保構成が異なります。それでも、担保資産を経由した連鎖が現実に起きた事例として確認しておく必要があります。
企業がUSDSを検討するときの確認論点
企業がUSDSに接する場面は、主に次の3つです。
- 海外の取引先やブロックチェーン事業の受け払いで、USDSでの決済を求められるケース
- 海外ステーブルコイン市場の動向調査で、分散型の代表例として比較対象にするケース
- 自社サービスへのステーブルコイン導入検討で、海外型と国内型を比較するケース

検討を進める場合に確認すべき論点は、次の4つに整理できます。
| 論点 | 確認すること | 確認先(一次情報) | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 国内規制との整合 | USDSが国内の登録業者で取り扱われていない前提で、想定用途が日本の規制と整合するか | 金融庁の登録一覧・資金決済法の公表資料 | 想定用途ごとの規制上の扱いを社内文書に整理できている |
| 担保とペッグの健全性 | 担保の構成・過剰担保の水準・清算の仕組み | Sky公式サイトの担保表示・DefiLlama等の独立集計 | 監視する指標と確認頻度を決めている |
| 会計・税務処理 | 保有時・受け払い時の会計処理と課税関係 | 国税庁の公表資料・顧問税理士等の専門家 | 処理方針について専門家の見解を得ている |
| 技術・運用体制 | ウォレット管理とスマートコントラクト接続の運用設計 | 公式ドキュメント・技術監査の公開情報 | 管理体制と障害時の手順が文書化されている |
国内で円建ての決済や発行に踏み込む場合は、海外型のUSDSとは別に、資金決済法上の電子決済手段という国内の枠組みを前提に置く必要があります。海外型の評価と国内枠組みの選択は別々の検討ではなく、同じ意思決定の両面です。
この使い分けには規制・会計・技術の変数が同時に絡むため、社内の一部門だけでは結論を出しにくい構造になっています。論点を分解したうえで、外部の専門知見と突き合わせながら検討を進める価値がある領域です。企業がステーブルコイン活用を検討する際の論点は[ステーブルコイン支援サービス](/service/stablecoin/)でも整理しています。
Pacific Metaのサービス
ステーブルコイン事業を構想から実装・運用まで。
自社でもステーブルコインを保有・運用し、決済まで実践しています。要件が固まっていない段階のご相談も歓迎です。
ステーブルコイン導入支援の詳細を見るUSDSに関するよくある質問
USDSとDAIはどちらを使えばよいですか
用途と重視する条件で選び方が変わります。DAIには長期間の運用実績と既存サービスとの接続の広さがあり、USDSはsUSDS(SSR)などプロトコルの新機能の受け皿になっています。両者は1対1で交換できるため、後からの切り替えも可能です。
USDSは日本の暗号資産取引所で買えますか
2026年8月9日時点で、金融庁登録の暗号資産交換業者26社にUSDSを取り扱う業者はありません。入手経路は海外の事業者や分散型取引所に限られ、国内の利用者保護の枠組みは及びません。取扱状況の非対称(SKYとDAIは国内取扱あり)を含む詳細は本文で整理しています。
sUSDSとは何ですか
USDSをSky Protocolに預け入れた際に受け取る、Sky Savings Rate(SSR)を反映したトークンです。sUSDS自体の価格が1ドルに連動するのではなく、1sUSDSと交換できるUSDSの数量が増える形で利回りが積み上がります。利率はSKY保有者のガバナンスで変動し、預金保険のような保護はありません。
USDSは日本の電子決済手段に当たりますか
日本では、法定通貨建てで発行価格と同額での償還が想定される一部のステーブルコインについて、資金決済法上の「電子決済手段」として整理される枠組みが設けられています。USDSのように暗号資産などを担保とする分散型のステーブルコインは、この枠組みには当たらないものと整理されています。自社の利用形態がどの規制に該当するかの判断は、法律専門家への確認が確実です。
USDSのまとめ
USDSはSky Protocol(旧MakerDAO)が発行する米ドル連動型ステーブルコインで、2017年から続く分散型ステーブルコインの系譜を引き継ぐ後継通貨です。USDTやUSDCのような発行体企業の準備資産ではなく、プロトコルが管理する分散担保と清算の仕組みが1ドルとの連動を支えています。日本では金融庁登録業者の取扱がなく、電子決済手段の枠組みにも当たらないと整理されているため、国内実務では制度の外にある海外型として扱うことになります。
本記事は公開情報に基づく一般的な整理であり、個別の事業スキームに関する法的な判断は、弁護士など専門家への相談で確認してください。企業としてのステーブルコイン活用を検討する際の論点は[ステーブルコイン支援サービス](/service/stablecoin/)にまとめています。