
英国の金融行為規制機構(FCA)が、金を担保とした資産トークン化に関する規制枠組みの構築を進めていることが判明しました。大手銀行などの業界関係者と協議を重ねており、数カ月以内に規制基準に関する方針が示される見通しです。ロンドンが握る金取引の市場シェアを維持しつつ、卸売市場における決済効率の向上やコスト削減を実現する取り組みとして重要な意味を持っています。
卸売市場での担保活用と地域間競争の背景
FCAは、トークン化された金を店頭(OTC)取引をはじめとする卸売市場での担保として活用する枠組みを検討しています。同庁は現物取引を直接規制する権限は持ちませんが、上場商品などを対象に監督のあり方を議論しています。背景には、上海や香港などのアジア拠点が金市場におけるハブを目指して台頭しており、世界の取引の約7割を占めるとされるロンドンの優位性を維持するために、取引基盤の近代化が必要とされている事情があります。英財務省の担当者によると、こうした金融市場のデジタル化を推進することにより、英国経済に最大330億ポンド(約7兆2,600億円)規模の押し上げ効果が見込まれるとされています。
今後のスケジュールと先行する実用化の事例
FCAとイングランド銀行は、5月に公表した卸売金融市場のトークン化に関する共同文書「Call for Input」の意見募集を7月3日に締め切っており、年内には共同ロードマップを公表する計画です。民間での先例としては、HSBCが香港で提供する個人向け金トークン商品の累計取引額が22億ドルを超えており、実用に向けた動きが先行しています。業界団体のワールド・ゴールド・カウンシルも、金のデジタル化によって地金の保管場所や決済の分断といった制約が解消される利点を指摘しており、規制環境の整備を通じた一層の活用が期待されています。
ポイント
- FCAが大手銀行と協議を重ねており、金のトークン化に関する規制方針を数カ月以内に公表する予定です。
- 卸売市場での店頭取引における担保利用が想定されており、リスク低減やコスト削減に寄与する点から注目されています。
- 上海や香港といったアジア市場の台頭に対抗し、ロンドンの金取引市場の優位性を保つ狙いがあります。
- FCAとイングランド銀行は意見募集を経て、年内に共同のロードマップを公表するスケジュールとなっています。
- HSBCでの累計取引額22億ドル超の実績など現場での活用が進む中、公式なルールメイキングの行方に業界の関心が集まっています。