オーストラリア証券取引所(ASX)の株主が、過去に実施されたブロックチェーン技術による決済システム刷新プロジェクトの失敗に関し、元役員や元取締役らの法的責任を追及する方針を明らかにしました。ASXがプロジェクトの進行状況について市場を誤認させる発表を行っていた事実を認めたことを受け、同社のガバナンス体制に対する批判が再燃しています。伝統的な金融市場インフラにブロックチェーンを導入する際のリスク管理と適切な情報開示の重要性を改めて提示する出来事として関心を集めています。
株主代表訴訟の申し立て計画と経緯
オーストラリア証券取引所(ASX)の株主であるロシュビル社(Rosherville Pty Ltd)は、清算・決済システムであるCHESS(Clearing House Electronic Subregister System)のブロックチェーン基盤への刷新失敗に関連し、当時の元役員および元取締役に対して株主代表訴訟を起こすため、連邦裁判所に許可を求める意向をASXに通知しました。
今回の訴訟手続きは、会社側に代わって株主が訴訟を提起する仕組み(法定株主代表訴訟)を用いて行われる予定であり、訴訟の対象は個人である元役員らであって、ASX企業体そのものを対象としたものではないと説明されています。
市場誤認開示とガバナンス追及の再燃
ASXは、2016年よりCHESSを分散型台帳技術(DLT)へ移行するプロジェクトを進めていましたが、複数回の延期や設計上の課題が指摘され、2022年にプロジェクトの停止およびブロックチェーン採用の断念を発表しました。
さらにASXは、2022年2月時点で内部的に重大なリスクが判明していたにもかかわらず、「順調に進行中である」と市場に発表していたことについて、市場に誤解を与えた事実を認めました。これに伴い、市場インフラを担う組織としてのガバナンスや取締役会による監督責任、情報開示の透明性に対する不信感が広がり、今回の株主による元役員個人への責任追及につながっています。
ポイント
- ASXの株主が、失敗に終わったブロックチェーン決済システム刷新を巡り、元役員らを対象とする株主代表訴訟の許可を連邦裁判所に申請する方針を示しました。
- ASXがプロジェクトの進捗に関して市場を誤認させる開示を行ったと認めたことで、ガバナンスや経営責任に対する厳格な追及が行われています。
- 大規模な金融インフラへのブロックチェーン導入において、技術的検証だけでなく誠実な情報開示と監督体制の構築が不可欠であることを示す事例として注目されます。