米上院は米東部時間9月15日午後2時15分(日本時間16日午前3時15分)、暗号資産市場の包括的な規制枠組みを整備する「クラリティ法案(CLARITY Act、H.R.3633)」の本会議審議入りを巡り、手続き採決を行う予定です。同法案は、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄を整理し、デジタル資産取引所やブローカーなどに対する連邦レベルの規制枠組みを設けることを目的としています。今回の採決は法案そのものの最終可否を決めるものではありませんが、本会議での法案審議に進めるかどうかを左右する重要な関門として位置付けられています。
審議入りに向けた手続きの流れと60票のハードル
今回の採決の対象は法案本体ではなく、法案を本会議で審議するための「審議入り動議」に対する討論終結動議(クロージャー動議)です。上院多数党院内総務のジョン・スーン議員が8月の議会休会入り直前に申し立てました。
クロージャー動議の可決には、通常上院議員の5分の3にあたる60票が必要です。この動議が可決された場合でも直ちに法案本体の審議が始まるわけではなく、最大30時間の討論を経て審議入り動議の採決が行われます。審議入り動議が可決されて初めて、法案本体の審議や修正案の検討へと進む仕組みです。
現在、共和党単独では必要となる60票に届かず、一部の共和党議員からも銀行預金への影響などを懸念する声が出ているため、超党派の支持を獲得できるかが審議入りの鍵となっています。
倫理規定とステーブルコイン利回りを巡る対立点
クラリティ法案は2025年7月に米下院で賛成294票、反対134票で可決され、上院銀行委員会においても2026年5月14日に賛成15票、反対9票で可決されました。しかし、本会議審議に向けては与野党間で主に2つの論点が残されています。
1つ目は、政府高官らと暗号資産事業との利益相反を防ぐ倫理規定です。7月22日にシンシア・ルミス上院議員が公表した更新草案には、大統領や副大統領、連邦議会議員らが在任中に対価を得てデジタル資産を発行・スポンサーすることを禁じる条項が盛り込まれましたが、民主党側は規制の範囲や執行体制が不十分であるとして反発しています。
2つ目は、ステーブルコインの利回りや報酬の扱いです。2025年7月に成立したジーニアス法(GENIUS Act)では発行体による利息提供が禁止されましたが、取引所など第三者が提供する報酬の扱いが論点となっています。更新草案では決済や流動性提供など実際の活動に基づく報酬に余地を残しているものの、銀行業界は預金流出につながる懸念から反発しており、共和党議員への働きかけも含めて議論が続いています。
上院は9月14日に休会明けを迎える予定であり、翌15日の手続き採決を経て、これらの争点に関する超党派の合意形成が進むかどうかが焦点となります。
ポイント
- 米上院は9月15日に、暗号資産の包括規制を目指すクラリティ法案の審議入りを巡る手続き採決(クロージャー動議採決)を実施します。
- 本会議審議へ進めるには上院の5分の3にあたる60票が必要であり、共和党単独では届かないため超党派の賛同が不可欠です。
- 主な争点として、政府高官によるデジタル資産発行を制限する倫理規定の範囲や、第三者によるステーブルコイン利回り提供の是非が挙げられています。
- 手続き採決が可決された後も審議入り動議や修正案、法案本体の採決が控えており、連邦レベルの暗号資産規制確立に向けた段階的な進展を図る上で注目されます。