金融機関や大手事業会社が集まる国際カンファレンス「Blockchain Summit 2026 Autumn」が10月5日に東京で開催され、ソニーグループ、三井物産、Toyota Blockchain Lab、OP Labsの担当者が登壇しました。パネルディスカッションでは、世界で約390億ドル(約6兆円)規模に達する現実資産(RWA)のオンチェーン化をめぐり、各社が保有する実業資産をブロックチェーンに載せる狙いや課題が議論されました。登壇各社からは、暗号資産やセキュリティトークンを活用した小口投資機会の提供や、エンターテインメント領域におけるファン体験の創出など、顧客との接点拡大に向けた具体的な戦略が示されました。
株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。
実業資産の小口化による個人投資家層の開拓
三井物産は、2022年に金価格連動型の暗号資産「ジパングコイン(ZPG)」を発行したのを皮切りに、銀やプラチナのトークン化を実施しました。同社はさらに、三井物産デジタル・アセットマネジメントの「ALTERNA(オルタナ)」を通じて、銀座4丁目のホテルをはじめとする不動産へ10万円から投資できる小口投資の機会を月に1、2本のペースで提供しています。これは、日本国内にある約1,000兆円規模の現金資産に向けた新たな投資先の提供を狙った取り組みです。
また、Toyota Blockchain Labでは、自動車の所有権をトークン化して流通させる構想「モビリティ・オーケストレーション・ネットワーク(MON)」のテックペーパーを公開したほか、自動車業界初となるセキュリティトークン(ST)社債を発行しました。発行規模自体はまだ小さいものの、第1弾および第2弾ともに完売に近い需要を集めたとしており、今後は規模の拡大を目指す姿勢を示しています。
エンタメ領域への特化とインフラ基盤の拡充
ソニーグループは、約2年半前からブロックチェーン事業を進めており、暗号資産交換業者の買収や、イーサリアムの拡張基盤であるレイヤー2ネットワーク「Soneium(ソニューム)」の運営を行っています。同社はDeFi(分散型金融)の参加も受け入れつつ、本業の強みを生かしたエンターテインメント関連アプリケーションの展開に注力しています。具体例として、出資先であるYOAKE entertainmentが展開する推し活プラットフォームを挙げ、ファンがブロックチェーンを意識せずに投票やリワード獲得を行える仕組みを日本やアジア独自の強みとして提示しました。
こうした各社のオンチェーン展開を支えるインフラとして、OP Labsはイーサリアムのレイヤー2基盤を提供しています。同社はSoneiumに対してフルマネージド型サービス「OP Enterprise」を提供し、シーケンサーやノードの運用を担うことで企業の開発負担を軽減しています。さらに海外では、韓国のKB証券やSecuritizeとの連携によるMMF(マネー・マーケット・ファンド)などのトークン化証券構想や、決済アプリ「Toss」での即時決済検証など、金融・決済インフラの整備を進めています。
海外動向と流通戦略における課題
海外市場では、香港などを中心にプライベートクレジット(非上場企業向け融資)やプレIPO株(上場前株式)といった多様な資産クラスのトークン化が活発化しています。パネルディスカッションでは、ブロックチェーン技術を用いて資産をトークン化すること自体よりも、それを既存の顧客基盤や市場へどのように届けるかというディストリビューション(販売・流通)の設計が極めて重要である点が強調されました。
カーボンクレジットの事例のように、流動性を維持し、既存のWeb2サービスとの明確な差異を打ち出せなければ、オンチェーン化の持続的な価値を発揮することは難しいとの見解が示されています。
ポイント
- 世界の現実資産(RWA)オンチェーン化市場が約390億ドル(約6兆円)に達する中、国内大手企業が実業資産のブロックチェーン活用を本格化させている点で注目されます。
- 三井物産の貴金属や不動産の小口化投資、トヨタ関連組織によるST社債など、国内の個人資金を開拓する金融アプローチが進展しています。
- ソニーグループが推し活領域に注力するなど、欧米とは異なるアジア独自のIP・エンタメ文脈でのオンチェーン化が差別化要因として示されました。
- OP Labsによるフルマネージド型インフラ提供に見られるように、基盤運用の外部委託により企業がアプリケーション開発や事業戦略に集中できる環境が整いつつあります。
- 資産をトークン化する技術的な実現にとどまらず、継続的な流動性とWeb2との差異を生み出すディストリビューション戦略が成功の鍵として強調されています。
総研プライム
ブロックチェーンを、
徹底的に読み解く。
技術の仕組み、企業の戦略、市場の構造まで。独自の調査・分析で掘り下げる専門レポート。
初月無料で読む