米国の人工知能企業であるアンソロピックは、自社のAI「クロード」が量子コンピュータの計算手順を自律的に設計したと発表しました。この設計には、暗号資産(仮想通貨)の署名技術に関わる計算を効率化する内容が含まれており、従来の最良設計と比較して演算回数を大幅に削減することに成功しています。現在の量子コンピュータの規模は暗号解読に必要な推計値を大きく下回っているものの、AIによるアルゴリズム最適化が量子技術の実用化を加速させる事例として関心を集めています。
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暗号解読の要となる「点の加算」を53時間の作業で効率化
ビットコインやイーサリアムでは、取引の署名に楕円曲線暗号が使用されています。現在のコンピュータでは公開鍵から秘密鍵を現実的な時間で逆算することはできず、これによって資産の安全性が保たれています。一方で、十分な規模を持つ量子コンピュータが実現した場合には逆算が可能となり、第三者が資産を不正に移動できる状態になるとされています。この逆算処理では楕円曲線上の「点の加算」と呼ばれる計算が反復して実行され、計算コストの大半を占めています。
現在の量子コンピュータが備える量子ビット(通常のコンピュータのビットに相当する最小単位)は数百から数千個にとどまっており、実用的な計算を行うためには量子ビット数や演算回数を削減する設計が不可欠です。アンソロピックは平易な文章で仕様を与え、採点プログラムを用いてクロードに設計案の改良を繰り返させました。その結果、ほぼ人手を介さない53時間の作業で新方式が導かれ、従来の最小設計と比較して量子ビット数が12パーセント増加したものの、演算回数は17分の1に削減されました。また、今回設計された8種類のうち残る7種類の手順でも、量子ビット数と演算回数の双方が従来設計より減少し、改善幅が10倍以上に達した例もありました。
暗号解読への直接的影響とAIによるハードウェア設計の可能性
今回の発表において、アンソロピック自身は仮想通貨に対して直接言及しておらず、暗号を解読するために必要な量子コンピュータの規模についても示していません。グーグルが発表した推計では、ビットコインの署名暗号を解読するには50万個未満の量子ビットが必要とされていますが、現在の量子コンピュータの規模はこれに遠く及ばず、現時点で暗号の解読が実現しているわけではありません。
ただし、アンソロピックは今後の展望として、量子コンピュータを構成する各部品をAIが一括して最適化し、特定の問題に特化した量子コンピュータ全体を自律的に設計できる可能性があると指摘しています。ハードウェアとアルゴリズムの双方でAIによる効率化が進むことで、将来的な暗号解読技術の研究や耐量子暗号への移行議論に影響を与える可能性があります。
ポイント
- 米アンソロピックのAI「クロード」が、量子コンピュータの計算手順を自律的に設計し、演算回数や量子ビット数を大幅に削減したと発表しました。
- ビットコインやイーサリアムの署名暗号解読に関わる「点の加算」において、人手をほとんど介さず演算回数を従来の17分の1に削減した設計を導いた点で注目されます。
- 現在の量子コンピュータは数百から数千量子ビット規模であり、ビットコインの暗号解読に必要とされる50万個未満という推計値を大幅に下回っているため、直ちに脅威となる状況ではありません。
- 今後はAIが量子コンピュータの部品を一括最適化し、特定用途向けの量子コンピュータ全体を設計できるようになる可能性があると示されています。
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