仮想通貨やNFTのことを調べる際によく出てくるのが「DAO」という単語です。
聞いたことはあっても意味がよく分からないという方も多いでしょう。
今回Pacific Meta マガジンでは、DAO(ダオ)について説明をおこないます。
この記事の内容は以下の通りです。
- DAOの概要について説明
- DAOの特徴・仕組みについて
- DAOのメリットとデメリットについて
- DAOの活用事例について
最近流行りのWeb3.0を説明するうえでも欠かせない単語となっています。
段階を踏んで「DAOとは何か」っていうところから説明するので、初心者の人にも分かりやすいはずです。
丁寧に説明していきますので、一つずつ理解していきましょう。
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DAOとは
DAOとは、「Decentralized Autonomous Organization」の略で、日本語では分散型自律組織と訳されます。
少し分かりやすい言葉で言うと、参加者一人ひとりが意思決定をおこないながら管理・運営をする組織という意味合いを持ちます。
このDAOは、会社のような管理者がいる中央集権型の組織と比較されることが多いです。
上から指示を受けて動くのではなく、自分の考えで各自が動くという点において、DAOは従来の会社組織とは対照的な存在と言えます。
DAOの歴史を見ていくと、最初はDAC(Decentralized Autonomous Company)と言われて企業のみに使われていた概念でした。
ただ、時が経つにつれて企業以外の組織・集団に対しても使われるようになり、定義の幅が広がりました。
また、DAOの考え方は仮想通貨とも繋がりがあり、ビットコインの仕組みを起源にしているとも言われています。
このあたりを深掘りしたい方はブロックチェーン技術の仕組みについて調べてみると良いでしょう。
DAOの特徴・仕組み
会社のような中央集権型の組織と対照的に扱われることが多いDAO(分散型自律組織)には、どういった特徴があるのか具体的に見ていきましょう。
DAOの大きな特徴は以下の通りです。
- 中央管理者がいない
- 権限はガバナンストークンによって決まる
- 匿名性がある
もちろんプロジェクトを立ち上げる人や資産を管理する人はいますが、DAOの運営はスマートコントラクトと呼ばれるシステム・プログラムによっておこなわれます。
スマートコントラクトは、事前に設定した契約条件を満たすことによって意思決定が自動でされるルールになっており、特定の個人によって方針を転換することはできません。
中央管理者がいない状態でのDAOの意思決定は、参加者の持つガバナンストークン(仮想通貨)によっておこなわれます。
プロジェクトが始まる際にガバナンストークンは分配・販売され、参加者はガバナンストークンを所持することで提案や投票をする権利を有することとなります。
そして、意思決定をするDAOの参加者においては匿名性が保証されます。
身分や国籍などは関係なく投票権を持つため、平等性も維持されます。
DAOのメリットとデメリット
DAOを利用する際の利点やリスクについても見ていきましょう。
特徴と一部かぶる内容もありますが、利用者から見たメリット・デメリットを中心にお伝えします。
メリットだけではなく、デメリットもきちんと理解してからDAOを活用するようにしましょう。
DAOのメリット
DAOを利用する主なメリットは以下の通りです。
- 匿名性があり参加者は全て平等
- 運営のハードルがあまり高くない
- 透明性がある
- 権利が独占されない
利用者は匿名でDAOに参加することができ、国籍や立場などによらない平等な扱いを受けられます。
また、ガバナンストークンを所持することで投票や提案の権利を得ることが可能です。
運営側の立場においては、仕組みを理解すれば会社よりも手軽に立ち上げられることも大きなメリットです。
DiscordやTwitterなどのSNSを利用してチームを立ち上げるやり方が一般的になりつつあるため、資金力よりも発信力が大事になってくるでしょう。
透明性という観点では、スマートコントラクトはオープンソースなので誰でも仕組みの確認ができます。
履歴は全てブロックチェーン上に残って過去の内容をたどることができるうえ、特定の人物だけが意思決定をおこなうことはできないので信頼性も高く維持されます。
株式会社であれば創業者やグループ会社など内部の人間が情報を握っていることもありますが、DAOにはそういったことがありません。
プロジェクトを立ち上げた人も参加者の一員として振る舞うことになるため、権利の独占が発生する心配も少ないです。
DAOのデメリット
ここまではDAOの良い側面を中心にお伝えしてきましたが、当然ながら中央集権型の組織と比較した際の問題点もあります。
代表的なデメリットを見ていきましょう。
- 資金力が無いと発言権が弱くなる
- 収入・報酬は保証されない
- 意思決定に一貫性が無くなる
- セキュリティ面が万全ではない
ここまでDAOの平等性について記載してきましたが、平等とは言っても資金力のある人が強いことは否定できません。
ガバナンストークンの保有数によって意思決定への影響度合いが変わるため、集団の中でもある程度限られた人たちが実権を握るようなケースも少なくないでしょう。
また、DAOのために資金を提供しても、見返りがあるとは限りません。
参加者全員が共倒れになるようなプロジェクトも多く、投資にはリスクが付きまといます。
さらに、残念ながら最初から詐欺を目的にしているプロジェクトも存在するのが実情です。
誰でも確実に儲けられるような仕組みをうたっている場合は特に注意しましょう。
意思決定においては、全体の意見を集約する必要があるので方針が決まるまでに時間がかかります。
ちょっとした要因で参加者の意見が違った方向に傾くため、不安定な側面が大きいです。
最後に、これはDAOのデメリットというよりもプラットフォームであるブロックチェーンや仮想通貨にも言える問題ですが、ハッキングなどのセキュリティリスクがあります。
DAOという枠組みやブロックチェーンなどのシステムは法整備もまだ十分ではないので、トラブルが発生する度に都度対応するような形になっていて、何らかの被害を受けた場合に100%資金が戻ってくる補償もありません。
DAOの活用事例
続いては、DAOを活用した具体的な事例を紹介します。
最近ではAragonのように、DAOのシステムを個人でも構築できるツールが登場しており、活用事例が一気に増えています。
Aragon公式ページ
Aragon | Build Better, Together
自分で組織を立ち上げるとなると、会社を興すような大変さがあると思いがちですが、仕組みをきちんと理解すれば手の届かない難しさではないでしょう。
今後はプロジェクトの事例がさらに増えていくことが予想されます。
DAOの成功例
現時点でもDAOの事例は数え切れないほど増えているので、ここでは簡単に概要を紹介します。
公式ページへのリンクを載せているので、興味のある方はチェックしてみてください。
MakerDAO
Maker(メイカー)DAOは、仮想通貨を預け入れることで安定性のあるステーブルコインDAI(ダイ)を発行してもらえるプロジェクトです。
DAOとしては古参でイーサリアム上に構築されました。
NinjaDAO
Ninja(ニンジャ)DAOは、NFTコレクション「Crypto Ninja」の運営組織が始めたプロジェクトです。
Crypto Ninjaは二次創作の制限が緩いことでも有名で、NFTの関連各所でコンテンツが盛り上がりを見せています。
NounsDAO
Nouns(ナウンズ)DAOは、毎日1つのNFTアートを自動的に生成し続けるNFTプロジェクトです。
生成されたNFTは都度オークションがおこなわれており、日々所有者が増え続けています。
公式サイトはこちら
Nouns DAO
Friends with Benefits
Friends with Benefits(フレンズ ウィズ ベネフィッツ)DAOは、DJ・起業家のTrevor McFedries(トレバー・マクフェドリーズ)氏が立ち上げたクリエイターのためのDAOです。
デジタル空間と実世界の両方で活動しているのが特徴的で、リアルで開催されたイベントも大きな盛り上がりを見せています。
公式サイトはこちら
Friends With Benefits (fwb.help)
KlimaDAO
Klima(クリマ)DAOは、環境保護活動家や起業家などをターゲットに、気候変動に関する問題の解決を目指すDAOです。
具体的には「カーボン・クレジット」をより効率化することなどを目的にしており、脱炭素社会に大きな影響を与えそうなプロジェクトとなっています。
※カーボン・クレジット:CO2など温室効果ガスの排出削減量を、企業やプロジェクトとの間で売買できるようにする仕組み。
公式サイトはこちら
KlimaDAO
CityDAO
City(シティ)DAOのプロジェクトでは、ブロックチェーン上の土地が現実世界の土地区画とリンクしています。
NFTを購入すると実際の土地がセットになっており、都市運営における所有権や意思決定などの手続きをデジタル上で実現可能にしているのが大きな特徴です。
公式サイトはこちら
CityDAO
DAOの失敗例
DAOが現在のように発展するまでには、いくつかの失敗事例もありました。
その代表的な事例がThe DAO事件です。
こちらの事件は、ビットコインやイーサリアムが盛り上がりを見せ始めた2016年6月に発生しています。
The DAOはイーサリアムプラットフォーム上の投資組織であり、利益が上がれば投資者にDAOと呼ばれるトークンを分配する予定でした。
しかし、このプロジェクトはイーサリアムによる資金調達(ICO)をおこなっている途中、バグの脆弱性をつかれたことにより当時の価値で約52億円分のイーサリアムが流出します。
リカバリーにおいてはコミュニティの意思決定もかなりの紛糾をおこし、この事件によってしばらくイーサリアムの発展が停滞したとも言われています。
日本におけるDAOの事業
ブロックチェーンなどに関する動きが遅れていると言われる日本においても、DAO事業が出始めています。
その一つであるMedia(メディア)DAOは、下記のミッションを掲げて活動中です。
1. 『時代の針を早く先に進める』(Crypto領域の大衆化を目指しWEB3時代へ)
2. 『世界規模のプロジェクトを企画し続け、日本と世界のハブになる』
3. 『世界トップシェアのクリプト系メディアをDAOで作る』引用:MediaDAO公式サイト
クリエイターを巻き込んでのアートフェスやチャリティイベントなどを実施しており、今後の活動にも注目が集まります。
MediaDAOの公式サイトはこちら
MediaDAO (media-dao.net)
DAOについてまとめ
今回Pacific Meta マガジンでは、DAO(分散型自律組織)について以下の内容をご紹介しました。
この記事のポイントを改めて整理しましょう。
- DAOは日本語で「分散型自律組織」と訳され、参加者一人ひとりが意思決定をおこないながら管理・運営をする組織、という意味合いを持つ
- DAOの大きな特徴としては「中央管理者がいない」「権限はガバナンストークンによって決まる」「匿名性がある」ことが挙げられる
- DAOの主なメリットとしては「匿名性があり参加者は全て平等」「運営のハードルがあまり高くない」「透明性がある」「権利が独占されない」といったことが挙げられる
- 一方でデメリットとしては「資金力が無いと発言権が弱くなる」「収入・報酬は保証されない」「意思決定に一貫性が無くなる」「セキュリティ面が万全ではない」などが挙げられる
- DAOの活用事例は急速に増加しており、日本でも数々の事業が立ち上がっている
DAOの使い方や目的は様々ですが、利用する場合にはメリット・デメリットをよく頭に入れてから動くようにしましょう。
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