国内の大手・中堅不動産会社でDXや新規事業を担当されている方の中には、ブロックチェーンやNFTの概念は理解していても「実際にどう不動産に活用すればいいのか?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
投資家需要はあるものの、登記制度や金融商品取引法との整合性、技術リスクなどハードルを感じる場面は少なくありません。
今回、Pacific Meta Magazineでは、不動産NFTについて以下の内容を紹介しています。
- 「不動産NFT」の定義や市場動向、不動産投資や小口化の事例
- スマートコントラクトによる権利移転の基本仕組み
- メリット・リスク・法規制と税制への対応ポイント
- 国内外のユースケース・成功事例と学び
- ガバナンスやPoC設計に役立つ実務的なアドバイス
最後まで読むことで、自社でのビジネス活用検討を進めるための具体的な知見が得られます。
ぜひ最後までご覧ください。
「不動産NFT」とは?
「不動産NFT」とは、土地や建物などの不動産に紐づく所有権や利用権をブロックチェーン上のNFTとして表現する新しい仕組みです。
不動産投資においては、物件の小口化と高い流動性が期待できるほか、スマートコントラクトを活用することで取引プロセスを効率化できる点が注目されています。
海外の調査会社が示すデータによれば、不動産をデジタル証券やNFTとしてトークン化する市場は今後数兆ドル規模に成長する可能性があるとされています。
実際、日本国内でも宿泊権やシェア別荘をNFT化した事例が増えており、大手不動産会社が事業化を検討する動きも始まっています。
また、不動産小口化の波は国内クラウドファンディングや不動産STO分野にも波及しており、NFTを用いた売買事例や法的枠組みの整備も進みつつあります。
「不動産NFT」の仕組み
「不動産NFT」のベースとなるのは、ブロックチェーン上に自動契約を実行するスマートコントラクトを配置し、所有権(もしくは利用権)のトークンを発行する仕組みです。
購入者はウォレット経由でNFTを取得し、購入と同時にブロックチェーン上でデジタル証書が移転します。
これにより現実世界の権利関係を反映した証明が記録される形になります。
ただし、日本の不動産登記制度ではNFT移転だけで登記簿が書き換わるわけではありません。
そのため、信託受益権や合同会社持分と紐づけるなど、法的裏付けを整えたうえでNFTを扱う事例が増えています。
今後、金融商品取引法や不動産特定共同事業法の適用範囲を踏まえたスキーム構築が鍵となるでしょう。
「不動産NFT」投資のメリットとビジネス機会
「不動産NFT」のメリットとしては、まず投資の小口化によるハードル低下と、ブロックチェーン活用による流動性向上が挙げられます。
グローバル投資家の参入が容易になり、国内外問わず不動産投資の範囲が広がることで新たな資金流入を期待できます。
また、スマートコントラクトにより売買と決済が一体となり、仲介や書面手続きに要するコストを大幅に削減できる可能性があります。
事務作業の自動化は、既存の不動産業務におけるDX推進にもプラスに働くでしょう。
実際に、三井不動産や東急不動産といった大手もPoCレベルでNFT技術を検討しており、顧客体験向上や流通プラットフォーム構築に向けた取り組みが進み始めています。
「不動産NFT」のリスク・デメリットと関連法規・税制
一方、「不動産NFT」には法規制やセキュリティ面のリスクも存在します。
例えば、単純に「NFTを移転すれば法的に所有権も動く」というわけではなく、登記手続きとセットで実施するスキームを構築しないと、第三者への対抗要件を満たせない可能性があります。
さらに、証券性が認められる場合は金融商品取引法や不動産特定共同事業法の許認可が必要になり、該当の登録や届出を怠ると違法リスクが発生します。
税制面では、NFTの売却益が雑所得や譲渡所得扱いになるなど複雑な計算が伴い、投資家が確定申告を怠ると思わぬ追徴課税につながるケースもあります。
詐欺や秘密鍵の紛失といった技術面のリスクも常に存在するため、ウォレット管理や運営主体の信頼性チェックは欠かせません。
「不動産NFT」の国内外ユースケース・成功事例
国内外では、すでにいくつか実用段階の「不動産NFT」事例が登場しています。
ここでは代表的なものを紹介し、実際にどのような成果や学びがあったのかを見てみましょう。
NOT A HOTEL:宿泊権のNFT化
NOT A HOTELは、日本国内の別荘や宿泊拠点をNFT化した「年間宿泊権」を販売している事例です。
ブロックチェーン上のトークンを保有することで、特定の日数分の宿泊利用が可能になり、従来の会員権より流動性が高い点が注目を集めました。
年間宿泊分の予約権をNFTとして譲渡できる仕組みを整備し、前払式支払手段の枠組みに基づきながらも譲渡が簡単に行える点が大きな特徴となっています。
今後は海外展開やNFT保有者コミュニティの拡大など、さらなる事業拡大が期待されています。
Lead Real Estate:高級マンションのNFT化

Lead Real Estateは、高級マンションを複数のNFTに分割し、小口投資家へ販売するモデルを実施しました。
投資家は少額から高級物件へ参入できるメリットがあり、同社はスマートコントラクトを活用した賃貸管理や収益分配なども検討しています。
法的には不動産登記とNFTの管理を分離しており、投資家はNFT所有によって運用益をシェアする仕組みです。
日本国内での事業実績をベースに、今後は海外投資マネーの呼び込みやさらなる開発案件へのNFT展開が視野に入っています。
Propy:不動産取引のNFT化プラットフォーム
Propyはアメリカのスタートアップで、住宅や商業物件の売買をオンチェーンで完結させるプラットフォームを提供しています。
物件ごとにLLCを設立し、その持分をNFT化して取引することで、迅速な所有権移転を実現している点が特徴です。
すでに複数の住宅がNFTで売買されており、規制当局とも連携しながら法的にも透明性を確保する仕組みを進めています。
Propyの動きは、今後米国や欧州における不動産ブロックチェーン化の標準モデルの一つになると期待されています。
Roofstock:現物不動産のNFT販売

Roofstockは米国の不動産投資マーケットプレイスで、NFTを使った住宅売買事例を実際に成立させました。
合計数千万円規模の一戸建て住宅を数クリックで購入できたとして話題を呼び、タイトル保険付きのNFT取引の安全性をアピールしています。
購入後の保有者は、賃貸運用による収益を得ることも可能で、短期間で投資の出口を探せる流動性の高さが魅力です。
今後は複数州の物件へ拡大し、さらなるユーザー増とサービス多角化を図る見込みです。
「不動産NFT」の始め方:ウォレット準備とプラットフォーム選定
「不動産NFT」を投資・導入する際は、まずウォレットを作成し、取引に必要な暗号資産やステーブルコインを準備します。
MetaMaskなどのウォレットを使う場合、秘密鍵管理には特に注意が必要です。
次に、対象物件を扱うプラットフォームを選定します。
OpenSeaのような一般NFTマーケットプレイスから、RealTや国内の不動産特化型クラウドファンディングまで選択肢は増えています。
比較のポイントとしては、(1)法規制やKYC対応の有無、(2)手数料やガス代の負担、(3)サポート体制、(4)取扱物件の信頼性・実績、などを挙げられます。
不慣れなうちは国内のサービスから始め、慣れてきたら海外プラットフォームも活用すると安全面で安心でしょう。
「不動産NFT」のガバナンス・セキュリティとコンプライアンス
「不動産NFT」を運営・管理するには、スマートコントラクトのセキュリティ監査や鍵管理の厳密化が不可欠です。
高額取引が想定されるため、ウォレットの二段階認証やハードウェアウォレットの利用も検討しましょう。
また、複数の投資家が物件を共有する場合は、管理組合やDAO的なガバナンスモデルを取り入れることがあります。
NFT保有者同士の合議や投票システムを構築することで、物件運営の意思決定を透明化できる可能性があります。
さらに、金融商品取引法や不動産特定共同事業法、資金決済法への適合性を常にチェックすることも大切です。
不動産をファンド化する場合は、有価証券としての開示義務や資格登録が求められるケースもあります。
これらを怠ると、知らず知らずのうちに違法行為を行ってしまうリスクがあるため、事前に専門家の意見を得ながら慎重に進めるのがベストです。
「不動産NFT」の今後はどうなる?
「不動産NFT」は短期的には小口投資や宿泊権ビジネスでの実用が進むとみられます。
中期的には登記情報とブロックチェーンの連携が進み、不動産STOやセキュリティトークン市場の拡大とともに規制が明確化するでしょう。
長期的には、現実の不動産登記がスマートコントラクトと連動する世界も期待されています。
必要書類や契約手続きの大半が自動化され、従来以上に流通速度が高まるかもしれません。
また、メタバース上の仮想不動産とリアル物件が連動するサービスも増える見込みです。
バーチャル上の土地運用が実世界での収益機会と結びつく事例が今後さらに登場するでしょう。
「不動産NFT」についてよくある質問
ここでは、不動産NFTについてよくある質問とその答えを紹介していきます。
Q1:「不動産NFT」の法的な位置づけはどうなりますか?
A:基本的には不動産自体の登記とは別にNFTで権利のデジタル証明を行うイメージです。
所有権を表す場合は投資スキームとして金商法の適用を受ける可能性が高いです。
利用権であれば前払式支払手段になる場合があります。
Q2:税制上の取り扱いはどうなるのでしょうか?
A:譲渡時に利益が出れば所得税の対象となり、個人の場合は雑所得や譲渡所得などに区分されます。
法人が保有する場合は法人税として扱われるため、詳細は税理士や会計士のアドバイスを受けるとよいでしょう。
Q3:小口化手続きの流れが知りたいです。
A:まず物件を保有する法人や信託を設立し、その持分や受益権をNFT化します。
募集方法が金融商品に該当する場合は登録が必要になりますので、事前に行政機関に確認するのが通例です。
Q4:実例を見る限り投資しても大丈夫でしょうか?
A:事業者や物件次第です。
詐欺リスクや流動性リスクもあるため、運営体制や監査状況、ホワイトペーパーをしっかり確認した上で検討することが大切です。
「不動産NFT」についてまとめ
今回、Pacific Meta Magazineでは、「不動産NFT」について以下の内容について紹介してきました。
- 「不動産NFT」の定義や市場動向、法規制上の留意点
- スマートコントラクトによる権利移転の仕組みと特徴
- 小口化・流動性向上などのメリットとリスクの両面
- 国内外の成功事例と学べるポイント
- 導入の手順やガバナンス・セキュリティ確保の重要性
ブロックチェーンと不動産を組み合わせることで、これまでの投資や権利管理の常識が大きく変わりつつあります。
登記や書面手続きに代わるデジタル移転の可能性は広く、将来はより効率的な取引が当たり前になるかもしれません。
ただし、現状では法的スキームや税務リスクへの慎重な対応が必須であり、導入には専門知識や実証実験を通じた検証が求められます。
今から準備を始めることで、市場が本格化したときに先行者メリットを得られるでしょう。
ぜひ自社のPoC案件やビジネスモデル設計のヒントとしてお役立てください。
PoCやプラットフォーム選定でお悩みの方は、実績あるコンサル企業や法律事務所と連携し、プロジェクトを具体化してみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。