米ステーブルコイン発行大手のCircleが、独自のレイヤー1(基盤となる独自のネットワーク)ブロックチェーン「Arc」を中心とした4層の金融スタックの構築を進めています。これは、従来の「USDC発行体」という枠組みを超え、広範な経済オペレーティングシステムとしての地位を確立するための戦略とされています。一方、競合であるTetherのステーブルコイン「USDT」は依然として約1840億ドルの時価総額を維持して市場を支配しており、Circleがこの牙城にどのように挑むかが注目されています。
Circleが構築する「4層の金融スタック」の全容
Circleが「経済オペレーティングシステム」と位置づける新チェーン「Arc」は、1秒未満での決済や、USDCで支払われる予測可能な手数料、選択可能なプライバシー機能などを特徴としています。このArcを中心とした4層の金融スタックは、以下のような構成要素を含んでいると報じられています。
・ベースチェーン:USDCやEURC、利回り付きのUSYCなどのデジタル資産が位置する最下層。
・開発者向けプロダクト:ウォレットや、チェーン間をシームレスに繋ぐCCTP(クロスチェーン・トランスファー・プロトコル)などのツール群。
・Circle独自のアプリ:MintやStableFXなどのアプリケーション。
また、CircleはOCC(米通貨監督庁)から全米信託銀行としての最終承認を得ており、規制面での信頼性も強みとしているとされています。
伝統金融大手の参入と巨額の資金調達
CircleのArcテストネットは2025年10月のローンチ以降、100社以上の企業が参加しているとされています。その中には、Goldman Sachs、Mastercard、Visaといった伝統的な金融大手や決済大手が初期パートナーとして名を連ねています。2026年7月15日までの週には、テストネットにおいて約1500万件のトランザクションを処理した実績が報告されています。
さらに、Circleの2026年第1四半期決算では、30億ドルの評価額で2億2200万ドルのARCトークンプレセールを実施したことが明らかになりました。この調達には、BlackRock、a16z crypto、ARK Investなどの有力な投資家が参加しているとされています。
ステーブルコイン発行体からの脱却計画
Circleがこのような金融スタックの構築を急ぐ背景には、収益構造の偏りがあると分析されています。
同社の2026年第1四半期の総売上高6億9400万ドルのうち、94%にあたる6億5300万ドルが準備金から得られる金利収入で占められていました。その他の収入は前年比で倍増したものの4200万ドルにとどまっており、金利環境に依存しない新たな収益の柱を作ることが課題となっています。
Arcを中心としたエコシステムの構築は、Circleにとって「USDC発行体」という単一のビジネスモデルから脱却し、プラットフォーム企業へと移行するための重要な戦略と見られています。
依然として市場を支配するTetherとの格差
Circleが技術的・規制的な基盤を強化する一方で、ステーブルコイン市場におけるシェアではTetherが圧倒的な優位性を保っています。
TetherのUSDTの時価総額は約1840億ドルに達しているのに対し、CircleのUSDCは約730億ドルにとどまっています。暗号資産市場における「デジタルドル」としての実質的な支配権は依然としてTetherが握っており、Circleが構築する金融スタックがこの勢力図に与える影響が、今後の業界における競争の焦点と見られています。
ポイント
- Circleは独自のレイヤー1ブロックチェーン「Arc」を中心とした4層の金融スタックの構築を進めており、従来のステーブルコイン発行体からプラットフォーム企業への転換を図っています。
- 同社の収益の94%が準備金の金利収入に依存している現状があり、新スタックの構築は金利依存から脱却するための戦略的な試みと見られます。
- ArcのテストネットにはGoldman SachsやMastercardなどの大手が参加し、ARCトークンのプレセールではBlackRockやa16z cryptoなどから30億ドルの評価額で2億2200万ドルを調達したとされています。
- 一方で、競合であるTetherのUSDTは時価総額約1840億ドルを誇り、約730億ドルのUSDCに対して圧倒的な市場支配力を維持している現状があります。