米上院議員のマイク・ラウンズ氏とリチャード・ブルーメンソール氏は2026年7月28日、量子技術の開発支援を目的とした「国家量子即応法」を上院に提出しました。本法案は、トランプ米大統領が2026年6月に署名した量子技術関連の大統領令の一部条項を法制化するものであり、政府や民間における量子技術の展開を後押しする内容となっています。量子コンピュータの実用化が進むにつれ、主要ブロックチェーンの暗号技術に対する安全性の影響や、金融セクターへの耐量子暗号基準の波及可能性が議論されています。
法案の概要と政府・民間の連携スケジュール
国家量子即応法は、トランプ大統領が2026年6月22日に署名した大統領令「量子イノベーションの新境地を切り開く」のうち、量子センサー・ネットワークの展開や量子供給網の国内基盤強化に関する条項を法制化するものです。本法案では、以下の通り具体的な実施スケジュールや枠組みが設定されています。
施行から60日以内において、国防長官は次世代量子センサーの優先プロジェクト3件を特定することが義務付けられており、2028年9月30日までの実用化および配備を目指します。
施行から120日以内には、国防総省、商務省、エネルギー省、国立科学財団の4機関が連携し、賞金コンテストや事前市場調達契約などを活用した民間企業とのパートナーシップ計画を策定します。
施行から180日以内には、量子情報科学・技術に関連する国防総省管轄のファウンドリー(製造拠点)資源への国内アクセス拡大が義務付けられます。
さらに、商務省は2026年5月にCHIPS・科学法に基づき、量子関連企業向けに20.13億ドルの奨励策を発表しています。政府主導の法制化と資金支援を通じて、量子関連の技術開発や供給網の強化が官民で加速する見通しです。
ブロックチェーンおよび暗号資産業界への影響
本法案の背景にある大統領令には、政府システムにおけるポスト量子暗号(量子コンピュータによる解読に耐えられるよう設計された暗号方式)への移行方針も含まれており、2030年から2031年を目指して推進される計画です。この動きは、既存の暗号方式に依存するブロックチェーン業界にとっても重要なテーマとなっています。
ビットコインやイーサリアムなどの主要ブロックチェーンでは、将来的に量子コンピュータの性能が一定水準に達した場合、依拠する暗号方式の前提が崩れる可能性が指摘されています。連邦機関に対して量子耐性のある暗号基準への移行が義務付けられれば、暗号資産交換業者やカストディ(保管)事業者を含む金融セクター全体へと同様の要求が広がる可能性があると見られています。
一方で、法案が定める民間パートナーシップ計画や政府の資金支援を通じ、暗号資産のカストディや取引所のセキュリティを支える耐量子インフラ開発企業へ資金が流れる可能性もあります。すでに業界内では、ゼロ知識証明を活用して量子脅威後も所有権を証明する技術開発(Project Eleven)や、最大500万ドルの助成金を提供する「ビットコイン量子準備イニシアチブ」(ギャラクシーデジタル)など、量子リスクに対処するための取り組みが進められています。
ポイント
- 米上院に量子技術の開発支援と法制化を目指す「国家量子即応法」が提出されました。
- 施行後60日以内の優先プロジェクト特定や、120日以内の官民パートナーシップ計画策定など、具体的な期限が設定されています。
- 大統領令に基づく政府のポスト量子暗号移行計画は、将来的に暗号資産取引所やカストディ領域のセキュリティ基準に影響を及ぼす可能性があります。
- 政府による資金支援や官民連携枠組みを通じて、ブロックチェーンのセキュリティを保護する量子耐性インフラの開発が促進される期待があります。