Coinbaseが支援するイーサリアムLayer 2ソリューション「Base」が、2025年11月に大きな躍進を遂げています。
まず注目すべきは、ガスリミットの大幅引き上げです。これにより、1日あたり1,610万件という過去最高のトランザクション数を記録しました。さらに、JPMorganの米ドル預金トークン「JPMD」の稼働開始やCoinbase Wrapped資産の対応拡大など、機関投資家向けインフラの整備も着実に進んでいます。
本レポートでは、以下の4つの視点から最新動向をわかりやすく整理しました。
- 技術アップデート
- 主要指標の変化
- 開発進捗
- アプリ機能の強化
この2週間でBaseに何が起きたのか、そしてエコシステムがどのように進化しているのか、具体的な数字とともに見ていきましょう。
ハイライト:この2週間のBaseは何がすごかったのか?
■ ガスリミットを150Mgas/sへ引き上げ
Baseはこの2週間でガスリミットを一気に2倍へ増加。その結果、ネットワーク混雑時でも手数料が上がりづらくなり、過去最高の1,610万件/日というトランザクション数を記録しました。BNBチェーン並みの処理能力に到達しました。
■ Coinbase Wrapped資産がBaseで利用可能に
cbXRP / cbADA / cbLTC / cbDOGE / cbBTCが新たに対応しました。
Coinbaseが裏付けるwrapped資産の供給量は約5,500万ドル規模です。
■ JPMorganのUSD預金トークン「JPMD」がBaseで稼働
Kinexysを通じて、機関投資家間の送金が可能になりました。
TBA(Token-Based Activity)関連アップデート
■ フィード内トレーディング
トレード機能が導入されたことにより、ユーザーは、Baseアプリのフィード上で他の人が何を売買しているかを確認し、他のアプリを介さずにその場で売買アクションを実行できるようになりました。
■ 投稿ペアリング機能
クリエイターは特定のトークンに関連する投稿にコントラクトを紐づけることで、閲覧者から直接トークンを受け入れる収益化が可能になりました。
■ Mini App向け通知アナリティクス
Mini AppをBase.devに登録することで、通知によるリテンション分析が可能になりました。
■ Kalshi が Base USDC 入金にネイティブ対応
Ethereum / Suiに加えて「Base」をサポートし、チェーン統合を強化しました。
数字指標から見るBase
トランザクション数が世界トップクラスの水準へ
Baseの1日あたりTX数は1,610万件に到達。
これはBNBチェーンや主要L2と肩を並べる規模であり、実需の強さを示しています。(図1参照)

図1:Baseの一日あたりトランザクション数(Million $)
主要指標の推移をチェック(前々週比)
- チェーンの収益は約20%の減益となりました。ただし、これは前期がブラックフライデー(2025年10月20日)のイベントの影響で一時的に増加していたことが要因です。
- Baseアプリの月間アクティブユーザー数は新規顧客の参入により大幅増(+60%)となりました。
- 週間アクティブアカウント数は+16%となり、25年Q4の目標である1,500を達成しました。
| 指標 | 今回 | 前回 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| チェーン収益 | $3.89M | $4.97M | -22% |
| WAAs(Weekly Active Accounts) | 1574 | 1361 | +16% |
| Base App MAU(千) | 69.2K | 42.3K | +64% |
| TVL(Assets on platform) | 14.5B | 14.57B | 0% |
| TPS(Transactions per sec) | 180 | 120 | +50% |
| Median fee | $0.0008 | $0.0006 | +33% |
Baseの開発進捗:チェーン・アカウント・市場・プライバシー
Baseは技術面でも多方面で進化しています。特に企業利用を意識した設計が目立ちます。
Builder chain
■ Chain(チェーン)
Baseのコアとなるチェーンレイヤーでは、まずガスリミットを段階的に引き上げる取り組みが進行中です。約30日間で最終的に2倍まで拡張する計画の途中にあり、すでに高負荷時でもトランザクション手数料を安定させるための余裕が生まれつつあります。
あわせて、年内の実装を目標にリソースメータリングに関するTIPロードマップの調整も進められており、将来的にはより精緻にネットワークリソースを管理できる体制が整う見込みです。こうした取り組みにより、大規模なトラフィックにも耐えうるインフラとしての信頼性強化が加速している状況です。
■ Account(アカウント)
アカウント周りでは、ユーザーと企業双方に関わるアップデートが続いています。
まず、TBA向けに「Spend Permissions」機能を提供する計画が進行中で、特定の権限だけを委譲したり、支出上限を設定したりといった、より細やかな資産管理が可能になることが期待されています。あわせて、複数人での管理を想定した所有者追加フローに存在していた不具合も解消されました。
これにより、企業アカウントや共同管理ウォレットなど、実務ユースケースに直結する運用面での使い勝手が着実に改善されています。
■ Markets
マーケット面では、現在Base ↔ Solana間をつなぐブリッジ開通に向けて、Chainlinkによる最終承認待ちのフェーズに入っています。これが稼働すると、Solanaエコシステムとの資産移転がよりスムーズになり、Base上のプロジェクトにとって新たな流動性の獲得チャネルが生まれることになります。
近い将来、マルチチェーン前提のプロダクト設計や、複数チェーンをまたぐ金融ユースケースの構築が、より現実的な選択肢となっていくことが想定されます。
■ Privacy
プライバシー領域でも、エンタープライズ利用を見据えた土台作りが進んでいます。まず、Incoをプライバシーレイヤとして統合するためのTDD(テクニカル設計)が進行中であり、今後は秘匿性の高いトランザクションや、ユーザーデータを保護しながらのオンチェーン活用がしやすくなることが期待されます。
さらに、Base Verifyでは「Instagram」を認証プロバイダーとして活用しており、既存のSNSアカウントを用いた本人確認の仕組みを取り込もうとしています。これは、Web2時代に企業が築いてきた認証・ID基盤をそのまま活かしつつ、Web3上の体験にスムーズにつなげていく方向性を示す動きと言えます。
Builder Apps
- Base.devの「All Apps」登録に向けたUXプロトタイプを作成しました。
- Appcoinローンチパッドの魅力に関する初期設計を整理しました。
- Spindlが100%Flywheel protocolに移行しました。
- TBA広告が新しいMLランキング基盤上で稼働しています。
Builder Growth(成長施策)
- Base Batches 002のファイナリスト50名を選出しました。
- LATAM(中南米)でBaseワールドツアーを開催しています。
- 開発者ドキュメントを改善しました(deeplinks、inline actions、Mini App SDKなど)。
- Lisbon Vibe Codingなど各種イベント支援を実施しています。
アプリ関連アップデート:ユーザー体験が大幅に向上
ここからは、Baseエコシステムを支える具体的な機能開発の最新状況をご紹介します。
2025年11月に行われた最新のアップデートでは、次の4つの柱で進化しています。
- トレーディング体験の向上
- クリエイター収益機能の強化
- ユーザーのオンボーディング改善
- グローバル展開の加速
特に注目すべきは、無限スクロールやフィルタ機能によるトレーディング体験の向上、サブスクリプション機能の準備完了、25万人以上への「7702」アクセス開放、ナイジェリアを含む地域でのアクセス制限解除など、ユーザー体験と利便性を大きく向上させる取り組みが着実に実装されている点です。
ここからは、4つの柱を一つずつ深掘りしていきます。
Trading(トレーディング機能)
- コインリストに無限スクロールを実装。
- トレンドコインのフィルタ、Memeコインリストも追加。
- Base上でUSDC → ETHスワップができなかった問題を修正。
User earnings(ユーザー収益機能)
- クリエイターコイン収益に関する通知のパーソナライズ性を強化。
- 投稿/トレードのサブスクリプション機能は完成しており、現在は対応ページの準備が整い次第ロールアウト予定。
Migration & Onboarding(移行とオンボーディング)
- 「7702」へのアクセスを25万人以上のユーザーに開放(13,000人の移行が完了)。
- 再デリゲーション失敗の問題を解消し、成功率95%以上を達成。
- 署名やスワップ時のエラー改善のため8つのエラーソースをデバッグ。
Viral sharing loops(シェア拡散ループ)
- iOS / Androidでドメインフロンティングを導入し、ナイジェリア地域のユーザーも制限なくアプリを利用可能になりました。
その他プロダクトに関する最新トピックス
Mini App開発者が通知データを活用し、ユーザーの維持率(リテンション)を改善できるアナリティクス基盤が稼働開始。
- 通知の追加/削除/有効化ユーザー数などを可視化
- CTRは43%(+16%)に改善
これは、企業が使うCRM・プッシュ戦略に非常に近い概念で、オンチェーンアプリのPDCAを回す基盤が整い始めたことを意味します。
これらのアップデートにより、Baseはより使いやすく、より多くのユーザーに開かれたプラットフォームへと進化を続けています。(図2参照)

まとめ:Baseは“企業が安心して使えるL2”へ進化中
今回のアップデートから見えてくるポイントは以下の通りです。
- Baseはガスリミットを150Mgas/sへ引き上げ、1日のトランザクション数で過去最高の1,610万件を記録するなど、スケーラビリティを大きく向上させている
- 機関投資家向けのインフラ整備が着実に進んでいる
- TBA(Token-Based Activity)機能の強化により、クリエイター収益化やユーザーエンゲージメント向上の仕組みが充実している
- グローバル展開の加速やMini App通知アナリティクスなど、ユーザー体験の向上に注力している
BaseはCoinbaseが支援するLayer 2ソリューションとして、「企業がWeb3を安全に活用するための基盤」として着実な進化を遂げています。
日本国内の企業にとっても、ブロックチェーンを活用した次のような領域で活用余地が広がるタイミングと言えるでしょう。
- 新規事業
- 決済・送金の効率化
- グローバル展開
今後のアップデート状況やエコシステムの動向、規制環境の変化をしっかりとウォッチすることで、Baseチェーンの可能性をより深く理解することができるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Baseに関心をお持ちの方は、今回の記事を参考に、引き続き情報収集を続けてみてください。
Base公式サイト:https://www.base.org