2026年4月8日、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)と外国資産管理室(OFAC)は、ステーブルコイン発行者を対象とした資金洗浄およびテロ資金供与対策(AML/CFT)に関する規則案を発表しました。この規制案は2025年に成立した「GENIUS法」に基づくもので、2027年1月のコンプライアンス期限に向けた具体的なルール整備の一環とされています。規制の具体化が進む一方で、ステーブルコインの利回り提供を巡る議論が、今後の法整備の進展に影響を与える可能性が出ています。
GENIUS法に基づく規制の具体化と2027年への準備
今回の規則案は、2025年7月18日に成立した「GENIUS法」の枠組みを実務レベルで運用するためのものです。同法では、ステーブルコインが米ドルや流動性の高い資産によって1対1で裏付けられることが義務付けられており、大規模な発行者には監査を含む開示・報告義務が課されています。
財務省の発表によると、今回の規則案では「許可された決済用ステーブルコイン発行者(PPSIs:Permitted Payment Stablecoin Issuers)」に対し、リスクの特定と軽減措置を含むAML/CFTプログラムの構築が義務付けられます。また、OFACは有効な制裁遵守プログラムの整備と維持を求めています。
これに合わせ、他の規制当局も動きを見せています。連邦預金保険公社(FDIC)は4月7日に準備資産や資本に関する規則案を公表し、通貨監督庁(OCC)も国法銀行の子会社などを対象とした規則案を公開しました。これらの動きは、2027年1月に設定されているGENIUS法の発効およびコンプライアンス期限に向けた、包括的な規制整備の一環と見られます。
利回り禁止の是非を巡る銀行業界との対立と法案への影響
現在、米国ではGENIUS法に続き、暗号資産の規制管轄を明確化する「CLARITY法」の議論が続いています。GENIUS法では発行者による利回りの支払いが既に禁じられていますが、現在の議論の焦点は、取引所などの「発行者以外の仲介者」を通じた利回り提供をどこまで認めるかに移っています。
この問題を巡り、ホワイトハウスの大統領経済諮問委員会(CEA)と銀行業界の間で意見が対立しています。CEAは、利回りを禁止した場合の銀行融資へのプラスの影響は限定的であるとするレポートを発表しました。これに対し、独立地域銀行協会(ICBA)は、ステーブルコインの利回りが認められた場合、最大1兆3000億ドルの預金喪失と8500億ドルの融資減少を引き起こすリスクがあると警告しています。
米投資銀行のTD Cowenは、ホワイトハウスのレポートが暗号資産業界に近い見方を示したことで、銀行業界との妥協の余地が狭まり、CLARITY法の成立に向けた道筋は一段と厳しくなる可能性があると分析しています。銀行業界がステーブルコインを預金流出の要因と見なす限り、利回りの扱いを巡る対立は当面続く可能性が高いと見られます。
ポイント
- 米財務省がGENIUS法に基づき、ステーブルコイン発行者に対するAML/CFTプログラムの構築を義務付ける規則案を発表しました。
- 2027年1月のコンプライアンス期限に向け、FDICやOCCなどの当局も準備金や資本に関するルール整備を進めています。
- ステーブルコインの利回り提供が銀行の預金や融資に与える影響について、政府機関と銀行業界の間で予測に大きな乖離が見られます。
- 利回りの扱いを巡る銀行業界との対立により、市場ルールを包括的に定める「CLARITY法」の成立が困難になるとの懸念が出ています。
- コンプライアンス面の整備は前進したものの、金融構造に関わる利回りの問題が今後の法整備の焦点となる見通しです。