ビットコインの価格上昇率が過去の半減期サイクルを大幅に下回る中、Web3業界の関心は投資から実需を伴う金融インフラへと移行しつつあります。国内では日本円ステーブルコインJPYCの大規模資金調達や、日本国債のブロックチェーン管理に向けた実証実験が進行しており、社会実装に向けた動きが具体化しています。一方で、税制改正に伴う新たな課題やDeFiプロトコルのセキュリティリスクなど、市場の健全な発展に向けた論点も浮き彫りになっています。
過去の半減期サイクルと比較したビットコインのパフォーマンス低下
Galaxy Research(ギャラクシー・リサーチ)のリサーチ責任者であるアレックス・ソーン氏は、2024年4月の半減期以降のビットコインサイクルが、過去3回のサイクルと比較してパフォーマンスが劇的に低下していると指摘しています。
過去のサイクルにおける半減期後の価格上昇率は、2012年サイクルで約9294パーセント(約1163ドルに到達)、2016年サイクルで約2950パーセント(約1万9891ドルに到達)、2020年サイクルで約761パーセントを記録していました。これらと比較して、2024年からのサイクルは上昇の勢いが抑制されていると見られます。この背景について、米リップルのRippleXシニア・バイス・プレジデントであるマーカス・インファンガー氏は、暗号資産をめぐる関心が単なる投資対象から、実需を伴う金融インフラへと移りつつある現状を指摘しています。
国内ステーブルコインの資金調達と決済インフラへの統合
日本国内では、ステーブルコイン(法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産)の社会実装に向けた動きが加速しています。
日本円ステーブルコインJPYCを発行するJPYC社は、シリーズBラウンドのセカンドクローズにおいて、メタプラネットらから28億円の追加資金調達を完了する予定であることを発表しました。これにより、同社のシリーズB累計調達額は約46億円に達します。また、実用化に向けた取り組みとして、マイナウォレット社と三井住友カードが、マイナンバーカードを活用したステーブルコイン決済の実証実験第2弾を開始します。今回はiPhone対応も含まれており、より一般的な利用シーンを想定した検証が行われます。
決済実装の側面では、ネットスターズがUSDC(米ドル連動型ステーブルコイン)などの店舗決済活用の現状を提示しており、利用者がステーブルコインであることを意識せずに活用できる環境整備が重要視されています。
金融機関によるブロックチェーン活用と制度設計の課題
伝統的な金融資産のブロックチェーン管理も本格化しています。みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、日本証券クリアリング機構、Digital Asset Holdingsの4社は、日本国債(JGB)を活用したデジタル担保取引の実証実験を開始しました。これは国債という極めて公共性の高い資産をブロックチェーン上で管理する試みであり、金融インフラの効率化に寄与する可能性があります。
一方で、制度面や安全面では課題も残されています。暗号資産の分離課税導入については、一律20パーセントの課税案が市場の前進として評価される一方で、少額投資家にとっては実質的な増税になる可能性や、実務負担の増大が懸念されています。また、セキュリティ面では、Suiブロックチェーン上のリキッドステーキング(資産の流動性を保ったままステーキングを行う仕組み)プロトコルであるVoloが、ハッキングにより約350万ドルの資産を流出させるなど、DeFi(分散型金融)領域におけるリスク管理が引き続き重要な課題となっています。
ポイント
1. 2024年のビットコインサイクルは、過去3回の半減期後と比較して価格上昇率が大幅に低下している。
2. JPYCが累計約46億円の資金調達を実施し、マイナンバーカードを用いた決済実証などステーブルコインの実用化が進んでいる。
3. みずほや野村らによる日本国債のデジタル担保管理実験により、伝統的金融資産のブロックチェーン活用が具体化している。
4. 暗号資産の分離課税導入は前進と捉えられているが、少額投資家への影響や実務上の課題が議論されている。
5. DeFiプロトコルでのハッキング被害が継続しており、金融インフラとしての信頼性確保が急務となっている。