DeFi United、KelpDAOのrsETH裏付け資産復旧に向けた技術計画を発表

Aaveのサービスプロバイダーを中心としたエコシステム参加者の連合「DeFi United」は、2026年4月18日に発生したKelpDAO(イーサリアムのリステーキングプロトコル)のブリッジ不正流出事件を受け、rsETH(KelpDAOが発行する流動性リステーキングトークン)の裏付け資産を復旧させるための技術的な実施計画を公開しました。この計画は、流出した資産による二次被害を防ぎ、DeFi(分散型金融)エコシステム全体の信頼を回復させるための重要なステップとなります。本件は、総額約2億9,200万ドルに及ぶ大規模な被害に対し、複数の主要プロトコルが連携して対応に当たる異例の取り組みとして注目されています。

不正流出の背景と現状の被害状況

2026年4月18日、KelpDAOが利用するLayerZero(ブロックチェーン間でメッセージを伝達するためのプロトコル)のブリッジから、約11万6,500 rsETH(約2億9,200万ドル相当)が不正に引き出されました。この攻撃は、北朝鮮のハッカー集団「Lazarus Group」による可能性が高いと見られています。

攻撃者は、ブリッジの検証プロセスにおける不備を突き、実際には資産をバーン(消滅)させていないにもかかわらず、イーサリアム側でrsETHを放出させる偽のメッセージを生成しました。流出したrsETHの多くは、その後AaveやCompoundといった貸付プロトコルに担保として預け入れられ、WETH(ラップドイーサリアム)などの他の資産を借り出すために利用されました。現在、盗まれた資産の約92%にあたる約10万7,000 rsETHが、依然として攻撃者に関連する複数のウォレットによって担保ポジションとして保持されていると報告されています。

裏付け資産復旧に向けた技術的アプローチ

DeFi Unitedが発表した復旧計画は、rsETHの裏付け資産を本来の比率(1 rsETHあたり1.07 ETH)に戻すことを目的としています。主な手順は以下の通りです。

まず、DeFi Unitedに参加する各パートナー(Consensys、Compound Foundation、Circle、Renzoなど)からコミットされたETHを、段階的にrsETHに変換し、ブリッジのロックボックス(資産を保管するコントラクト)に預け入れます。これにより、rsETHの資産的裏付けを正常化させます。

次に、AaveやCompoundに残っている攻撃者の担保ポジションを解消するため、rsETHのオラクル(価格参照データ)価格を一時的に調整する措置が取られます。これにより、攻撃者のポジションを強制的に清算し、回収された担保資産をDeFi Unitedが管理するマルチシグウォレットに移動させます。回収されたrsETHは最終的にETHに換金され、プロトコル内の負債の補填に充てられる計画です。

業界への影響と今後のガバナンス

今回の事件は、クロスチェーンブリッジのセキュリティ設定(特に検証ノードの構成)がDeFiエコシステム全体に波及するリスクを浮き彫りにしました。しかし、その後の対応において、Aave Labs、KelpDAO、LayerZero、さらには競合関係にあるプロトコルまでもが「DeFi United」として団結したことは、Web3業界における危機管理の新たなモデルケースとされています。

この復旧計画の最終的な実行には、イーサリアムおよびArbitrum(イーサリアムのレイヤー2ソリューション)におけるガバナンス投票による承認が必要です。承認が得られ次第、凍結されている各市場の再開と、資産の裏付け復旧が進められる予定です。

ポイント

  • 2026年4月18日にKelpDAOのブリッジから約2億9,200万ドル相当のrsETHが不正流出しました。
  • 攻撃者は盗んだrsETHをAave等の担保として利用しており、エコシステム全体に不良債権のリスクが波及しました。
  • DeFi Unitedは、パートナー企業から募ったETHを投入し、rsETHの裏付け比率を1.07 ETHに復元する計画です。
  • 攻撃者のポジションを強制清算するためにオラクル価格を一時調整するという、高度に技術的な解決策が提示されています。
  • 複数の主要プロトコルが連携して損失の補填と信頼回復に当たる姿勢は、業界の成熟度を示すものとして評価されています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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