カナダ政府は2026年度の連邦春季経済更新(Spring Economic Update 2026)において、暗号資産(仮想通貨)ATMの全国的な禁止を提案しました。この措置は、詐欺師が被害者を騙して送金させる手段や、犯罪収益の洗浄(マネーロンダリング)にこれらの機器が悪用されている現状を打破することを目的としています。主要な詐欺ルートを遮断することで、国民の資産を保護する狙いがあります。
詐欺被害の抑制とATM禁止の背景
カナダ政府は、暗号資産ATMを「詐欺師が被害者から資金を搾取し、犯罪者が不法な現金収益を処理するための主要なツール」と位置づけています。カナダ国内には現在4,000台弱の暗号資産ATMが設置されており、これは人口あたりの設置台数として世界で最も多い水準とされています。
これらの機器は、銀行口座を介さずに現金を直接暗号資産に変換し、世界中のデジタルウォレットへ即座に送金できる特性を持っています。この利便性が、本人確認(KYC)が不十分なまま犯罪に悪用される要因になっていると当局は指摘しています。
金融犯罪対策の全体像とMSBへの規制強化
今回の禁止提案は、金融犯罪に対抗するための広範な施策の一部です。カナダ政府は今後5年間で3億5,270万カナダドルを投じ、新たに「連邦金融犯罪局(Financial Crimes Agency)」を設立する計画を明らかにしました。この新機関は、マネーロンダリングや組織的な詐欺、資本市場における重大な犯罪の捜査と犯罪収益の回収を専門に行います。
また、暗号資産ATMの禁止後も、国民が暗号資産を購入する手段は維持されます。政府は、対面でサービスを提供する「実店舗型のマネーサービスビジネス(MSB)」を通じた購入は引き続き可能であるとしています。あわせて、MSBに対しては登録ルールの厳格化や犯罪歴の確認、大臣指令による新たな権限の付与など、規制を強化することで安全性を高める方針です。
国際的な規制動向との整合性
暗号資産ATMに対する規制強化は、カナダ独自のものではありません。イギリスでは2021年にライセンス制度を導入し、事実上の禁止状態にあります。また、アメリカでは一部の州で1日の利用限度額の設定や手数料の開示義務化が進んでおり、オーストラリアでも2025年に取引制限が導入されました。
カナダ政府の今回の提案は、こうした国際的な消費者保護の流れに沿ったものであり、特に設置台数の多さに起因するリスクを最小化するための抜本的な措置と見られます。
ポイント
- カナダ政府が2026年度の経済更新において、暗号資産ATMの全国的な禁止を提案しました。
- 禁止の主な理由は、詐欺師による被害者からの資金奪取やマネーロンダリングへの悪用を防ぐためです。
- カナダには約4,000台の暗号資産ATMが存在し、人口あたりの設置台数は世界最多水準とされています。
- ATM禁止後も、実店舗型のマネーサービスビジネス(MSB)を通じて暗号資産を購入することは可能です。
- 新たに設立される「連邦金融犯罪局」と連携し、金融システム全体の透明性と安全性を高める狙いがあります。