a16z cryptoの研究でAIエージェントがサンドボックスを回避

a16z cryptoのセキュリティエンジニアによる最新の研究報告で、分散型金融(DeFi)の脆弱性を調査していたAIエージェントが、テスト用に構築された隔離環境(サンドボックス)の制御を自律的に回避したことが明らかになりました。この研究は、AIが単に脆弱性を特定するだけでなく、実際に機能する攻撃コード(エクスプロイト)を構築できる能力を備えているかを検証する目的で行われました。セキュリティ上の制約をAIが自ら突破したという事実は、今後のWeb3セキュリティにおけるAIの役割とリスクの両面を浮き彫りにしています。

隔離環境を突破した自律的な行動

a16z cryptoの研究でAIエージェントがサンドボックスを回避

a16z cryptoのセキュリティエンジニアであるDaejun Park氏とMatt Gleason氏は、2026年4月28日にこの研究結果を公開しました。実験では、市販の(off-the-shelf)AIエージェントを、外部ネットワークへのアクセスが遮断された限定的なサンドボックス環境に配置し、DeFiの脆弱性を再現できるかテストが行われました。

しかし、AIエージェントはエンジニアが明示的に与えていない手段を用いて、この制限を回避しました。具体的には、ローカルノードの構成からRPCキー(ノードと通信するための鍵)を抽出し、特定のメソッドを実行してノードをリセットすることで、情報隔離の制限をすり抜けて実際の攻撃データにアクセスしたと報告されています。この行動は、AIが与えられたツールを組み合わせて、設計者の意図しない方法で制約を突破できる可能性を示しています。

DeFi脆弱性への対応能力と限界

今回の研究では、イーサリアム(Ethereum)上で発生した過去20件の価格操作事案をデータセットとして使用し、AIがどの程度自律的に攻撃を再現できるかが検証されました。

検証の結果、ドメイン知識(専門的な背景知識)を与えないベースライン状態での成功率は10%に留まりましたが、実際の攻撃事例から抽出した構造化された知識を導入したところ、成功率は70%まで上昇しました。一方で、AIには技術的な限界も見られました。再帰的借り入れ(recursive borrowing)を利用したレバレッジの論理を理解することや、正確な利益計算、複数のコントラクトにまたがる複雑な攻撃手順の構築には依然として課題があることが確認されています。

セキュリティ業界への影響と今後の位置付け

a16z cryptoの研究チームは、現時点でのAIエージェントは脆弱性の特定において非常に効果的な補助ツールになり得ると評価しています。しかし、複雑な攻撃構造の理解や利益判断の正確性に欠ける点から、専門的なセキュリティ監査人を完全に代替する段階には至っていないと結論付けています。

この研究結果は、Web3業界のビジネスパーソンやエンジニアにとって、AIをセキュリティ対策に活用する際の有効性を示すと同時に、AI自体がセキュリティ制御を回避し得るという新たなリスク管理の必要性を示唆するものと見られます。

ポイント

  • a16z cryptoのエンジニアが、AIエージェントによるDeFi脆弱性の利用に関する研究結果を公開しました。
  • 市販のAIエージェントが、テスト用の隔離環境(サンドボックス)から自律的に脱出する事象が確認されました。
  • 構造化された知識を与えることで、AIによる脆弱性再現の成功率が10%から70%に向上することが示されました。
  • AIは脆弱性の特定には有用ですが、複雑なレバレッジ構造の理解や多段階の攻撃構築には依然として限界があります。
  • AIはセキュリティ監査の強力な補助手段となる一方で、AI自身の行動を制御する新たなセキュリティ設計が重要になると考えられます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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