日本酒商標NFT「Sake World酒蔵投資」が事業終了、酒蔵の関与否定と利回りへの疑義が原因

京都市の出版社リーフ・パブリケーションズは、2026年4月30日、日本酒の商標権をNFTとして小口販売するプロジェクト「Sake World酒蔵投資」を即日終了すると発表しました。SNS上で指摘された非現実的な高利回りへの疑念や、協力先として掲載された酒蔵への説明不足による信頼失墜が主な理由とされています。本件は、実物資産(RWA)を扱うWeb3ビジネスにおいて、既存業界のステークホルダーとの適切な合意形成がいかに重要であるかを示す事例となりました。

商標権の小口化による投資スキームの概要

「Sake World酒蔵投資」は、商標権「Sake World」の共有持分をNFT(非代替性トークン)として小口化し、1口5500円から販売する仕組みでした。このプロジェクトはPolygon(イーサリアムのレイヤー2ソリューション)を採用していたとされています。

集まった資金は、グループ会社のSake World牧野蔵(岡山県)が出荷するブレンド日本酒の製造等に充てられる計画でした。購入者には、出荷量1ミリリットルあたり0.3円のロイヤリティが暗号資産で配当される仕組みで、その期間は50年以上にわたるとされていました。運営側は外部法律事務所の確認を経た上で事業を開始していましたが、サービス開始から約1年で幕を閉じることとなりました。

事業終了を招いた「高利回り指摘」と「酒蔵の関与否定」

プロジェクトが終了に至った直接のきっかけは、2026年4月28日にSNS上のインフルエンサーから、サイトに掲示された収益シミュレーションが非現実的であるとの指摘を受けたことでした。具体的には、6年目以降に目標年次利回り約35%、21年目以降には約85%に達するという内容に対し、詐欺の疑いがあると言及されました。

さらに深刻だったのは、サイト上に「協力酒蔵一覧」として掲載されていた55の酒蔵に対する事前説明の欠如です。運営元のリーフ・パブリケーションズは、過去の事業を通じて原酒ブレンドの了承を得ていると認識していましたが、今回の投資プロジェクトに関する詳細な説明や事前同意は得ていませんでした。

これに対し、松井酒造(京都)や香坂酒造(山形)、天鷹酒造(栃木)、ハクレイ酒造(京都)といった酒蔵が、SNSや公式ホームページを通じて「関与していない」「内容を感知していない」といった声明を次々と発表しました。特にハクレイ酒造は、過去の取引実績が投資プロジェクトへの協力や名称使用を許諾したことを意味するものではないと強く指摘し、不快感を表明しました。

業界への影響と今後の対応

運営元のリーフ・パブリケーションズは、詐欺の意図は否定したものの、自社の過失を認め、全額返金の手続きを進める方針を示しています。

本件は、Web3を活用した地域産業の活性化や資産の流動化を目指すプロジェクトにおいて、技術的な法的確認(リーガルチェック)だけでなく、実社会のビジネス関係者との丁寧な合意形成がいかに不可欠であるかを浮き彫りにしました。既存の取引関係があるからといって、それを新しい投資スキームに無断で転用することは、業界全体の信頼を損なうリスクがあることを示唆しています。

ポイント

  • 商標権をNFT化し、出荷量に応じたロイヤリティを50年以上にわたって配当する計画でしたが、提供開始から約1年で事業終了となりました。
  • SNS上で35%〜85%という極めて高い目標利回りが指摘され、ビジネスモデルの現実性に疑義が呈されました。
  • 協力先として掲載された55の酒蔵に対し、投資プロジェクトとしての詳細説明や事前同意を得ていなかったことが判明しました。
  • 松井酒造やハクレイ酒造など、複数の酒蔵が公式に関与を否定したことで、プロジェクトの継続が不可能となりました。
  • 運営元は過失を認め、NFT購入者に対して全額返金の手続きを進めるとしています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta