米資産運用大手のGrayscale(グレースケール)の調査部門であるGrayscale Researchは、資産のトークン化(実世界の資産をブロックチェーン上のデジタル証券にするプロセス)というメガトレンドにおいて、将来的に大きな恩恵を受ける可能性が高い6つのブロックチェーンプロトコルを特定しました。トークン化された資産市場は、現在、世界の株式・債券市場の約0.01%を占めるに過ぎませんが、前年比217%という急速な成長を遂げています。この動きは、今後10年以上にわたって金融システムのインフラを根本から変える可能性を秘めています。
トークン化を主導する6つのプロトコルとその役割
Grayscale Researchは、トークン化の進展において中心的な役割を果たすとされる以下の6つのプロトコルを挙げています。
1. Ethereum(イーサリアム):オープンなネットワークとして最大の分散型金融(DeFi)エコシステムを持ち、トークン化資産の基盤となっています。
2. Solana(ソラナ):高い処理能力と低コストな取引を特徴とし、資本市場向けのネットワークパフォーマンスを提供します。
3. Canton(カントン):機関投資家向けに特化したネットワークで、デフォルトでプライバシー機能が備わっており、金融機関との親和性が高いとされています。
4. Avalanche(アバランチ):機関投資家向けの環境とオープンなエコシステムを組み合わせた「ハイブリッド型」のネットワークとして位置づけられています。
5. BNB Chain(BNBチェーン):広範なユーザーベースを持つオープンなネットワークの一つとして挙げられています。
6. Chainlink(チェーンリンク):特定のブロックチェーンに依存せず、トークン化のあらゆる段階で成長を支える重要なインフラ技術として評価されています。
これらのプロトコルは、トークン化された資産の発行、所有、移転を可能にするスマートコントラクト(契約を自動実行する仕組み)プラットフォームとしての役割を担っています。
市場の現状と300兆ドル規模の潜在的な機会
現在、オンチェーン上のトークン化資産市場は約300億ドルと推定されています。その内訳は、米国債が約150億ドルと最も多く、次いでコモディティ(商品)が約50億ドルとなっており、プライベートクレジットや株式などがそれに続きます。
この市場は前年比で217%成長していますが、Grayscaleはこれを「メガトレンドの始まりに過ぎない」と分析しています。世界の証券市場の総額は約300兆ドルに達するとされており、将来的にはその多くがブロックチェーン上に移行する可能性があると見ています。この移行により、決済の遅延解消や市場参加者間での記録共有の効率化が期待されています。
機関投資家向けネットワークとオープンネットワークの展望
Grayscaleは、トークン化の進展にはフェーズがあると予測しています。短期的には、規制対応やプライバシー機能に優れたCantonのような「機関投資家向けネットワーク」が先行して採用される可能性が高いと見られています。これらのネットワークは、既存の金融システムの仕組みに近い形で動作するため、金融機関にとって移行のハードルが低いという利点があります。
一方で、長期的には、EthereumやSolanaのような「オープンネットワーク」へ取引が移行していくと予想されています。現在はプライバシーやアイデンティティ管理のツールが開発段階にありますが、ゼロ知識証明(内容を明かさずに正しさを証明する技術)などの技術が成熟することで、これらの公開型ネットワークが機関投資家の資本を直接受け入れる競争力を備えるとされています。このインフラの転換には、今後10年以上の期間を要する見通しです。
ポイント
- トークン化資産市場は前年比217%の急成長を遂げている一方で、世界の証券市場に占める割合はまだ0.01%程度であり、大きな成長余地があります。
- Grayscaleは、Ethereum、Solana、Canton、Avalanche、BNB Chain、Chainlinkの6つを、このトレンドの主要な受益者として特定しました。
- 短期的にはプライバシーを重視した機関投資家向けネットワークが先行し、長期的には技術の成熟に伴いオープンなネットワークへ移行するという段階的な展望が示されています。
- 約300兆ドル規模の証券市場がブロックチェーンへ移行することで、決済の効率化や透明性の向上が期待されます。
- Chainlinkは、どのブロックチェーンが主流になるかに関わらず、トークン化の進展に不可欠な共通インフラとして注目されています。