ブラックロックのイーサリアムステーキングETFで初の資金流出、高金利とDeFiの混乱が重石に

2026年4月29日、ブラックロックが運用するイーサリアムステーキングETF「iShares Staked Ethereum Trust(ETHB)」から、2026年3月のローンチ以来初めてとなる230万ドルの資金流出が記録されました。米連邦準備制度理事会(FRB)による高金利政策の維持に加え、相次ぐDeFi(分散型金融)ハッキングに伴う流動性の減少が、投資家のリスク回避姿勢を強めていると見られます。機関投資家の動向を映す指標とされる同ETFの流出は、イーサリアム市場全体のセンチメント悪化を示唆しています。

政策金利とステーキング利回りの逆転がもたらす影響

ブラックロックのイーサリアムステーキングETFで初の資金流出、高金利とDeFiの混乱が重石に

ブラックロックのETHBは、現物のイーサリアム(ETH)を保有し、その一部をステーキング(ネットワークの維持に貢献し報酬を得る仕組み)することで、投資家に価格変動利益とステーキング報酬の両方を提供する商品です。しかし、直近の市場環境では、このステーキング利回りの優位性が相対的に低下しています。

FRBが政策金利を3.5パーセントから3.75パーセントの範囲で据え置いたことにより、米国債などのリスクフリーレートがイーサリアムの平均的なステーキング利回りである約3パーセントを上回る状況が続いています。ETHBの場合、手数料差し引き後の実質的な純利回りは約2.2パーセントにとどまるとされており、高金利環境下では利回り商品としての魅力が相対的に弱まっている可能性があります。このようなマクロ経済環境が、機関投資家の資金をオンチェーン利回り商品から、より安全で高利回りの伝統的金融資産へとシフトさせていると見られます。

DeFiセクターのセキュリティ危機と流動性の流出

2026年4月は、DeFiセクターにおいて深刻なセキュリティ侵害が相次いだ月となりました。4月18日以降、エクスプロイト(脆弱性を突いた攻撃)によって世界のDeFi TVL(預かり資産総額)から約150億ドルの流動性が失われています。

主な被害事例として、Drift Protocolでの2億8500万ドル規模の侵害や、リステーキングプロトコルであるKelp DAOにおける2億9200万ドル規模のエクスプロイトが挙げられます。特にKelp DAOの事例では、攻撃者が裏付けのない資産を発行してレンディング市場に展開したことで流動性ショックを引き起こし、Aaveなどの主要プロトコルでも預金とローンが急減する事態となりました。

こうした状況に対し、コミュニティ主導の救済措置も進められています。Arbitrum DAOでは、セキュリティ評議会が保全した約7000万ドル相当の30,766ETHを解放するための投票が開始されました。しかし、一連の事件によってオンチェーンの仕組みに対する信頼が損なわれており、DeFiに残るカウンターパーティーリスク(取引相手の破綻等により契約が履行されないリスク)がイーサリアム市場全体の重石となっています。

市場センチメントの悪化と価格下落リスクのヘッジ

オンチェーンデータと予測市場の動向は、投資家がさらなる価格調整に備えていることを示しています。市場モメンタムを指数化したCFGI.ioのデータによると、イーサリアムのセンチメントスコアは3月中旬の「強欲」水準である67から、4月下旬には「中立」の44まで大幅に低下しました。

予測市場のPolymarketでは、イーサリアム価格が1,750ドルを下回る確率が62パーセント、年末までに1,500ドル付近まで下落する確率が46パーセントに達するなど、トレーダーによるヘッジ活動が活発化しています。主要中央銀行によるタカ派的な姿勢が長期化するなか、DeFiの混乱による信頼低下が重なることで、イーサリアムの反発見通しは当面の間、弱含みで推移する可能性があると見られています。

ポイント

・ブラックロックのステーキングETF「ETHB」が、2026年3月のローンチ後初めて230万ドルの純流出を記録しました。

・米FRBなどの高金利政策により、米国債利回りがイーサリアムの純利回りを上回る「逆転現象」が起きており、資金の流出圧力となっています。

・2026年4月に発生したKelp DAOやDrift Protocolなどの大規模なハッキングにより、DeFiのTVLから約150億ドルが流出しました。

・DeFiセクターの信頼低下を受け、市場センチメントは「強欲」から「中立」へ後退し、予測市場ではさらなる価格下落への警戒感が強まっています。

・Arbitrum DAOによる凍結資産の解放など救済の動きもありますが、オンチェーン特有のカウンターパーティーリスクが投資判断の懸念材料となっています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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