Solana(ソラナ)の共同創設者であるアナトリー・ヤコヴェンコ氏が、人工知能(AI)の進化が耐量子計算機暗号(PQC)の安全性を脅かす可能性があると警告を発しました。同氏はAIを、暗号技術に対する「短期における最大の脅威」と位置づけています。この指摘は、将来的なセキュリティリスクへの備えと、ビットコインの創設者サトシ・ナカモトが保有する資産の扱いについて、業界内で新たな議論を呼んでいます。
AIによる暗号突破のリスクとマルチシグによる防御
ヤコヴェンコ氏は、AIが耐量子計算機暗号(量子コンピュータによる解読にも耐え得るとされる次世代の暗号技術)の数学的な弱点や実装上の不備を、業界が対策を固める前に見つけ出してしまう可能性を指摘しています。同氏によれば、AIの進化の速度は驚異的であり、研究段階から実装へと移行するスピードが加速していることがその背景にあります。
このリスクに対する具体的な防御策として、ヤコヴェンコ氏は単一の署名方式に依存しない「2-of-3マルチシグ(3つの署名のうち2つを必要とする仕組み)」の導入を推奨しています。異なる独立した署名方式を組み合わせることで、特定のアルゴリズムが突破された場合でも資産の安全性を確保できるという考えです。Solanaにおいては、プログラム派生アドレス(PDA)を通じて、トランザクションプロセッサ内でこのような設定をネイティブにサポートできる可能性についても言及されています。
ビットコインコミュニティにおける「サトシのコイン」の合意
量子コンピュータやAIによる脅威が議論される中で、ビットコインの創設者サトシ・ナカモトが保有すると推定される約110万BTCの扱いについても注目が集まっています。Galaxy Digitalの調査責任者であるアレックス・ソーン氏によれば、これらの資産はたとえ量子リスクに対処するためであっても、勝手に移動させるべきではないという合意がコミュニティ内で形成されつつあります。
この背景には、ビットコインの根幹である「所有権の不可侵性」を守るという原則があります。また、技術的な側面からも、サトシのコインは約22,000の個別アドレスに分散して保管されているため、攻撃者が全ての秘密鍵を特定するには膨大な手間がかかり、一箇所に集中した取引所のウォレットなどと比較して相対的なリスクは低いとの見方も示されています。
暗号技術の移行タイミングと今後の展望
ヤコヴェンコ氏は、量子コンピュータによる画期的な進展が5年以内に起きる確率を「50/50(五分五分)」と予測しています。同氏は、ビットコインなどのブロックチェーンネットワークが耐量子計算機暗号へと本格的に移行を検討すべき指標として、GoogleやAppleといった大手テック企業が耐量子暗号スタックを一般消費者向けに採用するタイミングを挙げています。
現在はまだ、耐量子計算機暗号の数学的な脆弱性や実装時のリスクを業界全体が完全には把握しきれていない段階にあるとされており、慎重な研究と並行して、将来の脅威に備えた冗長性のあるセキュリティ設計が求められています。
ポイント
- Solana創設者のヤコヴェンコ氏が、AIの進化により耐量子計算機暗号(PQC)が早期に突破されるリスクを警告。
- AIが暗号の数学的・実装的な弱点を発見する「短期的な脅威」になる可能性が指摘されています。
- 対策として、異なる複数の署名方式を組み合わせたマルチシグによる防御の重要性が強調されています。
- サトシ・ナカモトの保有資産については、ビットコインの財産権の原則を守るため、量子リスク下でも移動させないという方向でコミュニティの意見が一致しつつあります。
- 大手テック企業の耐量子暗号採用が、ブロックチェーン業界における暗号技術移行の重要なシグナルになると見られています。