3億4,400万ドルのUSDT凍結、イラン革命防衛隊との関連性に疑問を呈する分析結果

米財務省外国資産管理局(OFAC)が主導した3億4,400万ドル(約530億円)相当のテザー(USDT)凍結について、ブロックチェーン分析の専門家からその根拠を疑問視する声が上がっています。この凍結はイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)に関連する資金を対象とした「経済的怒り作戦(Operation Economic Fury)」の一環として実施されましたが、最新のオンチェーン分析では、対象となったウォレットの挙動が従来のイラン関連組織のパターンと一致しないことが指摘されています。

本件は、規制当局によるオンチェーン資産の差し押さえにおいて、資金の帰属(アトリビューション)を特定するプロセスの正確性と、透明性の確保という課題を浮き彫りにしています。

米当局による大規模な資産凍結の背景

3億4,400万ドルのUSDT凍結、イラン革命防衛隊との関連性に疑問を呈する分析結果

2026年4月下旬、米財務省のOFACはイラン中央銀行(CBI)に関連する新たな仮想通貨アドレスを制裁対象(SDNリスト)に追加しました。これに呼応する形で、ステーブルコイン発行元のテザー社は米当局と協力し、Tronネットワーク上の2つのアドレスに含まれる計3億4,400万ドルのUSDTを凍結しました。

米当局の説明によれば、これらの資金はイランの取引所や中間アドレスを経由し、イラン中央銀行に関連するウォレットと相互作用していたとされています。この措置は、イランがデジタル資産を利用して制裁を回避し、革命防衛隊(IRGC)の活動資金を調達することを阻止する狙いがあります。

オンチェーン分析が示す5つの「異常」と帰属への疑問

ブロックチェーン・インテリジェンス企業NominisのCEOであるスニール・レヴィ氏は、凍結されたウォレットの行動パターンを詳細に分析した結果、当局が主張するイラン政府との関連性には5つの大きな疑問点(アノマリー)があると指摘しています。

1. 資金移動のパターン: 過去のIRGC関連の資金フローは、凍結を避けるために常に資金を動かし続ける傾向がありますが、今回凍結されたウォレットは2023年初頭以降、長期間活動が停止(休眠状態)していました。

2. 残高の集中: 従来のイラン関連組織は資金を多数のウォレットに分散させ、一つの残高を数百万ドル程度に抑えますが、今回のアドレスには数億ドル規模の巨額資産が長期にわたって集中していました。

3. インフラの関連性: 分析によれば、凍結されたアドレスはHuobi(現HTX)やHuione Groupといった、主に中国に関連するインフラとの強い結びつきを示しており、イラン独自のインフラとは異なる特徴を持っています。

4. 運用時間帯: 取引が行われている時間帯を分析したところ、テヘランの営業時間ではなく、アジア圏の運用時間と一致していることが判明しました。

5. 他の不正活動との重複: 凍結されたアドレスの一部には、詐欺(スキャム)に関連するテスト行動や、特定の取引所への定期的な小規模送金など、国家主体の資金運用としては不自然な動きが見られます。

これらの分析結果から、Nominisは凍結された資産がイラン政府のものではなく、中国に関連するインフラや他の不正組織によるものである可能性が高いと推測しています。

ポイント

  • 米財務省(OFAC)がイラン関連とされる3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結。
  • 分析企業Nominisは、オンチェーンデータに基づき、この資金がイラン革命防衛隊(IRGC)のものであるという判断に疑問を呈した。
  • 凍結されたウォレットは、アジア圏の活動時間や中国系インフラとの関連性など、従来のイラン関連組織とは異なる5つの特徴を示している。
  • 国家主体による資金運用というよりは、中国関連のインフラや詐欺グループによる活動に近い可能性があると見られている。
  • ブロックチェーン上の資産凍結において、正確な帰属特定(アトリビューション)がいかに困難で重要であるかが改めて示された。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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