2026年第1四半期、主要なビットコインマイニング企業が相次いで大幅な純損失を計上しました。ビットコイン価格の下落や市場環境の悪化が業績を圧迫した一方で、各社はAI(人工知能)や高性能計算(HPC)向けインフラへの事業転換を急速に進めています。この戦略的シフトは、従来のマイニング事業の収益性が低下する中で、より安定した収益源を確保するための業界全体の動きとして注目されます。
主要マイニング企業の業績:巨額の赤字を計上
2026年第1四半期の決算報告によると、Hut 8(ハット8)、Core Scientific(コア・サイエンティフィック)、American Bitcoin(アメリカン・ビットコイン)、Cipher Digital(サイファー・デジタル)、Riot Platforms(ライオット・プラットフォームズ)の各社がいずれも純損失を報告しました。
Hut 8は2億5,310万ドルの純損失を計上し、前年同期の1億3,430万ドルから赤字幅が拡大しました。この損失の主な要因は、保有するデジタル資産の評価損(含み損)が2億9,570万ドルに達したことにあると説明されています。また、Riot Platformsの四半期損失は5億ドルを超え、1ビットコインあたりの採掘コスト(減価償却を含む)が96,283ドルに達するなど、採掘効率の悪化が浮き彫りとなりました。
エリック・トランプ氏が共同設立し、Hut 8から分離独立したAmerican Bitcoinも8,180万ドルの純損失を計上しました。同社は1ビットコインあたりの採掘コストを前四半期の46,900ドルから36,200ドルまで削減することに成功したものの、ビットコイン価格の22%下落による影響を補うには至りませんでした。
損失の背景:ビットコイン価格の下落と収益性の低下
マイニング各社の業績悪化の背景には、ビットコイン価格の急激な下落があります。ビットコイン価格は2025年10月に126,000ドルを超えてピークに達しましたが、2026年2月には60,000ドルまで下落しました。この価格変動により、企業が保有するビットコインの資産価値が大幅に減少し、巨額の減損処理を余儀なくされました。
また、ハッシュプライス(マイニングの計算能力あたりの期待収益)が1日あたり29ドル/PH/s付近と過去最低水準で推移していることも、純粋なマイニング事業の採算を悪化させています。業界全体で保有するビットコインを売却する動きも加速しており、2026年第1四半期には上場マイナー各社が合計で32,000 BTC以上を売却したと報告されています。
AI・HPC事業への戦略的シフト:収益源の多角化
マイニング収益の不透明感が増す中、各社は既存の電力インフラや冷却システムを活用し、AIやHPC向けのデータセンター事業への転換を加速させています。
Hut 8は、AI関連企業に対して352メガワットの電力を15年間にわたりリースする98億ドルの大規模契約を発表しました。Core ScientificもCoreWeave(コアウェーブ)との間で12年間で102億ドル規模の契約を締結しています。AIインフラ事業は、従来のマイニングと比較して1メガワットあたりの収益が約3倍になるとの分析もあり、より安定した高利益率のビジネスモデルとして期待されています。
業界の予測では、AI契約を確保したマイニング企業において、2026年末までにAI関連収益が全収益の70%に達する可能性があるとされています。Cipher Digitalが社名から「Mining」を外し、AI事業への注力を鮮明にしたように、業界の定義そのものが「デジタルインフラ提供業」へと進化しつつあります。
ポイント
- 主要マイナー各社が2026年第1四半期に巨額の純損失を計上し、ビットコイン価格の下落が保有資産の評価に大きく影響しました。
- ビットコインの採掘コストが市場価格を上回るケースが発生しており、マイニング単体での収益維持が困難な状況にあります。
- 各社は生き残りをかけ、既存の強力な電力供給能力を背景にAI・HPC向けデータセンター事業へ急速に舵を切っています。
- AI分野での長期契約(Hut 8の98億ドル規模など)は、ボラティリティの激しいマイニングに代わる安定収益源として市場から評価されています。
- 2026年末までに、一部の企業ではAI関連収益が主軸となる見通しであり、マイニング業界の構造的な転換点となっています。