Hut 8が98億ドルのAI電力リース契約を発表、マイニング企業からAIインフラ企業への転換を加速

Hut 8が98億ドルのAI電力リース契約を発表、マイニング企業からAIインフラ企業への転換を加速

ビットコインマイニング大手のHut 8(ハット8)は、テキサス州で建設中のAIデータセンター「Beacon Point」において、総額98億ドル(約1兆5190億円)に達する大型の長期リース契約を締結したと発表しました。2026年第1四半期決算ではビットコイン価格の下落に伴う評価損により純損失を計上したものの、市場はAIインフラ事業の成長性を高く評価し、同社の株価は33%以上急騰しました。この出来事は、暗号資産マイニング企業がエネルギーインフラを軸に、より収益性の高いAI分野へと事業を多角化する業界の大きなトレンドを象徴しています。

15年にわたる98億ドルの大型契約と「Beacon Point」の概要

Hut 8が98億ドルのAI電力リース契約を発表、マイニング企業からAIインフラ企業への転換を加速

Hut 8が発表した契約は、テキサス州ヌエセス郡に位置するAIデータセンター「Beacon Point」の第1フェーズに関するものです。投資適格の高い格付けを持つ第三者のAI企業に対し、15年間にわたって352メガワット(MW)のIT電力容量をリースする内容となっています。

基本契約総額は98億ドルですが、更新オプションがすべて行使された場合、契約総額は最大で約251億ドル(約3兆8905億円)に達する可能性があります。この契約により、Hut 8が保有するAIデータセンターの契約容量は合計597MWとなり、基本契約の総額は約168億ドル(約2兆6040億円)に拡大しました。

Beacon Pointは、NVIDIAのDSXリファレンスアーキテクチャ(大規模AIインフラのための設計指針)に基づいて設計された「AIファクトリー」として構築されています。同施設は、2027年第1四半期に電力供給が開始され、同年第3四半期には最初のデータホールの納品が予定されています。

四半期決算の赤字を上回るAI事業への市場評価

同日に発表された2026年第1四半期決算では、財務面で課題が見られました。保有するビットコインの価格下落による評価損が響き、純損失は2億5300万ドル(約392億1500万円)超に達しました。売上高は約7100万ドル(約110億500万円)で、前四半期比で約22%減少し、アナリスト予想の7850万ドルも下回っています。

しかし、投資家はこうした短期的な赤字よりも、AIインフラ事業への転換による長期的な収益性を重視しました。発表後の株価が33%以上急騰した背景には、AIワークロードが電力1MWあたりで生み出す収益が、従来のビットコインマイニングよりも高いという業界の認識があります。Hut 8は今回の契約により、ビットコインの価格変動に左右されやすいビジネスモデルから、安定した長期キャッシュフローを生み出すインフラ企業への脱皮を鮮明にしました。

マイニング業界におけるAIインフラへの多角化トレンド

Hut 8の動きは、現在の暗号資産マイニング業界全体の潮流を反映しています。関連する動きとして、Core ScientificによるAIデータセンター拡張のための企業買収や、Riot Platformsによるデータセンター事業の収益増加、MARA(旧Marathon Digital)による発電所の買収を通じたAI事業の強化などが相次いで報告されています。

これらの企業に共通しているのは、マイニングで培った「大規模な電力確保」と「エネルギー管理」のノウハウを、急成長するAIコンピューティング需要に転用している点です。ブラックロックのラリー・フィンク氏もAI投資に強気の見通しを示しているとされており、エネルギーインフラを確保しているマイニング企業は、AI時代の重要なインフラ提供者としての地位を確立しつつあります。

ポイント

  • 15年間にわたる352MWのIT電力容量リース契約を締結し、基本契約額は98億ドルに達します。
  • テキサス州のBeacon Pointデータセンターが対象で、更新オプションを含めると最大251億ドルの規模となる可能性があります。
  • 第1四半期決算はビットコインの評価損で純損失となりましたが、AI事業への期待から株価は33%急騰しました。
  • 電力1MWあたりの収益性が高いAI分野への転換は、マイニング業界全体の主要な成長戦略となっています。
  • Beacon PointはNVIDIAの設計指針を採用しており、2027年からの稼働開始を予定しています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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