DTCCが米国証券のトークン化サービスを2026年10月に開始、Canton Networkを採用

米国の中央証券保管機関であるDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)は、子会社のDTCを通じて開発を進めている証券トークン化サービスの進捗とスケジュールを発表しました。2026年7月に限定的な本番取引を開始し、同年10月には広範な提供を開始する計画です。このサービスは、既存の証券決済インフラの安全性を維持しながらブロックチェーン技術を統合する試みとして、金融業界の注目を集めています。

既存インフラを活用するTokenized Entitlementの仕組み

DTCCが米国証券のトークン化サービスを2026年10月に開始、Canton Networkを採用

DTCが導入するサービスは、ブロックチェーン上で新しく証券を発行するのではなく、既存の仕組みで保管されている証券の権利をトークンに変換する「Tokenized Entitlement(トークン化された権利)」という方式を採用しています。

具体的な仕組みとしては、参加者がトークン化を申請すると、DTC内の通常口座から対象証券が引き落とされ、「Digital Omnibus Account」と呼ばれる集合勘定に振り替えられます。この振替と同時に、参加者が登録したブロックチェーン上のウォレットに対してトークンが発行される構造です。これにより、参加者間ではDTCを介さず24時間いつでも直接トークンを移転できるようになります。

技術基盤には、Digital Asset社が開発する「Canton Network」が採用されました。Canton Networkは機関投資家向けに取引情報のプライバシー制御やコンプライアンス対応を組み込んだパブリックブロックチェーンです。DTCCは、複数のブロックチェーン上の動きを読み取り公式記録として扱う「LedgerScan」というオフチェーンシステムと組み合わせることで、伝統的な証券インフラの規律を維持するとしています。

SECの許諾に基づく3年間のパイロット運用

本サービスは、米国証券取引委員会(SEC)が2025年12月11日付で発出した「no-action letter(特定の条件下で法的執行を行わないとする通知)」に基づき、3年間の限定的なパイロットプログラムとして実施されます。

運用にあたっては、対象となる資産や参加者に制限が設けられています。初期の対象資産は、Russell 1000指数の構成銘柄、主要指数(S&P 500やNasdaq-100など)に連動するETF、および米国債(利付債、割引債など)に限定される予定です。また、誤った記録を訂正できる仕組みの確保や、SECへの四半期報告も条件として課されています。

このプロジェクトには、伝統的金融と暗号資産インフラの双方から50社を超える企業が参加しています。BlackRock、Goldman Sachs、JPMorganといった大手金融機関に加え、CircleやAnchorage DigitalなどのWeb3企業も名を連ねており、業界を挙げた取り組みとなっています。

業界標準の策定とグローバル展開への影響

DTCCは2025年12月にDigital Asset社と正式に提携し、欧州の中央証券保管機関であるEuroclearと共に、Canton Networkの運営を担うCanton Foundationの共同議長に就任しています。米国と欧州の主要な証券決済機関が共通の技術基盤に関与することで、グローバルな証券決済におけるトークン化の標準策定が進む可能性があります。

既存の証券インフラを置き換えるのではなく、その上にトークン化レイヤーを重ねるDTCCのアプローチは、長年蓄積された投資家保護や税務処理などの制度的枠組みを維持できる点が特徴です。この手法は、同様に既存の決済インフラを持つ日本などの諸国にとっても、オンチェーン化を進める上での一つの参照モデルになると考えられます。

ポイント

  • 2026年10月に米国証券のトークン化サービスを広範に提供開始し、3年間のパイロット運用を行う計画です。
  • 既存の証券保管インフラを維持したまま、その権利をトークン化する「Tokenized Entitlement」方式を採用しており、制度的保護と技術革新の両立を図っています。
  • SECのno-action letterに基づき、対象資産を主要株式指数や米国債に限定した規制遵守型のモデルとして運用されます。
  • 伝統的金融とWeb3領域から50社以上の主要企業が参加しており、Canton Networkを基盤とした業界標準の形成が進む可能性があります。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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