アメリカの主要な銀行業界団体は、ステーブルコインの規制に関する法案「CLARITY法(クラリティ法)」の最新案に対し、利回り規制の不備を指摘する書簡を上院銀行委員会へ送付しました。銀行側は、現在の妥協案に含まれる例外規定が銀行預金の流出を招き、地域経済への融資に悪影響を及ぼすと主張しています。この動きは、5月14日に予定されている委員会審議を前に、法案の最終的な文言を巡る攻防が激化していることを示しています。
ステーブルコインの利回り規制における抜け穴を指摘
アメリカ銀行協会(ABA)や銀行政策研究所(BPI)などを含む6つの主要銀行団体は、2026年5月8日付で上院銀行委員会のティム・スコット委員長およびエリザベス・ウォーレン筆頭委員に対し、共同書簡を送付しました。
この書簡において銀行側が問題視しているのは、トム・ティリス上院議員とアンジェラ・アルソブルックス上院議員が提示した妥協案の内容です。この案では、銀行預金の利息と機能的に同等とされる利回りをステーブルコインに直接付与することは禁止されています。しかし、ガバナンス(ネットワークの運営方針を決定する仕組み)への参加報酬や、ステーキング(暗号資産をネットワークに預け入れて報酬を得る仕組み)、口座残高に連動した報酬については容認される余地が残されています。
銀行団体は、これらの例外規定が規制を回避する手段として利用され、顧客が銀行預金よりもステーブルコインを保有する動機を強めることになると主張しています。そのため、口座残高を参照する報酬プログラムの完全な排除や、禁止対象を「実質的に類似する支払い」へと拡大するような文言の強化を求めています。
銀行預金の流出と融資減少への懸念
銀行業界が規制強化を求める背景には、ステーブルコインへの資金シフトによる実体経済への影響に対する強い危機感があります。
銀行団体が提示した試算によると、利回り付きのステーブルコインが広く普及した場合、銀行からの預金流出が加速する可能性があります。その結果、消費者、中小企業、および農業分野向けに行われている融資が2割以上減少する恐れがあるとしています。
この主張は、ステーブルコインが決済手段として普及するだけでなく、投資や貯蓄の手段として銀行預金と直接競合することへの警戒感を表しています。ABAのロブ・ニコルズ会長兼CEOは、5月10日に銀行経営者宛ての書簡を送り、法案の改善に向けて上院議員への働きかけを強化するよう促しました。
法案審議のスケジュールと今後の焦点
CLARITY法案は、アメリカにおける暗号資産の市場構造を定める重要な法案として、長らく停滞していましたが、現在は成立に向けた動きが加速しています。
今後の主なスケジュールと動向は以下の通りです。
- 5月14日:上院銀行委員会において法案の審議が行われる予定です。
- 7月4日:ホワイトハウスが法案の成立目標として設定している期日です。
現在、ホワイトハウスは独立記念日までの成立を目指していますが、大統領に関連する倫理規定などが焦点の一つとなっています。銀行業界による今回の要請が、5月14日の委員会審議においてどのように反映されるか、あるいは法案の修正につながるかが、Web3業界や金融業界全体の注目点となります。
ポイント
- 米銀行協会など6団体が、ステーブルコイン規制法案「CLARITY法」の修正を求める書簡を上院銀行委員会に送付しました。
- 銀行側は、ステーキングや口座残高連動報酬などの例外規定が、実質的な利回り付与の抜け穴になると主張しています。
- 利回り付きステーブルコインの普及により、中小企業や農業向け融資が2割以上減少する可能性があるとの試算を提示しています。
- 5月14日に上院委員会での審議が予定されており、銀行業界は経営者層を挙げた働きかけを強めています。
- ホワイトハウスは7月4日までの法案成立を目標としており、規制内容の最終調整が重要な局面を迎えています。