暗号資産決済プラットフォームを展開するMoonPay(ムーンペイ)は、Dawn Labs(ドーン・ラボ)を買収し、予測市場の取引に特化したAI搭載ツール「Dawn CLI」を発表しました。この買収を通じて、MoonPayはAIエージェントが自律的に金融取引を行うインフラの構築を加速させる狙いがあると見られます。専門的なプログラミング知識を必要とせず、自然言語で取引戦略を構築できる環境を整えることで、予測市場への参加のハードルが下がることが期待されます。
自然言語による戦略構築を可能にするDawn CLIの機能
今回発表された「Dawn CLI(コマンドラインインターフェース:文字入力で操作する対話型ツール)」は、一般の消費者を対象としたプロダクトです。最大の特徴は、ユーザーが自然な英語で取引戦略を記述するだけで、AIがその意図を汲み取り、具体的な実行プロセスへと変換する点にあります。
Dawn Labsの創設者であるNeeraj Prasad(ニーラージ・プラサド)氏の説明によると、このツールは以下のプロセスを自動化します。
- ユーザーの意図に基づく調査
- 取引に必要なコードの生成
- 戦略のシミュレーション
- 実際の取引(ライブ実行)
Dawn Labsはこれまで、AIエージェントが市場を分析し、金融インフラへアクセスして資本を調整するシステムの開発を続けてきました。同社は、AIが金融運用の主要な担い手となることで、汎用知能(AGI)を通じた取引の民主化が進み、金融活動がさらにオンチェーン(ブロックチェーン上)へ移行していくという展望を示しています。
MoonPayが進めるAIと決済の統合戦略
MoonPayによる今回の買収は、同社が推進するAIと暗号資産決済を融合させる一連の戦略の一環です。MoonPayは2026年に入り、AIエージェントが自律的にウォレットを作成し、取引を実行できる非カストディ型(ユーザー自身が秘密鍵を管理する形式)インフラ「MoonPay Agents」を発表しています。
さらに、同月にはAIエージェントとユーザーがオンチェーンウォレットから直接支払いを行えるステーブルコイン・デビットカード「MoonAgents Card」も発表されました。今回のDawn Labsの買収およびDawn CLIの投入により、MoonPayはAIエージェントが金融市場で実効的な行動を取るためのソフトウェアとハードウェア(決済手段)の両面でインフラ整備を強化した形となります。
拡大する予測市場とAI活用の背景
今回の買収の背景には、予測市場の急速な成長があります。予測市場とは、将来起こる出来事の結果に資金を投じる市場のことで、現在はKalshi(カルシ)やPolymarket(ポリマーケット)といったプラットフォームが取引を牽引しています。
2026年4月には、これら2つの主要プラットフォームにおける累計取引高が合計1500億ドル(約23兆円)を突破しました。市場規模が拡大し、より複雑な取引戦略が求められる中で、AIを活用して「アイデアを実行可能なコードに変換する」技術の重要性が高まっています。MoonPayは、拡大する予測市場においてAIエージェントが主要な役割を果たす未来を見据え、その基盤を固めていると捉えることができます。
ポイント
- MoonPayがDawn Labsを買収し、予測市場向けAIツール「Dawn CLI」を発表しました。
- Dawn CLIは、自然な英語で指示を出すだけで、調査からコード生成、取引実行までを自動化する消費者向けツールです。
- MoonPayは「MoonPay Agents」や「MoonAgents Card」など、AIエージェントが自律的に経済活動を行うためのインフラを相次いで発表しています。
- 累計取引高が1500億ドルを超えた予測市場の成長を背景に、AIによる取引の民主化とオンチェーン移行が進む可能性があります。
- 専門知識のないユーザーでも高度な戦略を実行できるようになる点で、Web3金融の利用層が広がるきっかけとして注目されます。