イーサリアムがセキュリティ機能クリア署名を導入 ブラインド署名の欠陥解消へ

イーサリアムコミュニティは、取引内容をユーザーが署名前に明確に確認できるセキュリティ機能「クリア署名(Clear Signing)」を導入しました。これは、難解な16進数データのみを表示して承認を求める従来の「ブラインド署名」を置き換えるもので、悪意ある取引による資産流出リスクを低減する狙いがあります。イーサリアム財団はこの取り組みを通じて、数十億ドル規模に及ぶハッキング被害の防止と、ネットワーク全体の安全性向上を目指しています。

ブラインド署名による構造的欠陥の解消

イーサリアムがセキュリティ機能クリア署名を導入 ブラインド署名の欠陥解消へ

これまでイーサリアムの取引承認では、人間には理解しにくい16進数の羅列(ブラインド署名)を確認して署名を行うことが一般的でした。イーサリアム財団は、このブラインド署名を「構造的な欠陥」と指摘しており、ユーザーが内容を理解せぬまま承認を行うことが、多額の資産損失を招く一因になってきたと説明しています。

具体例として、2025年に発生したBybitでの約14億ドル(約2240億円)規模のハッキング事件などが挙げられており、こうした被害の多くは、取引の承認が最後の防衛線として機能していないことに起因するとされています。新機能のクリア署名は「What You See Is What You Sign(見たままに署名する)」という理念に基づき、取引の意図を平易な言葉で表示することで、ユーザーが自身の操作を正確に把握できるように設計されています。

ERC-7730規格と主要ウォレットの対応

クリア署名の導入は、イーサリアム財団が進める「Trillion Dollar Security Initiative(1兆ドル規模のセキュリティ・イニシアチブ)」の一環として行われます。この機能の技術的な基盤となっているのは、Ledgerが主導して策定されたオープンソースのトークン規格「ERC-7730」です。

ERC-7730は、スマートコントラクトとのやり取りを人間が読める形式に変換するためのメタデータ形式を規定しています。これにより、既存のスマートコントラクトを変更することなく、ウォレット側で取引内容を分かりやすく表示することが可能になります。現在、Ledger、Trezor、MetaMaskといった主要な自己管理型ウォレットに加え、WalletConnectやFireblocksなどの企業も、この規格の採用や貢献を表明しています。

業界全体への影響と今後のスケジュール

今回のセキュリティ機能の導入は、暗号資産を扱うユーザーだけでなく、機関投資家やビジネス利用における信頼性の向上にも寄与すると見られます。難解なコードによる承認プロセスが排除されることで、フィッシング詐欺や不正なスマートコントラクトへの承認を未然に防ぐ効果が期待されます。

実装のスケジュールについて、Trezorのトマーシュ・スシャンカCTOは、2026年6月30日までの実装を目指す意向を示しています。イーサリアム財団は、このクリア署名が標準化されることで、ブロックチェーン上の資産管理における安全性が業界全体で大きく進化するとしています。

ポイント

  • ブラインド署名の廃止により、ユーザーが取引内容を理解できないまま署名するリスクが低減されます。
  • ERC-7730規格の採用により、スマートコントラクトの複雑な動作を人間が読める言葉で表示できるようになります。
  • MetaMaskやLedger、Trezorなどの主要ウォレットが対応を進めており、ユーザーの利便性と安全性が同時に向上する見込みです。
  • 過去に発生した巨額のハッキング事件を背景に、イーサリアム財団が主導する大規模なセキュリティ強化策の一環として位置づけられています。
  • 2026年6月末を目処に具体的な実装が進む予定であり、Web3業界全体のセキュリティ基準が底上げされる可能性があります。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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